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人材のクロスオーバーを盛んに!教育と社会のギャップのない未来へ

組織・人事領域を中心に、幅広いテーマで実践的なコンサルティング活動をおこなってらっしゃる企業人事の専門家の野田稔氏(明治大学グローバル・ビジネス研究科(MBA)研究科長 専任教授)に、企業と教育界をつなぐこれからのキャリアデザインついてお話を伺いました。


企業人が地域社会や教育機関とも連携して、次世代の育成に貢献できる仕組みを作るべき


Q企業人が教育業界と接点をもつ(人材交流や連携、或いは転身)ことの課題や、チャレンジがありますか?

課題でいうと、現時点で一つの課題は「企業と教育現場との間の壁」だと思います。
お互いに理解不足があるので、これを壊していく必要があります。例えば、大学が提供する教育プログラムをもっと企業の視点で見直したり、企業が持つリソースをもっと教育現場に開放したりすることが必要です。もう一つは「キャリアの二分」です。つまり、企業で働くか、教育分野で働くかのどちらかしか選べないという風潮ですね。これを打破して、両方を行き来できるような柔軟なキャリアパスを社会全体で整備することが求められると思っています。


Qこれからの企業人と教育界の在り方や、社会人教育について、今後10年後のありたい姿や夢などをお聞かせください。

ミドルシニアについての研究と実践を長らくやっているものですから40代以降ぐらいの人を対象に言う、人生100年時代になった時に、60歳や65歳でもう社会との接点を切っちゃうなんてどう考えたってありえないんです。(私は大体80歳ぐらいまでは何らかの形で働くつもりです。)ただその時に何をやるかっていう選択がその人のウェルビーイングを大きく変えてしまうと思ってるんですね。
皆さんもキャリア論は少し勉強されていると思いますが、大体人間40代50代ぐらいになってくると世代継承性というものが、すごく心の中で湧き上がってくると思います。一般にジェネラティビティと言われるやつですけれども。私が以前、野村総研でコンサルタントやってた時は、正直全く人材育成なんて興味なかったんですね。当たり前のこととしてコンサルタントは、自分で育つものであって、後輩に対しても“勝手に育ってこい”なんて言ってました。
しかし、僕は40の半ば過ぎぐらいから急に、「次の世代を育てないとダメだ」という思いが。心の底から込み上げてきましたね。それをやらないと日本や世界の未来はないぞ、というように感じるようになり、人を育てるということに興味が湧いてきました。
人間ってそうできてるんだと思います。エリクソンのアイデンティティ論ではないけれども、きっと人間はそういう風にできてるんですよ。
そして、ミドルシニアの人たちにとっても最も喜びの深い仕事というのは、「人の育成」だと思います。

自分の職務の中に、人を育てるという部分が入っていると喜びが大きい


何らかの形で自分の関わる職務の中に人を育てるという部分が入っていると非常に喜びが高いんだなって思うんですね。そういう意味においては企業人の方々が、それまでは自分をどうやって高めるかということにしか興味がなかったり、或いは仕事をどううまく進めるか、ということにしか興味がなかったとしても、次世代を育成するということに何らかの形で関わるべきだと思うんです。
 
全員が教師になれとかって言ってるわけじゃないです。何らかの形で人を育てるという部分と関わり合いのあるような仕事をするということが自分のためにもなるし、また将来のためにも間違いなくなるだろうと思っています。

Q(教育テック大学院大学のような)教育分野の経営・IT人材育成の学校が開学しますが、
それにむけた、叱咤激励を含めたご期待をお聞かせください。

私は常に教育は一部の人のものではなく、できるだけ多くの人たちに関与してもらうべきだと思っています。特に企業の中にいる方々が、会社内だけではなく、地域社会や教育機関とも連携して、次世代の育成に貢献できる仕組みを作るべきです。実際にそういう方々が大学院に来てくれて、例えばキャリア相談に乗ったり、特定のスキルを教えたりするだけでも、大きな価値があります。
また、逆に企業で働いた経験のある人たちが、教育分野に転身するという動きも重要だと思います。これがうまく進めば、現場感覚のある教育者が増え、学生たちにより実践的な学びを提供できるようになります。私が期待するのは、そのような人材のクロスオーバーがもっと盛んになることで、教育と実社会のギャップが埋まるという未来です。
 
(取材者:編集部・鈴木)
 


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