【短編】わすれんぼ
放ったらかしのハチ公前で
流れるタイムラインを眺める。
悪夢ばかりがループして
都合のいい想い出ばかりが
黒塗りされてしまった。
思い出せない。
思い出せないままで。
時が止まってしまった部屋で
捨てられないガラクタを抱えて
必死にパズルをかきあつめて
なのに、同じ形ばかりだ。
行き場のない拳を
振り下ろす先さえなくて
行き交う車に吸い込まれそうになる。
なぜここにいるの
なぜ息をしてるの
やめてしまえばいいだけなのに
なぜかき集めるの
なぜ見捨てないの
忘れてしまえばいいはずなのに
ひとしきり傷ついて
ひとしきり泣いて
ひとしきり、
なにをしていたっけ。
。