小説を書くことと本棚をつくること
小説を書いている人の間では一日に何文字書けるか、一時間に何文字書けるかということはとかく話題にのぼりやすいですが、それ以前に一日どのくらい読むか、という話はあまり聞きません。
勝間氏によれば、それは小手先の文章術を学ぶことではなく、「1日に10万字をインプットし、5000字をアウトプット」 するという、インプットとアウトプットによって支えられているとのことでした。
堀 正岳『ライフハック大全』 ※勝間氏=経済評論家の勝間和代さん
ノンフィクション的な文章と、小説とは当然事情が異なるでしょうが、具体的な数字を見るのが珍しかったので印象に残っています。
小説家の仕事場の写真などを見ると、だいたい据え付け型の天井までの大きな本棚があり、本が溢れています。
上記の引用に出てくる10万字はだいたい文庫本1冊。
そして逆に考えれば、(そしてものすごくざっくり換算すれば)、文庫1冊を生み出すために、読む本は20冊となります。
1冊の背後に20冊があり、その20冊の背後に更に20冊があり……と考えると途方もないのと同時に、何だか嬉しくなります。
書く、というのは結局もっと大きなことのごく一部で、氷山の一角のようにたまたま人から見える形になったものが「本」のように思います。
その背後には膨大なボツ原稿があり、考えたけれど使わなかった設定や、たまたま読んでいた全然関係ない本や、ふと会話した誰かの言葉など、様々なものが合わさって氷山を形成している。
先日、「プロフェッショナル 仕事の流儀」で脚本家の坂元裕二さんが登場されていました。
その仕事場の背景にある本棚は、最近出版された『脚本家 坂元裕二』の最終ページに大きく掲載され、書名を確認することができます。
その中には、坂元裕二さんの作風から納得がいくものも、意外に思えるものも、どちらもさまざまな本がありました。
最近読んでとても好きになった本を見つけると楽しく、ずっと前から大事に思っている一冊を見つけると、見えない繋がりを感じたようで嬉しくなりました。
小説をもっと書こう、と去年思い立ち、本棚をひとつ増やしました。
今まで読み終わった本は厳選し、多くを捨てざるをえなかったのですが、以前よりは多くを残すようにして、実家からももう少しだけ読み返したい本を持ってきました。
既にその本棚も一杯で、本格的に電子版への切り替えを考えなければ……と思っているところではありますが、たぶん、今も小説を書けているのはその新しい本棚と、元から家にある本棚のおかげなのだと思います。
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