もしもスタジアムのある街に住むのなら(仮題)vol.0 小さなスタジアムの隣の小さな家
旅するより住みたい派ですこんにちは。
これまで、OWL magazineのなかで、「旅をしないわたし」という立ち位置で、旅というモチーフと日常の境目あたりのお話を書いてきました。
私にとっての旅とは、「日常から完全に離れた非日常」に他なりません。「日常から完全に離れた非日常」はとても楽しいです。ドキドキします。でも私は隔離された非日常よりも、日常生活の中やその延長線上にあるものを大切にしたいと思っています。日常生活の延長線上にひそむ非日常のあれこれをこよなく愛しています。
そしてもう一つ、旅について思うのは「旅を迎える側」でありたいということ。私がいるこの場所は、誰かが帰ってくる場所でもあるということです。
大学の先生という私の仕事の1つは、大切に育てた学生を見送ることです。だから、彼らがいつでも帰って来られる場所でありたい。彼らがここで頑張った、楽しかった日々を覚えていられる人でありたい。私の日常は、彼らの良き思い出の場所でもあるわけだから。そんなふうに思っています。
かつて、所信表明でこんなことを書きました。もう2年も前になるんですね。
わたしはここにいて、そして旅をする。 旅を日常に溶け込ませる旅人と、 旅と日常を遠くに離して、日常を広げていくわたし。
全然違うように見えるけれど、日常そのものを愛しているというということにかわりはないのかもしれません。
これまでいくつかのエッセイを寄稿してきましたが、やっぱり私は旅そのものについてではなく、旅することと暮らすことを行き来するような連載がやりたかったんだということに気づきました。
そこで、来月から「もしもスタジアムのある街に住むのなら(仮題)」という連載を始めたいと思っています。
基本的にはスタジアムのある全国のいろいろな「街」を書いてみたいと思います。私が住んだことのある街もでてくる予定ですが、旅をして住んでみたくなった街の話を中心に書いていくつもりです。その街ならではの素敵なおうちの話や、住みたい家の探し方、ライフスタイルと間取りみたいなことも書いてみたいなと思っています。
住民票を移した転居だけでも15回。1ヶ月程度の滞在を含めれば、かなり多くの街で暮らしてきました。旅や出張でいろいろなところに行きました。その中で考えてきたこと、例えば
どの街に住むのか、どんな街に住むのか
この、似ているけれどぜんぜん違う2つについて思うことだったり、
衣食住における住のバランス問題
住む場所を選ぶときに考えたいこと
みたいなことを、それぞれの街の話にくっつけてお伝えできればと思います。
暮らしに関する話題から旅に思いを馳せたり、時には旅から暮らしを考えたりするような双方向性のある読み物にしていきたいなと思っています。
今回はvol.0として、小さなスタジアムこと、この写真みたいな小さな野球場の一番近くの家に住んでみた思い出をほんの少しだけ。
まともに稼げるようになって初めて住んだ家は、新築のきれいなアパートでした。
ハウスメーカー施工のアパートで、一人暮らしに不便のない作りだったのですが、あまりの過不足のなさに2年でなんとなく飽きてしまいました。
せっかくならちょっと個性的な家に住んでみたいなと思いながら家探しをしているときに、お手頃な値段の2階建てテラスハウスを見つけました。
今考えても一人暮らしで2階建てとはなかなか思い切ったものです。
オートロックもモニター付きインターフォンもない、築年数の古いテラスハウスでしたが、広さと「立地」が気に入って引っ越しました。
新築のアパートや実家のマンションに比べれば、少し隙間風も入るかなという感じでしたが、長い学生時代にはもっともっと古い物件に住んでいたこともあったので、そのくらいは気にならないなと思って決めました。
こんなイメージの物件です。どう考えても家族向け。
最寄り駅まで徒歩15分という表記で、本当は20分くらい
駅までには厄介な坂あり
でもそのときは主な足が車だったため、駅から遠いことはまったく問題になりませんでした。
それよりも、周りに高い建物がなく、建物と建物の間が広々としているエリアで、風通しがよさそうなところと日当たりが良いところが気に入りました。
そして、テラスハウスの斜め向かいに小さな野球用のスタジアムとサッカーができる土のグラウンドの運動場があったことも、決め手の一つでした。
プロやレベルの高いアマチュアの試合が組まれるようなスタジアムではありません。草野球や少年野球に使われるような、小さな小さなスタジアムです。
でも、生活のすぐとなりにスポーツの息遣いがあるのがとても魅力的で、初めて物件を見に行ったとき、そして引っ越しが決まったときにすごく嬉しかったのを覚えています。
スタジアムに一番近い建物の、一番スタジアムに近いすみっこの部屋が私の新しい城でした。
引っ越して初めての日曜日の朝のことです。朝8時くらいだったかしら。
ものすごい音に起こされました!
何事かと思って様子を見に外に出てみると、少年野球チームの試合に集まるたくさんの車。ちょうど家の前がスタジアムの駐車場だったのです。
子どもたちの声もたくさん聞こえたのですが、それよりも親御さんたちの楽しそうな歓声やおしゃべりの声がひっきりなしに聞こえます!
これが、新しいマンションとかだったら、たぶんそこまで声が聞こえなかったのだと思うのですが、なにせ古い木造テラスハウス。筒抜けです。
私の考える相場より安いなとは思っていたんですよ。理由はこれでした。
貸主さんからは少し聞いていましたが、まさかこの大きさとは! びっくりしました。
ただ、とても楽しそうな雰囲気だし、試合が始まってしまえば歓声もひっきりなしという状態ではなくなるのとで、まあいっかと
二度寝しました
私、ノイズキャンセリング機能がついているので、音に危険がないと判断できればまったく気にしないでいられるのです。
だから工事中とかでも普通に寝られます。なかなか便利です。
世の中にはパーフェクトな物件など存在するわけありません。
湯水のようにお金を出せばたぶん見つかるのでしょうが、現実的でない以上につまらん。それよりも
・他の人にとってはさほど魅力的に見えなくても、自分にとっては大好きになれるポイントがあること。
・他の人にとって大きなマイナスでも、自分にとってはそんなに気にならないというポイント、すなわち「愛せる難」があること。
私の場合、この両方が満たされるとき、物件にしても街にしても満足度が高くなる傾向にあるようです。
スタジアムのすぐ近くの物件や街は、大きいスタジアムだろうが小さいスタジアムであろうが、休みの日には朝から賑わいます。その楽しそうな声を良いなと思える人にはおすすめです。
「旅はそこに暮らす人の幸せのお裾分け」
私は、そんなふうに思っています。
遠くのスタジアムに行く時には、自分の街を大事にするようにその街のことを大事に考えて振る舞えば、きっと素敵なお裾分けがもらえるんじゃないかなと思っています。
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サポーターはあくまでも応援者であり、言ってしまえばサッカー界の脇役といえます。しかしながら、スポーツツーリズムという文脈においては、サポー…
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