トンネル効果(11.3節の解説)
この節ではトンネル効果の説明をしています。古典力学では、粒子が持っている運動エネルギー以上のポテンシャルエネルギーの山を乗り越えて行くことはできないことになっていました。しかし量子力学によれば、わずかな確率で山を乗り越えてその先へ進んでいくことがあることが導かれます。乗り越えることが出来なかった場合には反射されますが、これは古典力学でもそうでした。
今回は「EMANが書いてみた」バージョンは含んでおりません。そちらはかなり長い記事になってしまいましたので後ほど別記事として公開しようと思います。
この記事は堀田量子11.3節の難所を理解するための補足説明になっています。
全体の解説
まずはこの節を読み解く上での注意点を解説していきます。
・この節の主要なテーマはトンネル効果です。
・その他に以下のようなかなり重要なテーマが混ぜ込まれています。
・規格化できない波動関数の解釈法
・波動関数とその一階微分が連続でなければならない理由
この節からようやく、粒子系のシュレーディンガー方程式を解いていく話が始まります。しかし従来の教科書とは少し様子が違います。初歩的な定常状態について考えてみたり、微分方程式の解き方に慣れさせて行くような話ではありません。そのせいで初学者にとっては容赦のない感じがあるのですが、それは決して意地悪ではなく、あくまでも物理現象を主体に話をしています。波動関数は本来、シュレーディンガー方程式に従って波打ち、動き回るものなので、そのようなイメージを初学者の頭の中に最初に確立させるのは大切なことかもしれません。
この節では粒子のトンネル効果についての説明を行っています。自由粒子の波動関数はどこまでも減衰せず振幅が一定のまま無限に続きます。そのせいで積分すると発散してしまうので規格化定数を定めることができません。それは確率解釈がうまく使えないということでもあります。にも関わらず粒子の透過確率や反射確率については計算できてしまいます。
従来の教科書ではこの辺りに特に詳しい説明がなかったりすることが多く、そうやって計算するものなのかと受け入れるしかなかったりします。一方、この教科書ではその辺りを丁寧に解釈する書き方になっています。ただし、初学者には何を解決しようとしているかがすぐには読み取れず、話の流れが分かりにくいと感じてしまうかもしれません。
11.3.2節では、波動関数とその一階微分が連続でなければならないことの理由を説明してあります。従来の教科書ではこのことを当然のように使っていて、あまり議論していません。この教科書ではトンネル効果の話のついでにさりげなくしのばせてありますが、実はかなり重要な話です。この節の隠しテーマの一つでもあります。
トンネル効果の具体的な計算は、初学者向けにはもっとずっと簡単な書き方があるかと思いますが、この教科書では独自色の強い解き方になっています。計算自体はそれほど難しくはありませんが、読み解くのに少し苦労するかもしれません。
計算内容がよく分からないという人は演習問題2の解答部分を先に眺めてみてください。演習問題2の問題文は「 (11.27) 式を導け」となっていますが、実は (11.22) 式あたりから始まる説明を再び最初から詳しくやり直して書いてくれてあります。
分かりにくいかもしれないところ
11.3.3節で具体的に解いて行くところが少し玄人向けになっている感じです。長い話ではないので計算を追いさえすれば理解は出来るかと思いますが、つまづきそうなところを補足しておきます。
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