【短編】おやすみ東京
体操座りが落ち着くから
丸まって、トレーナー被って
くるくる回るスカイツリー
てっぺんの色は6色目
重ねた手の平と
地べたにつけた片膝
揺らめく炎は
幻さえも見せてくれないから
そうだね、ここは東京
優しさの転がる世界
拾った目線の先で
無視して行き交う人々
優しい人ねと呟いて
元気を出してと背中を叩いて
ありがとうのお返しは
何も無いんだから
音のついた白い息は
どこかへ消えてしまって
そのまま私の癌細胞も
消えてしまってと願うから
列に並んで幾星霜
私の番はいつですか?
なんて、誰に聞いても意味が無い
わかってるからこぼさない
そうだね、ここは東京
虚しさが星降る世界
捨てた指先の向こう
しがみついて離れない人々
6色目のスカイツリー
何周したら満足ですか
季節は巡って
私は残って
もう、何も望まないから
時を進めて欲しいだけだよ
時を進めて欲しいだけ。
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