マッチングアプリ体験談3
●第3話「駐車場男」
この男は随分と厄介だった。まず、なかなか会えない。会う場所を決めても、集合時間を決めることができない。LINEでのやり取りを続けること2ヶ月。たまに電話もした。私の期待も最高潮に高まったところでやっと会うことになった。
男の地元の駅で待ち合わせて、焼肉を食べようということになった。車で迎えに来た男は登録してある写真よりだいぶふくよかだった。ってか、デブじゃんこいつ。助手席に乗るよう指示され、「ずっと会いたかったよ」と言ってくる。いや、会わせなかったのはお前の方だろ。
隣に座った私の腕や太ももを撫でるように触ってくる。気持ち悪い。まあ、でもごはんを食べるだけならと諦めた。
駐車場に車を停め、車を降りた私の手を当たり前のように握ってくる。焼肉を食べ終え、解散と思っていた私に男は「この後ちょっと寄りたいところあるんだけど、いい?」と聞いてきた。ちょっとなら付き合ってやっても構わない。ここで帰ると言っておけば良かったのだ。
車は近くの大型スーパーの駐車場に入っていった。買い物でもするのかな?と思ったが、ガラガラの駐車場の屋上に進んでいく。人気のない屋上のさらに入口から離れた区画に車を停めた。あ、まずい。私はなぜこんなにも危機感がないのか。
案の定、車は降りず、フロントガラスにサンシェードを掛け始めた。はい、終わったー。後部座席に移るよう指示され、男も後部座席に乗ってきた。どこかに収納してあったウェットティッシュのボトルを取り出した。「準備がいいでしょ?」と言ってきた。本当にちゃんと準備する人は、会う前に体を重ねることに断りを入れるし、相手が安心できる場所を確保するし、直前にも合意があるか確認するし、何より雰囲気を作るものだ。
ウェットティッシュで念入りに拭いても清潔に感じるわけではない。座席に横たわっても体が全然収まらないし、浅く腰掛けても体が安定しない。ロケーションとしては体勢がきつく、最悪だ。気付いているのか。
終わった後、鼻息の荒い男は「ヤバかった。この角度気持ち良すぎて止まらない。」と感想を伝えてきた。ああ、この男とは一生分かり合えない。そう感じた瞬間だった。