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歌は聞いて覚えるもの

2014年2月中旬、出張でシカゴに行った時、ホテルの割と近くにシンフォニーホールがあったので、仕事の後に行ってみました。というか、行く気満々で、出張前にジョシュア・ベルやシカゴ交響楽団のチケットを購入していたのでした。

シカゴに着き、チケットを引き取りにシンフォニーホールに行ったところ、ジャズボーカリストのグレゴリー・ポーターのグループのコンサートがあることを知りました。ポーターさんのことはこの時まで知らなかったし、このグループが当時グラミー賞を受賞したことも知りませんでしたが、せっかく来たので聴いてみることにしました。

グループはボーカル、サックス、ピアノ、ベース、ドラムの編成でした。よくよく見ると、サックス奏者はアジア人らしい。メンバー紹介の時にサックス奏者の名前が呼ばれると、会場から「ヨウスケ!」と叫ぶ声がする。日本人なの?ジャズの本場アメリカですごく頑張っていて、グラミーまで獲ってすごいなあ。そして心に染みる音色のサックス。この日はグラミーのジャズ部門の受賞者のジョイントコンサートで、ドラムのJack DeJohnette やベースのEsperanza Spaldingも出演していたのですが、この「ヨウスケ」さんの印象が強くて、彼らのことはほとんど覚えていません。(今考えると、なんともったいない)

月日はたち、2年後の2016年6月。大ファンのスウェーデンのジャズピアニストのヤン・ラングレンのトリオが来日し、南青山のBody and Soulでライブがありました。数曲演奏したあと、ヤンさまが言いました。「今日は日本で演奏するということで、日本人の友達をゲストで呼びました。サックス奏者のヨウスケ・サトウさんです!」

2年前にシカゴシンフォニーホールで演奏していた、あの「ヨウスケ」さんだ!そんな偶然あるの?なんで日本にいるの?心臓がバクバクするほど驚きました。ヤンさまを知らなかったら、再度会うことはなかったかもしれない。ヤンさまの大ファンでよかった(笑)

そのサックス奏者、佐藤洋祐さんは大学卒業後、北海道で演奏活動を始め、ニューヨークに行き、すぐにポーターさんにスカウトされました。グラミー賞は2回受賞、ノミネートも4回されました。世界中をツアーで回っていましたが、自分の音楽を追求したくなったことと、ツアーでニューヨークにいないことが多くなり、ツアーは現地集合だから日本にいても変わりないと、2015年に千葉の佐倉に拠点を移したそうです。(佐倉は成田にも羽田にも行きやすいからだそうです)

その後、洋祐さんのライブに行くようになり、いろいろな話を伺いました。特に印象に残っているのは、ツアーでのマイクチェック。この時点ではポーターさんは来ないので、誰かがポーターさん役をやらなくてはならない。ピアニストもベーシストもドラムもマイクを持てないし動けないから、両手が空き、動ける洋祐さんがポーターさんの代わりに歌うことになる。一番近くでポーターさんを聞いているから、歌を覚えているし、細かなニュアンスも真似して歌えるようになる。そうやってポーターさんのように歌っているうちに、自分でも歌いたい、自分の音楽がしたいと思うようになったそうです。

グレゴリオ聖歌はもともと口伝だったといろいろな人が言いますが、そのことを聞くたびに洋祐さんのマイクチェックの話を思い出します。 

先輩修道士のグレゴリオ聖歌を聞く後輩修道士。見様見真似で歌ううちに、歌を覚えるだけでなく、神と心を通わせることを理解する。洋祐さんもポーターさんの歌を聴きながら、彼がどのような感性を持って歌い、観客とどうやって心を通わせるかを理解していったのかもしれません。

最近は忙しくて全然ライブに行けませんが、すこし落ち着いたらまたライブに行ってみたいと思います。(洋祐さんのライブは、演奏が素晴らしいことはもちろん、お客さんの雰囲気もいいんです。きっと洋祐さんの人柄だと思います!)

コンサートのアンコール。ポーターさんが舞台袖に行ってからの、残りのメンバーの演奏が超cool ! 


(おまけ)

Body and Soulのヤン・ラングレントリオと佐藤洋祐さんのライブについて、京子ママのデイリーレポート。このライブの後、洋祐さんは京子ママに「あなた、今までいったいどこにいたのよ」と言われ、Body and Soulでの定期的な出演が始まりました。(北海道からNYに直接行ったため、東京での活動は少なかったので、京子ママは初めて洋祐さんの才能を目の当たりにし、気に入ってしまったそうです)

https://www.bodyandsoul.co.jp/2016/06/14478

京子ママプロデュースのSK4。Body and Soul で”Body and Soul” を演奏しています。(SKは関京子ママのイニシャル)

SK4のテーマソング”SK4 Blues”。

洋祐さんは筑波大附属高校の時にギターを始めました。北海道大学ではトランペットでしたが、就職して初任給でセルマーのサックスを買い、そのサックスを(多分)今でも使っています。フルート、クラリネット、ピアノも演奏されますが、全部独学だそうです。もともとの能力と、努力する才能が凡人とは違うんだろうなあ。教会で演奏することも多かったそうで、私が合唱団で歌ってたと言うと、「聖歌隊が、キリエエレイソンとか歌ってたけど、どういう意味ですか?」と聞かれたことがあります。「主よあわれみたまえ、という意味ですよ」と答え、ミサ曲について少し話したのですが、多分知っていて聞いたのだと思います。まさかジャズバーでミサ曲の話をするとは思わなかったです。

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2014年の時のシカゴ交響楽団はハイドンとか演奏していました。確か古楽を専門とする指揮者だったと思います。前の週ならムーティが指揮でしたが、寒波でものすごい大雪だったとか。ジョシュア・ベルのコンサートは年配のおばさまたちが多かったです。

コペンハーゲンに出張に行ったとき、駅で電車の行き先を見ていたら、MalmöとYstadの地名がありました。ヤンさまはマルメの音大で学ばれ、Ystadのジャズフェスティバルの音楽監督でもあります。Ystadは遠いけど、Malmöなら行けそうと思い、仕事が終わった後に行ってみました。案外近くて、15分くらいで着きました。海の香りが至る所でする街でした。8時を過ぎていたのでお店は閉まっているし、レストランも一人では入りづらいので、30分くらい散策してから、コペンハーゲンに戻りました。ヤンさまが過ごされていた場所をほんの少しでしたが味わえて、満足です。

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(マルメの道にあった、なにかのオブジェ)