マッチングアプリ体験談1
私は5つのマッチングアプリを利用したことがある。そこで起きた面白い出来事をこれから共有していこうと思う。
●第1話「ネカフェ男」
マッチングが成立した男とお互いお昼を食べてから新宿で会うことになった。行き先を告げられず、集合時間と場所だけ言われたのが今から考えればそもそもおかしかったのかもしれない。
会ってまず思ったことは「全然話が聞き取れない」ということだ。声が低いうえに、早口で私の耳には雑音としてしか認識されない。やっとのことで聞き取れた言葉から察するに、私たちはこれから映画を観に行くらしいということ。ただ、どうやら映画館に向かってはいないようだ。
着いた建物の看板を見ると、そこは完全個室のネットカフェだった。利用したことのない私がネットカフェに対して持ってたのは、背の低いパーテーションで区切られたブースがいくつかある空間というイメージだった。いざ建物に入ってみると、各階に数部屋ずつあり、お会計をした時に部屋を割り当てられ、ドリンクバーで飲み物を補充して、借りたDVDを鑑賞するというシステムのところだった。おしぼりを多めに取っているのが気になった。
部屋のドアを開けると、四畳半ほどの広さで膝の高さを少し超えるぐらいの位置にクッション性のある床があった。中から鍵が閉められる。直感でこれはまずいと思った。が、面白いのでそのまま流れに身を任せることにした。
初めは大真面目に「美女と野獣」のDVDを観ていた。途中から雲行きが怪しくなってきた。隣にいる男が首を触りながら耳に息を吹き掛けたり、耳元で何かを囁いたりし始めた。語尾が「〜にゃん」になっていくのが最高に気持ち悪かった。
いざ、という瞬間におしぼりを開け始めた。なるほど、そこを拭くためにたくさん持ってきていたのか。自分の唾液を指に付けて潤滑剤代わりにしていた。足りないと感じたのか、上から直接垂らし始めたのも気持ち悪かった。
事を成した後もおしぼりで拭いていた。もはや綺麗好きなのか不潔なのかもよく分からない。
ネットカフェを出て、近くの大型商業施設の屋上に行った。もう帰りたい気持ちでいっぱいだったのだが、ここまで来たらネタ作りと思い、しばらくいてみることにした。ベンチに座って話をしていたのだが、私が美味しいと言ったものを酸っぱくて不味いと批評してくる。不快でならなかった。英語には「Don’t yuck my yum.」という表現がある。「私が旨いと思うものを不味いと言うな」というような意味だ。
しばらくして、お腹が痛いと言い出した。痛いから優しくして、甘えさせてと言っている。痛いなら帰れば良い。夕飯を食べて行かないかと提案してきた。こいつは一体何がしたいのか。私は痺れを切らしてもう帰ると言って立ち上がり、追ってくるのも構わず駅に向かって足早に去った。
帰り道、社交辞令の挨拶文を送り、LINEをブロックした。