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2019年に作った同人誌8冊の装丁まとめ(装丁・紙・印刷について)

今年作ったものは全部文庫本でした。
文庫本は、印刷費が高いというデメリットはありますが、特にマンガサークルの多いコミティアでも、遠目でも文庫本だと「小説だな」とわかってもらえて、誤解がなくていいなとも思っています。

以下、特に記載のないものはデザインも担当しています。

やさしくしないでくれた

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表紙:エンボス 135kg 布目
本文:淡クリームキンマリ 62kg
加工:スピン  ワイン色
印刷所:ブロス

やや本文がぶ厚めなこともあり、初めてスピン(しおり紐)をつけました。色味は表紙と同じ赤にしたけれど、差し色っぽくしてもかわいいかも。

エンボス布目という紙は初めて使ったのですが、PP加工がなくてもちょっとつるつるしていて、布目という通りに布っぽい手触りがあり、本の表紙として向いているように思います。

そして今日が始まる

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表紙:新シェルリンN プレーン180K
本文:淡クリームキンマリ70K
加工:角マル、RGB再現重視
印刷所:STARBOOKS
デザイン:Blankie

今まで出した中で一番薄い文庫本。カドを丸くする各丸加工をしたのでよりコンパクトなかわいさになったかと思います。(中身はメリバなので全然かわいくないですが……)

タイトル文字のはっきりした赤を生かすよう、RGB再現重視で印刷しています。印刷費10%が上乗せでした。

表紙用紙は、寒色が映えるとしてデザイン担当のいとう(Blankie)さんにおすすめ頂いたものです。ちょっとパール感があるきれいな紙です。

poison sugar cookies 百合短編集

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表紙:初版 OKスーパーポスト220K(再版分OKホワイトポスト180K)
本文:淡クリームキンマリ70K
印刷所:STARBOOKS
加工:クリアPP、蛍光ピンク差し替え(初版のみ)

蛍光ピンク差し替え印刷。去年、ヒステリシスという本でもともと蛍光色差し替えをする予定だったけれどできなかったので、一度やってみたかったものです。

再販分では普通にCMYKでピンクの印刷をしました。(現在通販・会場で頒布してるのは再販分です)正直、この感じだったら普通にCMYKでよかったなというのはあります…。

でもこれ以上ショッキングピンク的な色が生きるような表紙と考えると、よほど振り切れたピンクな内容でないと釣り合わない気もします。やりたい加工と中身のマッチング、難しいです。

好き、大嫌い、好き

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表紙:初版分 ジェントル 175kg ホワイトフェイス(再版分ホワイトポスト 180kg ホワイト)
本文: 淡クリームキンマリ 62kg
印刷所:ブロス
デザイン:レク

poniさんのイラスト+レクさんの繊細なデザイン、という最強レベルの組み合わせが実現できたのが大きいです。泣き顔の女の子を生かした繊細かつインパクトの強い表紙になりました。

初版分の表紙は一見普通の白い用紙っぽいのですが、少しざらっとした手触りがあって、繊細な表紙とちょうどあっていたかなと思います。(現在通販・会場で頒布してるのは再販分です)

王女様がメイドに監禁される話

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表紙:エンボス 135kg 布目
本文:淡クリームキンマリ 62kg
印刷所:ブロス

「やさしくしないでくれた」でエンボス布目を気に入ったので、再び使用したのですが、この本の場合端が紺色なので剥げやすく、PPをかけるか端を薄めの色にするかした方がよかったと思います。

おとぎ話感のある物語に、ちょっとレトロめな印象のあるエンボス布目は合うかなと思い、実際、雰囲気は合っているのですが……。せっかくの紙本なので、なるべく劣化が少ないものにしたいと思うのですが難しいです。

また、気に入った紙を同じように使おうと思っても、表紙のデザインはそれぞれ異なるので、「あれと同じように」というのはとても難しいことがわかります。

ここを楽園とする ヤンデレ小説アンソロジー

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カバー用紙:ミランダ 130kg スノーホワイト
表紙用紙:上質紙 135kg 白
加工:カバーにマットPP、箔押し金
印刷所:ブロス
デザイン:Blankie

大人っぽく、豪華に、というイメージでデザインをお願いした本です。

ミランダにマットPPはやりたかった加工のひとつ!PPをかけると特殊紙のざらざらした手触りなどの細かな特徴は消えてしまいますが、きらきらやでこぼこは薄まるものの残り、ちょっと変わった風合いになるので好きです。

きらきらしたミランダにマットPPをするとやや地味にもなりますが、豪華かつ落ち着いた印象にしたかったのでちょうどいいかなと思います。

デザイン担当のいとうさんから箔押しを提案して頂いたのですが、位置的に背にも箔が押せそうだったので、お願いして背表紙にも箔を押すデザインにしてもらいました。

表紙と背の箔の位置が近いので、印刷所で箔押しをする場合の最小範囲に収められています。(つまり、表紙部分だけに箔押ししても、背も合わせて箔押ししても料金が一緒)

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デザイン的にカバーの折り返しがやや短く、カバーが外れやすいところは反省点です。

不束な束縛

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カバー:コート紙 135k
表紙:色上質紙 最厚口(135kg) オレンジ
本文: 淡クリームキンマリ 62kg
加工:カバーにクリアPP
印刷所:ブロス

二年前に出した本のスピンオフ的な位置づけなので、その本となるべく装丁を合わせたいこともあり、自分でデザインをしました。イラストも前回と同じく空倉さんです。

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条件が同じなので、拙いながら私のデザインがちょっとは進歩していることが見て取れるように思います。
ただ、サンプル等で出している表紙イメージと実物がやや異なっていまして(サンプル等では白枠が周囲を囲っているイメージだけれど、印刷物では左右のみとなっている)、これは完全に私が断ち切り線を誤解したミスです……。

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細々変えつつ、同じところと違うところを楽しんで作りました。シリーズものの本を出すのは初めてだったのですが、2冊あると色々広がるなと思います。

夏の少女は還る

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表紙:エスプリVエンボス 180kg 白(アラレ)
本文:淡クリームキンマリ 62kg
印刷所:ブロス

色が薄めで、ハレーションを起こしたような白っぽいところもあるので合うだろうな、と思いエンボスあられを選びました。
これがとてもぴったりで、角度によってきらきらした印象になってイラストがとても活きてかわいいです。エンボスあられ自体が比較的安価な紙で、特に加工も加えていないので予算的にも助かります。

すでに二度ほど使ったことのある紙なので目新しさはないのだけれど、ある程度選択肢のある中でちゃんと合ったものを選べると「よかった!」という気持ちになります。

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私は装丁のことを考えるのも好きなので、どうしても色々新しい加工をしたり、新しい紙を使ったりしてみたい、と思いがちです。
でもせっかくやってみても、「それが本当にその本・イラストに合ったもの」でなければせっかくのその加工も生かせないのだな、と思います。

だとしたら、それが必ずしも何か目新しい紙や加工でなくても、その本・イラスト(あとは予算)に合ったものをちゃんと選べるのが、本当に装丁のことを考えられるということなのかなと思ったりしています。

とはいえ選択肢は常に持ちたいですし、新しいことはしたいので、一方で色々試す機会というのも窺いつつ、バランスをとってやっていきたいです。本当に装丁の世界は奥深くて楽しいです。

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