【時事日記】 「消えてゆく小売店」
テーマはこんなではあるが、これは日本ではなくてアメリカでの話である。アメリカでは巨大なショッピングモールが買い物の中心で、個人商店などというものは本当に田舎に行かない限りはなかなか見かけない。日本でも最近増えている郊外型ショッピングモールも元はアメリカのスタイルでもある。
アメリカのショッピングモールは大きな器があり、その中のブロックにそれぞれ小売店が入っている。外側は一緒であっても百貨店とアパレルが同じショッピングモールに存在するなどと言うことは当たり前のことである。景気が悪くなれば小売店が閉店しまるで櫛の歯が欠けたような状態になる。そしてまた景気が回復すると新しい小売店がそこに入り、ショッピングモールはこのようにして姿を変えていくのだ。これは日本でもおそらく同じ事だろう。
店舗が減少した小売店
次に紹介するものは2020年に店舗を減らした小売店舗だ。ほとんどは米国内での展開しかしていないので日本では知られていないが、中にはあ、これ見たことがあるという店もあると思う。
・Victoria's Secret(婦人ファッション美容用品)
2020年末米国とカナダの1000近い区の店舗が閉店。トランスジェンダーやクイーンサイズ非対応の運営方針に反発があった。
・Express(総合ファッション小売)
2022年までに約100店舗を閉店すると発表。2021年1月現在66店舗が閉店。
・Chico's(婦人ファッション小売)
アラサー以上をターゲットにしていた。最盛期米国とカナダで1400以上の店舗があったが2022年までに250店舗にまで縮小、
・Papyrus(文房具、グリーティングカード小売)
リーマンショック以降業績低迷、グリーティングカードの需要が減っていることから米国とカナダの合計254店舗が閉店。
・Macy's(百貨店チェーン)
2020年に125店舗を閉店したのを皮切りに、三年計画で全体の5分の1の店舗を閉鎖予定。
・Office DEPOT(オフィス・文具小売)
最大手文具チェーンのひとつ。2019年までに55店舗が閉店。2021年末までにさらに90店舗を閉鎖する予定。
・GAP(総合アパレル)
かつては日本の至る所にもあったGAPは業績低迷にあえいでいるが、2018年の年末商戦で大打撃を受けている。業務形態がEコマースへとシフトして実店舗の業績が低迷していたからだ。コロナ禍の直前に1年間で230店舗を閉店すると発表していた。
・Olympia Sports(スポーツ用品小売)
米東部を中心に展開していたが、2019年11月から精算セールを開始して半数の店舗が閉鎖された。
・Tuesday Morning(ネームブランド値引き小売)
2020年夏までに230店舗を閉鎖して売却。
・J.C. Penney(百貨店)
誰もが知る百貨店。2020年破産保護を申請、計画していた242店舗中2020年末までに192店舗を閉鎖、残り50は2021年末までに閉鎖。
・Family Video(ビデオレンタル店)
2020年に約200店舗を閉店し業務を縮小させた上で次の戦術を検討中。
・GameStop(ビデオゲーム販売店)
わざとライバル店の近くに店を作って顧客を奪う方法で事業展開。コロナ禍でも実店舗至上主義で従業員を無理に働かせたため従業員から反感を買い2020年末までに少なくとも320店が閉店。
・Signet Jewelers(ダイヤモンド小売)
多チャンネル経営の一つだったが業績悪化で閉店が続き、2020年末で約200店舗が閉鎖。
・Stein Mart(総合アパレル小売)
100年の歴史を持つディスカウントアパレル小売。去年8月に破産申請をして280店舗を閉鎖。
・Brooks Brothers(高級紳士服小売)
200年以上の歴史を持つ高級服専門の老舗ブランド。現在のライフスタイルからはかなり逸脱しパンデミック以前から業績は悪化、全米の店舗の5分の1を売却する。
・Sears(百貨店)
業績悪化は以前より進行し、2019年には破産を回避はできたがその後の店舗閉鎖は止まらず、コロナ禍で痛手を受けて2020年だけで51店舗が閉鎖される。
・Kmart(ディスカウント小売)
最盛期は全世界に2400以上の店舗を有していたが2002年に破産申請をしてから業績悪化、Searsと合併をするが歯止めがきかず、2020年には45店舗が閉鎖された。
・Lucky's Market(スーパーマーケット)
コロラド州を拠点にし最盛時は40店舗あったが去年1月に破産を申請、32店舗を閉鎖。
・Lord & Taylor(百貨店)
創業1826年、業務悪化で数年前にニューヨークにある旗艦店を閉店。業務形態をレンタル業に変えたが業績不振は続き去年8月に破産申請、全店舗の50%を閉鎖。
・Hallmark(カード小売)
2020年に少なくても18店舗が閉鎖。商品の需要が低下したことが原因。
・Bloomingdales(百貨店)
現在はMacy'sが所有するデパートチェーン。2020年にマイアミに残る35店舗のうちの1つが閉店。
店舗は減ったが回復しつつある小売店
・GNC(健康食品)
昨年連邦倒産法11章の申し立てをし、最高で1200店舗を閉店すると発表。しかしながらコロナ禍で需要が上がり再生の可能性が期待される。業績低迷とコロナ禍は無関係。
・Walgreens(薬局チェーン)
2020年までに全店舗約9600店舗のうちの3%を閉店すると発表。今後事業をオンライン化させる。
・Destination Maternity(マタニティデザイン小売)
2020年までに183店舗が閉鎖。今後事業をオンライン化させることで活路を探すことを発表。
・Forever 21(ファーストファッションチェーン)
かつては日本にもあったForever21。低価格、頻度の高い商品入れ替えなどの手法を展開。使い捨てと言われるスタイルにターゲットの10代にまで疑問を抱かせることで業績悪化。連邦倒産法11章の申請を行い200弱の店舗は閉鎖、新オーナーが路線変更し残り450ほどの店舗を守ることを発表。
・Sur La Table(調理器具、厨房用品小売)
コロナ禍による業績悪化で破産申請。店舗の半分を売却し残りの半分を再建させた。
・The Children's PLACE(子供服と雑貨小売)
米国とカナダで900以上の店舗を有していた老舗。2020年に約200店舗を閉鎖、販路をオンラインへとシフトさせコロナ禍に対応した新体制で継続。
・Bed Bath & Beyond(家庭用品小売)
店舗数約1500のうち2020年末に予定していた60店舗の他にコロナ禍のあおりを受けて200店舗を閉鎖。現在再起準備中。
・Bath & Body Works(バスショップチェーン)
コロナ禍のあおりを受けて店舗を訪れる客は激減した反面、取り扱う消毒液や石鹸の需要は激増し売り上げは2倍になった。しかし50店舗を失う。今後は高い需要に新しい販路で応えていく。
・CVS(ドラッグストアチェーン
店舗数9000以上を誇るどこにでもあるドラッグストアのチェーン。多少の店が閉店になっても気づかれない。コロナ禍のあおりを受け無駄な店は閉鎖し、代わりにヘルスケアや診療サービスを展開させる
・Nordstrom(デパート)
コロナ禍のあおりを受け2020年に16店舗が閉鎖、残りを死守させるために路線変更などを試みる。
完全になくなってしまった小売店
・Art Van Furniture(家具小売)
2020年3月に全店閉鎖を発表。連邦破産リストに登録。
・Modell's Sporting Goods(スポーツ用品小売)
ニューヨークを中心に東海岸に展開していた。2020年4月に24店舗の閉店を発表後連邦破産リストに載せられてマサチューセッツ州からヴァージニア州までのすべての店を閉鎖。アマゾン等の大手の通販会社との競争、ならびに前年は地元のスポーツチームが成績不振だったことからスポーツ需要が低下していた。
・A.C. Moore(工芸品小売)
独特なクーポン戦術が人気だった店。2020年までに全ての店舗が閉店。時代の波に乗れなかったことが原因。
・Wilsons Leather(皮革製品小売)
最盛期米国とカナダで763店舗を有していたが業績悪化で親会社が閉店を決定。
・Pier 1 Imports(輸入家具雑貨小売)
2020年初頭では閉店などに全く言及をしていなかったが、コロナ禍のあおりを受けて突然破産保護と店舗売却を発表。936の全店舗を閉店、売却。
・Stage Stores(アパレル小売)
2020年5月に破産申請をし全店舗閉店を決定。原因は2019年のEコマース拡大のため店舗業務の売り上げの凋落とその後のコロナ禍によるもの。ならびに地方のチェーンだった事から中央との競争に勝てなかったこと。
・Earth Fare(スーパーマーケット)
大手通販台頭のあおりを受けて2020年で50全ての店舗を閉鎖、売却。
・Century21(デパート)
デパート不振とコロナ禍のあおりを受け2020年に破産申請をして店舗閉鎖。なお日本でもお馴染みの不動産業とは別の会社であるが、デパートの方が歴史は長かった。
こんな閉店もあった
・AT&T(総合情報通信会社)
言わずと知れたアメリカの情報通信会社である。最後にアメリカに行ったときに利用したローミングサービスもAT&Tだった。この会社は多方面に展開する事業の中の一つに小売を持っていた。去年250店舗を閉鎖。しかしながらこのたった2年前には1000店舗の出店計画を発表していた。コロナ禍の影響があったものだと思われる。
・Bose(オーディオ小売)
去年末までに米国内50店舗とヨーロッパ、日本、オーストラリアにあった119の全ての店舗を閉店した。この店のそもそもの目的はBOSEというメーカーの製品を知ってもらう啓発事業でもあったため、認知度が十分に上がったことから店舗としての役割が終了したものと思える。もちろんだが業績不振という言葉はこの店にはなかった。
小売店舗がなくなると
冒頭にも書いたがこれらの小売店舗は謂わばショッピングモールの顔でもあったお店もある。そこが閉店すればその場所だけ人の流れが減る。すぐに次の店が入ればよいが、時として櫛の歯が欠けたようになればショッピングモール全体にも影響が及ぶ。特に2020年からはコロナ禍という未曾有の危機が迫っている。
こんな現象が今、アメリカでは話題になっているのだ。それまでショッピングモールに行けばごく当たり前にあったお店がある日突然なくなってしまう。自分の生活の上でも今後こういったことが多くなってくるかも知れない。これはアメリカだけの話ではなさそうな気もしてならない■
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