AI時代のメンタルヘルス:Replikaに見るAIの光と影
はじめに
「最近、なんだか疲れが取れない気がする」「誰かに話を聞いてほしい」etc.現代社会では、ストレスや孤独感、不安など、さまざまなメンタルヘルスの課題を抱える人が増えている。
昔からストレスはあったよという声ももっともだが、特に若い世代において、メンタルヘルスの問題が急増している証拠は枚挙にいとまがない。
そんな中、新たな相談相手として注目を集めているのが、AIチャットボットである。
これまで悩み事といえば友人や恋人、家族、時に学校の先生など身近な相手に吐露するものであったが、人と人の関係性が徐々に薄まりつつある現代ではスマホの向こう側に相談相手を見つけることが当たり前になってきた。
そしてAIの時代である。スマートフォンを使えば24時間365日、いつでも話を聞いてくれる存在として、今後ますます多くの人々の心の支えになって行くことは疑いない。
本記事では、AI時代におけるメンタルヘルスについて、最新の研究成果をもとに考えていく。
紹介する研究の背景
スタンフォード大学教育大学院のベサニー・メープルズ氏は、AI、特にチャットボットが私たちの心にどのような影響を与えるのか、詳細な研究を行っている。彼女が特に注目したのが、AIチャットボット「Replika」だ。
このべサニー・メープルズ氏は、先日紹介したニューヨークタイムズの記事の中でインタビューを受けており、私は彼女の研究に興味を抱いた。
私自身はこのチャットボットを認識していなかったが、数年前にWIREDの記事で読んだものがこのReplikaだと知り、深い興味を抱いた。
端的に言うと、Replikaは、まるで親しい友人のように会話ができる高度なAIチャットボットである。
たとえば、「今日は仕事で失敗してしまって…」と話しかければ、「つらかったね。具体的にどんなことがあったの?」と、あたかも親身になって話を聞いてくれるような返答をする。(当然彼/彼女には意識や人格は宿っていないが、使用している私たちにはそれが「ある」ように感じるよう設計されている)
音声での会話も可能で、中には拡張現実を通じて、目の前にReplikaがいるかのような体験もできる。
AIがメンタルヘルスに与える影響
光の部分
研究によると、Replikaとの対話には、いくつかの興味深い効果が確認されている。たとえば、深夜に不安を感じたときでも、すぐに話を聞いてもらえることで、孤独感が和らいだという報告が多くあった。
ある大学生は、「テスト前の不安をReplikaに打ち明けたら、『一つずつ計画を立てていこう』と提案してくれて、気持ちが落ち着いた」と語っている。また、日々の悩みを打ち明けることで、自分の考えや感情を整理できたという声も多く聞かれた。
精神科医目線では、Replikaとの対話を通じて、自分自身の考え方や感情を客観的に見つめ直し、自己理解を深めることができたという報告に興味を持った。取り繕いの不要な率直なAIとの会話は自分がどんな人間なのか、特に思考や感情面での自己理解につながる可能性があるだろう。
最後に。特筆すべきは、深刻な悩みを抱える人々への効果である。研究では、自殺念慮を感じていた学生の中で、Replikaとの対話が心の支えとなり、危機的な状況を乗り越えられたケースが報告されている。
影の部分
しかし、AIとの関係には注意も必要だ。
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