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スモールビジネスでは、規模拡大の誘惑に負けないことが大事

スモールビジネスを立ち上げてしばらく経つと、「このままどんどん規模を拡大していけないかな」と考える瞬間がやってくるかもしれない。
人を大量に採用して受注を増やし、属人的なやり方を排除して、さらに投資をして事業を大きくする、いわゆるスケールアップの誘惑だ。感覚的には、年商数千万円を安定して出せるようになった頃にこのような発想に至る人が多いようだ。

ところが、勢いに任せて拡大路線を突き進んでも、本来のスモールビジネスの良さや経営者自身の健康を犠牲にしてしまう危険性がある。無理やり組織化を図って生産性が落ちたり、大きい取引先に依存しすぎてリスクを増やしたりといった、拡大の落とし穴は意外に多い。

このnoteでは、「スモールビジネスが規模拡大の誘惑にどう向き合うか」をテーマに、生産性や組織づくりの視点、さらにはライフスタイルの大切さまで含めて考えてみたい。年商が数千万円になったからといって“倍増だ!”と突っ走る前に、一度立ち止まって自分の器や目指す姿を見極めることが、本当に賢い選択かもしれないからだ。

生産性を維持しながら拡大するのは至難の業

スモールビジネスが拡大を目指すとき、よく問題になるのが「同じ品質・同じ生産性をどうやって保つか」という点だ。自分ひとり(あるいは少人数)で高い生産性を発揮していたからこそ、それなりの規模に育ったというケースは多い。そこへ人をどんどん採用して組織を大きくしようとすると、ノウハウ共有のためのマニュアル化や、マネジメントの仕組みづくりが必要になる。

しかし、このプロセスは想像以上に手間とコストがかかる。たとえば“属人性を排除したい”と言っても、メンバー全員がスキルを身につけるまでの教育期間を甘く見積もると、かえって生産性が低下してしまうこともある。かといって教育体制を整備するには時間とお金を要する。そうこうしているうちに、結局は「自分が現場に張り付いて管理しないと回らない」という状況になって、オーナーが疲弊するパターンは珍しくない。

生産性が落ちた状態で人数だけ増えると、人件費やオフィス家賃などの固定費が膨らむ。そこまでリスクを負って拡大に挑むほど、得られるリターンは大きいか?この問いに「イエス」と自信を持って言えないなら、規模拡大に慎重になっても決しておかしくない。

あなたは組織を率いる“器”の持ち主か?

組織化で大きな壁となるのは、オーナー本人が「マネジメントに向いているか」という問題だ。ビジネスのアイデアや商品開発は得意でも、複数人を束ねてチームとして力を発揮させるのは別の能力を要する。

「自分ひとりで稼いできた」のと「組織を率いる」は、まるで別競技だと考えたほうがいいかもしれない。優秀な営業パーソンが必ずしも優秀な営業マネージャーになるとは限らないように、個人プレーで成果を上げてきた人が組織拡大に向いているとは限らない。そこを見誤って無理やり会社を膨らませると、内部でトラブルが頻発し、オーナーもストレスで参ってしまう。

逆に、リーダーシップに自信があり、組織を育てるのが好きなタイプなら、思い切って規模拡大を狙ってみる選択は十分あり得る。自分が“器”の面でどの程度まで耐えられるかを客観的に判断することが大事だろう。

正直なところ、スモールビジネス経営者は大企業のやり方が肌に合わずに起業した経緯を持つ人が多いので、この適性がある人はかなり限られる印象だ。

一つの収入源が大きくなりすぎるリスクを織り込もう

規模拡大の路線を突き進むと、ある特定の商品や顧客(取引先)に依存する度合いが高まることがある。大口取引先を獲得して一気に売上が倍増した、というのは成功ストーリーっぽいが、その顧客が離れたら一気に売上の半分以上が吹き飛ぶという危うさも抱える。

スモールビジネスだからこそ“多角化してリスク分散を”というのは難しい面もあるが、少なくとも「収入源が一点集中になりすぎると危険だ」という認識は持っておきたい。大きな案件を何件も抱えるだけの組織体制を作る余裕がないなら、無理して受注範囲を拡げるよりも、今の規模で複数の中規模案件を回すほうが安定する場合もある。

まとめ:スモールビジネスは自分の強みと人生観を軸に、“規模拡大”を判断する

スモールビジネスで「そこそこ稼げるようになってきたから、もっと投資して伸ばすぞ!」という気持ちは自然だし、積極的に取り組むメリットも大きい。ただし、その過程には生産性の維持組織を率いる器大口案件依存のリスクなど、考慮すべき要素がたくさんある。

本当に大事なのは、オーナー自身のビジョンやライフスタイル、強みといった“軸”だ。自分が管理業務やマネジメントに苦痛を感じるタイプなら、無理して組織を大きくしようとしても長続きしない可能性がある。逆にチーム作りが得意で、人材を育成して拡大していくのが楽しい人は、早めに攻めて規模を拡大するのも悪くない。

最終的には、どの程度の自由や負担を許容し、どれくらいのリスクを負ってでもリターンを求めるのかが問われる。規模拡大の誘惑に負けるのではなく、それをうまく制御して、自分の理想のスモールビジネスを形にするのが賢明だろう。体を壊してまで大きくする必要はないし、かといって成長のチャンスを完全に捨てるのももったいない。自分の器を見極めながら、バランスよく進むのが一番ではないだろうか。

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