彼の好きなところ9
好きポイント⑨容姿を褒めてくれる
これは後になってから気付いたが、その時間を円滑に進めるためにしていたことだ。確かにその時に彼が「綺麗」「可愛い」と言った言葉に嘘はないのだが、それは好きだから言ったわけではなく、どちらかというと感情の昂りがそのような言葉となって現れたといったところだろう。ただ、ここではそんなこと無視して彼の言葉を全力で受け入れようと思う。行為中だけだと分かっていても好きな人から「綺麗」「可愛い」と言われたら嬉しいに決まっている。
彼がベッドに取り付ける拘束具を持ってきた日、全裸の状態で手と足に黒いベルトを巻かれた。大事なところが見えないように角度を調整され、首から下の写真を撮られた。撮られること自体に大きな抵抗はないし、彼は撮る前に顔が映らないようにすると言ってくれた。後から画像も確認させてくれたので、彼だけは撮らせてもいいと思っている。
その構図を見た彼は「白い肌に黒いベルトがエロいね」「全然動けないでしょ?」とかなり興奮している様子だった。その後どうなったかはご想像にお任せする。
彼が予約するホテルはいつも都内の夜景が見渡せる高層階の部屋だったのだが、その日泊まる部屋はお風呂にも一面ガラス張りの窓があるところだった。彼はここに来るのをとても楽しみにしていた。買ったお酒を持ってきて都内の夜景を楽しみながら語っていた。とてもいい雰囲気。
眺望の素敵なお風呂があったらすることは一つ。イチャイチャで感度も感情も高められた後、窓に手を付くよう指示された。彼は後ろから入ってきた。この角度なら痛くない。胸を優しく掴まれ、頭がおかしくなりそうだった。「ダメだよ、顔上げて夜景見ないともったいないでしょ?」「ちゃんと立ってて」これでもかというほどに私をいびってくる。このSっ気が堪らなく好きだ。
耐えられず私が湯船に座り込んだ後、「ねえ、見て。この綺麗な夜景と窓の手の跡。乱れた姿が美しかったよ」なぜこんなにも女の子の喜ぶ語彙を持っているのだろう。こうして彼の言葉に惑わされ、狂わされ、溺れていく。
彼は、彼が下になった時に下から、後ろから攻める時に横から撮るのが好きだ。動画に収めるにあたり、私の腕の位置やカメラの置き場所にこだわり、より綺麗に見えるよう工夫する。彼が下になる時に、胸を寄せるように私の腕を前に持ってきたり、首を後ろに倒して髪を振り乱したりする様子を特に喜んだ。「いいよ、興奮する。最高にいい眺め」と褒めちぎってくれた。
彼が喜ぶ姿を見るのは嬉しい。キラキラと輝く言葉たちを惜しげもなく使ってくれることが嬉しくて、私はつい彼と体を重ねてしまう。
しかしある時、私は気付いてしまった。私が頂点に達するのを見て「可愛い」と言った。少し経った後にその真意を聞くと、「女の子がイく姿は可愛いですよ」と返ってきた。そうか、私が可愛いわけですらなかったのだ。この状況の女性は全て可愛いのだ。なら私である必要ないじゃん。魔法が解け始めた瞬間だった。