今年の活動まとめ🐧
今年も旭山ペンギンのお散歩で納めました。
旭山動物園のペンギン散歩は冬場の運動不足の解消、ケガ防止、さらには繁殖期の体力づくり(ずっと立ちっぱなしなので)などの目的があるそうで、お散歩することで改善が見られたので、ペンギンの健康のために続けているものです。(スタッフさんの説明や坂東統括園長のインスタライブより)
コロナ期が明けて、完全にお散歩を楽しみにしている海外からの来園者が増えました。年内最終日の29日は、40-50台くらいの観光バスが入ってきて、園内はとても混雑しており、私は列に並ぶのが苦手な田舎者すぎて2日連続で完全に食いっぱぐれました。冬季開園になってからは(とある理由から)英語で道を聞かれたり、ペンギン散歩についての質問に答えたりすることが増えました。仕事で香港に2回ほど行っただけの経験(というかマインド)がここで活きるとは。どこでもマナーが問題視されますけど、イラつく気持ちを抱いて帰るくらいだったらやれることやった方が私はすっきりするし、言い方だけ気を付ければ皆さんだいたい分かってくれるんだなあという学びを得たのは個人的に大きいです。
今年は結構活動したぞ!と思ったので、まとめてみました。結構長いので、年末年始の暇つぶしにぜひどうぞ。(ちょっと写真がサッと出なかったので年明けに追加します)
今年の活動報告ずらり
【1月】NHKカルチャースクール『ペンギンの世界』(オンライン)
確か、この場でペンギンのコミュニケーションに関する研究について質問したところから英語の文献への挑戦が始まった気がします。翻訳機能も使いつつですが、翻訳機能も変な要約をする癖があることがわかり…自力で読めるようになりたいと思いました。動物園の掲示物をみて日本語検索しても出てこなかったことが、英語検索するとずらっと並ぶことに気づいたときは、ああやっぱり英語なんだなぁ…と思いました。
【2月】長崎ペンギン水族館
もともと行きたかったところに、旭山からブリーディングローンで42番、51番、53番が出張することになったのが2023年の2月。なかなかタイミングが合わず、1年経ってようやく様子を見に行くことができました。丸一日居座ってあらゆるペンギンを観察できる贅沢。『長崎ペンギン物語』に書かれていた「ぎん吉」「ペペ」「フジ」「ペギー」にも会うことができ、胸が熱くなりました。
【2月】男鹿水族館GAO
なんとまあ荒々しい場所にそびえ立つ男鹿水族館。地質好きなので思わず地質図で調べたほど。たくさんのジェンツーやミナミイワトビがピョンピョンしてて、うらやましさと興奮と…。写真は珍しいゴマジェンツー。
【2月】青森県営浅虫水族館
古き良き水族館。青森と言えばホタテ。ホタテ大好きなので、入ってすぐに養殖の様子が分かる展示があり、人間の知恵もすごいもんだなぁと感心しました。ペンギンの展示としては大きくないですが、ちゃんと隠れられる場所もあり、昨年12月に孵化したフンボヒナが2羽いて、ああちゃんと命がつながっているんだなあと嬉しくなりました。お母さんは黄黄だそうです。
【2月】書籍『Why penguins Communicate』購入
NHKカルチャースクールで上田先生にヒントをいただいた英語の文献。すごい分量ですが参考文献もたくさんあるので、調べたい方向に深く潜っていけるように思いました。ちなみに少しずつ読み進めていますが、2024年12月現在も読了していません。
【4月】写真集『ペンギン大陸』『ペンギン大図鑑』購入
検索しても、野生のペンギンのことはさほど多くないなあと感じ、ネコでおなじみの岩合光昭さんの写真集と、ちょっと古めの図鑑を購入。古い図鑑のいいところは、今の時代には省略されている情報が案外載っていたりすることです。最新情報だけではなく、かつてどうであったかも手元に置いておきたいと思いました。
【4月】NHKカルチャースクール『ペンギンの世界~第二弾~』(オンライン)
野生のペンギンに関するニュースは鳥類にしては多い方だと思いますが、その読み解き方についてはやはり自然科学や地理、歴史、文化といった幅広い教養が必要だと感じました。
【5月】AOAO SAPPORO
名古屋港水族館に行く前乗りで行った水族館で、2023年の「ぺんきょー会」で出会った方にバッタリお会いし…その日以来、様々なペンギンファンの方と横のつながりを持つことができるようになった印象深い日です。
【5月】名古屋港水族館
ついにエンペラー、ヒゲ、アデリーをこの目で見る日が!!!てか、左右に広がる巨大水槽にびっくりよ。研究寄りの水族館ということもあり、ペンギンについて研究成果の展示も新しめで、キッズも参加できる講座もやっていて、いやぁーさすがすぎると思いました。
【5月】書籍『ペンギンは歴史にもクチバシをはさむ』購入
著者の上田先生は地歴の先生でもあり、さすがの博識でらっしゃいます。生き物は生物学だけではないのですよね。人間と同じように様々な分野を横断して存在しているので、逆を言えばペンギンを入り口にいろんな世界にアクセスできることを再認識しました。
【6月】AOAO SAPPORO
【7月】書籍『ペンギンの飼い方』『ウィロー教授のペンギン学特論』購入
たしか、何かを読んだときの参考文献にあって買ったはず。「ペンギンの飼い方」は飼育方法を勧めているのではなく、野生生物を飼うとはどういうことかを思い知る本。ウィロー教授はちょっと日本にはない構成で、ペンギンの見方も日本とはちょっと違うな?という気がしました。こちらは後でまた読み直す分類に入っています。
【8月】市立しものせき水族館「海響館」
『長崎ペンギン物語』を読んでいて、下関の名前が何度も出てきました。日本のペンギン飼育の歴史を知るうえで下関は重要な園館の一つ。しかもマカロニペンギンを飼育している数少ない場所でもあります。冬から休館して工事が行われるということで、その前に行っておきたいなと思いました。幸運にも抱卵中のキングを目の前で見ることができて、抱卵のうの奥まで見たのも初めてでした。そしてジェンツーたちが回遊する圧巻の大水槽。回遊はトレーニングによって行われていることがペンギン情報コーナーに置いてある記念誌に書いてありました。
【8月】長崎ペンギン水族館
まさか年に2度長崎に行くことになるとは思いませんでした。3羽とも元気に暮らしていて(特に51番)安心しました。AOAOのご縁で前館長さんにもお会いでき、現館長さん、そしてSNSでも大活躍のペンギン担当の方ともお話しできて大変良い勉強になりました。当時はまだ伝える側でものを考えたことがあまりなく「どういう風にしたら伝わるのか」ということを考えるいい機会を頂いたように思います。
【9月】AOAO SAPPORO
AOAOに行くとたいていおしゃべりして帰ってきます(笑)それが楽しい。
フェアリーのヒナが育つ姿も見られました。しっかしフェアリーのコミュニケーションこそ全然わからなくて!威嚇してるのか求愛してるのか区別つかず。
【9月】新さっぽろサンピアザ水族館
古き良きサンピアザ。2度目だったので、なんとなく関係性が見えるようになってきました。
【9月】おたる水族館
ジェンツーがみんな換羽期なの忘れて、今年生まれたヨウ様だけ。いつも高波で見られなかった海まで散歩を初めて見て、海で泳ぐペンギンを初めて見ました。おたるといえば「いうことを聞かないペンギンショー」ですが、お散歩もすごくいい活動だと思いました。背中が黒いから本当に姿が見えなくなるというのがよく分かる。さらにノブナリが全然帰ってこないのを見て爆笑。まさか2か月後に亡くなるとは思ってもみませんでした。
【9月】サケのふるさと千歳水族館
北海道民になじみの深いからと言って、サケのことに詳しいとは限らない。「いや、なんも知らんわ!」と思わされた素晴らしい水族館でした。川底が見られる水槽で1匹だけ悠々と泳いでるのをみて、あぁこれを旭川でも見たいのよ!と思うなどしました。(ここ数年は雨の濁りもあって遡上しているところに出会えていない)ここで知ったことが、旭山のシロザケ水槽の観察に繋がります。
【9月】登別マリンパークニクス
外にいるケープさんにようやく会えました。昨年3月に会った亜成鳥は残念ながら亡くなってしまったとのことでしたが、他のケープさんは元気にお散歩していました。8月下旬くらいに旭山で初めてクマノミの卵を見て、ニクスで今年生まれたクマノミのちびちゃんたちが成長していることを知ります…さすが水族館。旭山でもクマノミキッズがワラワラと見られる日が来るといいなあ。
【9月】釧路市動物園
海響館からやってきたフンボ達に会いに行きました。が、突然のガチ雨…それでも関係なく泳ぎ回るフンボ達。私が見たときは、かなりまとまって行動するなあと思いました。誰からともなくみんなでプールに入るし、誰からともなくプールから上がる。そして視力が良すぎて餌を運ぶバギーを見た瞬間に暴れだす!(笑)つまり、元気です。ペアの感じも全然わからなかったなあ。旭山は個が強すぎるのかしら…?(笑)
【9月】猛禽類医学研究所
その名の通りオオワシやオジロワシなどの猛禽類の保護活動を行っていて、バックヤードツアーに参加しました。風車や交通事故などで負傷した猛禽類をレスキューし、野生に戻せない個体はここで終生飼育をしています。道東ではエゾシカが激増していて、車や列車にはねられた死肉を啄んでいるところにまた轢かれてしまうという悪循環。ほかにも風力発電のブレードで断翼されるのを防ぐための「垂直軸型マグナス式」発電設備の実験や、感電を防ぐための設備なども紹介がありました。旭川にもオジロワシがやってきます。春の時期にはハクチョウやカモ類などの渡り鳥を狙います。
【9月】丹頂鶴自然公園
釧路と言えばタンチョウは外せないでしょう!ということで、こちらも保護施設になります。広めのケージに数羽ずつ飼育されており、タンチョウのことをよく知ることができる手描きの細かい解説が掲示されていました。
【9月】おびひろ動物園
帯広と言えばばんえい競馬。動物園に引退したばん馬がいるなんておびひろくらいじゃないですかね!落ち葉に埋もれたタヌキを見るにはちょっと早すぎました。少しずつですが、施設が変わってきています。動物福祉の改善や地域の特色を含めた魅力アップに力を入れ始めているのが伝わってきます。同じ北海道でも、道東はどうしても遠く感じ、解像度が低いままでした。でもその土地の動物園や水族館に行けば、その土地の暮らしや生き物のことがわかるというのはこれからも大事になっていくだろうなあと思いました。釧路もそうですが、地元の方の利用が多くてうらやましいなと思いました。
【10月】シマフクロウ普及啓発講演
旭山のイベントで、シマフクロウの保護活動をしている専門家の方の講演を聞きました。シマフクロウは英語でBlakiston's fish owlといい、フクロウの中では主に魚を食べる種類のフクロウで、川沿いに巣を作って暮らすそうです。シマフクロウがアンブレラ種と呼ばれている理由が非常によくわかって、保全するために魚道の整備などを行い地元の有志の協力を得ながら生息域が少しずつ拡大してきたというのはすごいことだなぁと思いました。一方で都市部で同様の動きをするにはまだまだ課題があるようで…
ちなみに「ペンギンは海の変化を監視するセンチネル(見張り番)」とする研究者がいます(*1)。実際にアフリカン(ケープ)ペンギンは人間によるカタクチイワシの乱獲により餌資源が不足していることで育雛放棄が起き、大幅に個体数を減らしていることが保護団体SANCCOBによって報告されています。(*2)現地との利害関係などの落としどころをどうしていくかというのは世界共通な課題であるように思いました。
(*1)P.D.Boesma 2008. Penguins as Marine Sentinels
(*2)SANCCOB 28 October 2024. African Penguin newly classified as ‘critically endangered’ as breeding pairs fall below 10,000
【11月】(自由研究)旭山キングの鳴き声収集完了
自由研究として取り組んできた旭山キングの鳴き声が一通り揃いました。来場者がいる中でやっているのでまだ音質の問題はあるのですが、やはり雄には雄、雌には雌特定のリズムがあり、旭山では100%雌雄判別ができそうです。どうやら同様の研究がすでに野生で行われていたようで(*3)ちょっとガックリしてしまったのですが、結果そのものは同じということで、かえって自信をつけることになりました。まだ先行論文の方を読み切れていないので、きちんと読んでからまとめる作業をしようと思っています。
【12月】天売島「サイエンスカフェ」(オンライン)
オロロン鳥やウトウ、ケイマフリなど海鳥の繁殖地として知られる天売島の「サイエンスカフェ」がオンラインで行われたので参加しました。餌状況がヒナの生育に影響するということの解像度が少し上がりました。「ペンギンが好きだからペンギンがいる地域を保護する活動を支援する」というのが分かりやすいけれど、問題の構造から考えると、結局は身近な鳥の保護活動と大きくは変わらないんじゃないかと考えるようになりました。
【12月】国立科学博物館 特別展「鳥」
確かに、一生分の鳥を見ました。図録は絶対に買うべし。
【12月】『ペンギン検定 基本問題集2025』購入
ペンギン検定があったら、「かわいい」から一歩も二歩も先に進めるんじゃないかとぼんやり考えていたところにまさかのお知らせ。テンション上がりましたね。初級、中級、上級計300問にすぐ取り組みましたが、あっけなく砕け散りましたね。地理や世界史の基礎知識があるとすんなり頭に入るんだろうなぁということも、多くありました。丸暗記とかではなく、原典を読んで解けるようになるようなペンギン知識をつけたいです。
【通年】旭山動物園
昨年より行く回数を抑えたつもりだったのですが、結局週1ペースで行ってました。(55回!)今年はアクアスのキングペンギンの産卵シーンをFacebookで見た次の日に、旭山で45番の産卵の瞬間に遭遇して大興奮!インスタで皆さんに見てもらえたのが嬉しかったです。いやぁ本当にフリッパーがプルプル震えるんだなと。直前までプールに飛び込んだりして落ち着きがなく、産卵直前でそんな動いて大丈夫なん…?という新たな謎行動もありました…。ジェンツーもキングも、ミナミイワトビも、今年こそヒナを…!という祈る思いがありましたが、残念ながら孵化には至りませんでした。でもきっと野生でもそういう経験を積んでいくんだろうなと。
羽替わりが来ていない28番を見て「ヒナだ!」という声に何度「大人なんですよ~」と伝えたことか。でも「動物園にも野生にも人間と同じように完璧な姿の動物がいるとは限らない」ことや「正しい認識を持って帰ってくれたらいいな」というお節介な気持ちの方が勝りました。
一方で個性爆発だったのが一番の若手、キング55番です。女の子ですがすっかりおてんばに。飛び込み岩からストイックに何度も飛び込みました。秋にはブームが変わり、プールから出口側の窓際に上陸して、お客さんを驚かせていました。チンピラみたいに(コラ!)首の動かし方をしながら歩く癖はどうやら一生もののようで、キョロキョロしたり先輩たちを容赦なくつついたりするのは頼もしくもあります。ビビリのくせにメンタル強めに振舞うのですが、一丁前に(お父さんに)求愛行動をしたり、雪が降ると集団の中にすっかり溶け込んで眠っているのを見ると、ああよかったなあという気持ちがわきました。
今年はイワトビやフンボの区別が少しずつできるようになってきた年でもありました。キングだけでなく、他の種類の行動なども見るようになって、やっぱりペンギンを一括りで語ってはいけないことっていっぱいあるよなあという気持ちを深めることになりました。振る舞い一つとっても、生息している地域のことを知らないと正しい理解にはならないことをスタッフさんとの会話で感じることもしばしばありました。
【総括】いま、感じていること
ペンギンだけを知っていては偏った理解になると思い知らされた1年でした。(すでに「人生かけても足りない」と感じている…)旭山のぺんぎん館にいるクマノミやイボハダイソギンチャク、あざらし館にはシロザケもいるのですが、これらに熱い視線を注いだのはスタッフさん以外に私がダントツだと思います(笑)スタッフさんたちは見えないところでいろんな挑戦をしているんだなあと感心するばかりでした。その努力を知っているだけに、ぺんぎん館のクマノミを見て半分以上の人が「Oh It' Nemo~!」「是尼莫!可爱」「ニモだ!かわいい~」と言って通り過ぎていく現実は、ほんの少し前の私のようで笑っちゃいました。「かわいい」には数種類の意味があり、「”次に行こうか”の適当な枕詞」にする人と「小さい=かわいい」という人と「心の底から湧き出るかわいい」というさまざまな用途を知った1年でもありました(笑)。私は心の底から湧き立つとき以外「かわいい」とはあまり言わない方なので…
そう、ちょっと前の私。シロザケに対する意識も同じでした。サケは北海道民には大変になじみのある魚で、特に私は小学生のときにサケの有精卵を孵して放流するということも学校で経験していたので、サケのことを知っているつもりでいました。でも北海道内の動物園や水族館が連携して実施している「北海道産いきもの保全プロジェクト」のスタンプラリーでサケのふるさと千歳水族館に行ったときは、「全然知らないじゃん!」と自分にツッコミを入れて帰ってきました。
その後、旭山のあざらし館で素通りしていたシロザケ水槽が実は海水だということを知って、サケの稚魚が海へ下ってベーリング海を回遊している間の姿は水族館でも動物園でもほとんど見られないのだと衝撃を受けました。
「知っているから素通り」は、あまりにももったいなさすぎる。
知っていたら見える世界が変わって、楽しいことがいっぱいある。
旅先でたまたま会った人との会話って、案外いい思い出になる。
そんなこともあって、今年の後半は特に自然といろんな人に話しかけるようになりました。旭山LOVERの皆さんにも良くしていただいて、今年は本当に様々な方と交流できた元年でした。年の瀬に『ペンギン検定 基本問題集2025』に取り組んでみて、知らんことばっかりや!と打ちのめされたことも、非常にいいきっかけになるのではないかと思っています。研究者になることはできないけど、自由研究くらいならできるかな?と感じているので、興味のあるかたは引き続きお付き合いいただけたらうれしいです。
それでは良いお年をお迎えください!