彼の好きなところ13
好きポイント⑬話が面白い
彼は話が上手い。元々面白くないエピソードでもちゃんと盛り上げて、オチを作って話す。これは彼が大学卒業後に通っていたところで得たスキルではあると思うが、しっかりと日常会話の中でも活きている。
話に引き込むために答えをクイズにしたり、3択にして選ばせたりして飽きさせないようにする。そしてどんな答えでも必ずツッコんでくれる。突拍子もない答えを出せばそんなわけないと言い、正解を当てれば元々知ってた?とオーバーに驚き、あまりに近すぎる答えだとそこはもっと気を遣ってこう答えるんだよと会話術のアドバイスをして私を楽しませてくれる。
彼が力説するアニメが魅力的に感じるのも、仕事の話が楽しそうに感じるのも、私の経営者思考を肯定してくれると感じるのも、きっと彼のトークスキルが高いことが要因だろう。
行為への導入も「こういう役割を演じてほしい」と言葉で説明するような野暮な真似はせず、「ここが予約してた◯◯か。指名してた人気No.1のスィーファーさんとやっと会えるんだな。楽しみだな」とコント仕掛けの芝居をして私をその世界観へと誘う。笑いそうになるのを堪えて、私はちゃんとそのお店の人気No.1キャストを演じる。
若干の面倒臭さを感じなくはないものの、いつも楽しさが勝ってこちらも乗り気になってしまう。彼みたいに上手く役に入り込めなくても、白けたり、非難したりせず、恥ずかしがりながらもできたところを認めて褒めてくれる。ここで本気で演技指導を始めたらそれこそ興醒めだろう。まあ実際に行為に突入してしまえばそんな役割なんて関係なくなってしまうのも事実だが。
私はそうやって彼がだんだんと理性を失って快楽に没入していく様子を見ているのも好きだ。知性的で余裕があって気遣いに溢れる彼が、本能むき出しの獣と化していく様もまた趣がある。むしろ、そのギャップは大きければ大きいほど良い。気持ち良さに溺れて語彙力が低下していく彼も可愛い。
行為が終わった後はすぐに元の彼に戻る。私の身体のどこかに優しく触れながら楽しい話を延々としてくれる。話の流れで軽くぺちぺちと叩かれるのも好きだ。全然エッチな雰囲気にならないように気遣っているのだろう。お尻や胸を触る手も、私のスイッチを入れないように最大限に気を付けている。話の面白さの方が勝って私は思わず笑ってしまう。
「パイの呼吸 壱ノ型 水面斬り!」と言って私の胸を鷲掴みにしてきたのが一番のヒットだった。「ピロートークでこんなこと言ってる男なんか山ほどいるんだろうな。俺、最悪」とか言って落ち込んでいたが、大丈夫、きっとあなただけだよ。