エッセイ:宇宙の蜉蝣
ガーベラ・テトラはアーケードゲーム「機動戦士ガンダム EXTREME VS.2 XBOOST」(以下クロスブースト)における僕の持ちキャラです。主に鈍足付きのメインチャージ射撃(ビームサーベル投擲)で相手の機動力を削ぎ、接敵して近距離からメイン射撃のビームマシンガンを押し付けるインファイトを得意としています。
「なんでそんな弱キャラに乗ってんの?」と心ないフォロワーから煽られることもありますが、格闘をまったく振れず、高コスト特有のキャンセルルートもろくすっぽ覚えられない僕にとっては極端な話、近づいてきたやつを弾幕で蜂の巣にするだけでいいこの機体は実に性に合っているのです。
「機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY」のモビルスーツ。シーマ艦隊を率いるシーマ・ガラハウ中佐が終盤に搭乗する機体です。こんなナリでも元々は「ガンダム試作4号機 ガーベラ」として開発された経緯があり、陰謀の末に偽装を施されてジオン残党の手に渡った……という異色の機体。どこかのシナンジュで聞いたような話ですが、それはさておきこの機体の推定スペックは時系列的な続編にあたる「Zガンダム」のモビルスーツすら概ね上回るオーパーツぶり。乗り手であるシーマ様の技量もあいまって縦横無尽に画面を駆け抜けるかと思われました。
しかしこのガーベラ・テトラ、有り余る実力に反して本編での活躍はわずか1分足らず。なんなら主人公の眼中にさえなく、ついでとばかりに撃墜されます。ウルトラマンより短けぇー。活躍らしい活躍といえば、発進後まもなく、艦橋の潰れたグワデンにとどめを刺した事くらい。そもそもガンダムに襲いかかった時点で、パイロットであるシーマ様は連邦との取引材料であったデラーズの身柄を確保できず、旗艦であったリリー・マルレーンも撃沈され、完全に退路を断たれて詰んだ状態でした。
出てくるなりやぶれかぶれに突撃してデンドロビウムの砲塔がコクピットに突き刺さった挙句、ゼロ距離射撃でオーバーキルを喰らって退場するさまは実に儚く、シーマ様自身の哀れな境遇もあいまって見るものの涙を誘います。
誰が呼んだか「宇宙の蜉蝣」。言い得て妙。平安時代で言うところの「もののあはれ」をまことに体現したかのようなこの機体の儚さは、ゲーム内でもばっちり再現されています。
まず強キャラが軒並み最高コストの3000に収斂されている「クロスブースト」の環境において、このキャラクターのコストは2000。2on2が原則のゲームとはいえ、対面のキャラパワーでは常に劣っている。まして況や巷では射撃ガードや弾幕をすり抜ける発生のはやい格闘が横行しており、肝心のビームマシンガンが機能しないことはザラ。メイン射撃をかいくぐられると回避ムーブなどこの機体にあろうはずもなく……。(余談ですが、対面でガンダム試作3号機と当たった時は高確率で覚醒技を狙われて内心ヒリついています。オタク的には好印象だし、それ以前に当たる僕も僕なのですが……。)
もっとも常に存在そのものが逆風に晒されている低コストの中にあってガーベラのキャラパそのものは比較的マシな部類。少なくとも中の上程度のポテンシャルはあろうかと思います。玄人志向ゆえに環境で見かけない分、対策されてない格闘機相手には滅法強く、迎撃メインはもとよりアシストサブが当たる当たる。また、起き上がりに合わせて今作で唯一の上方修正である特殊格闘射撃派生→サブ射撃を重ねると結構な確率で引っかかってくれます。赤ロック保存のアサキャンと特格射派生を軸に立ち回れば前作以上に中距離戦を維持できるでしょう。
本当は高コストの主役ガンダムに乗ってかっこよくコンボを決めたいが、才能に恵まれなかった僕。一方でガンダムとして開発されたにもかかわらずガンダムになり損なったガーベラ・テトラ。こういう機体の巡り合わせで鬱屈とした皮肉を描くのも「ガンダム」っぽいかなと思います。赤のガーベラの花言葉は「神秘」。これからも開発と環境に目を付けられない範囲でやっていきましょう。
全然もうバレてました。