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【詩作日記】「異国の出来事 / エザン(3)」

「エザン(3)」

湖の畔の街
エールイディルの昼下がり
英字新聞を求めて
ふらふら歩いていた
小学校が終わったところで
子ども達の視線に晒されて
日本人だと小声で囁かれている

小さな店をのぞき込んだとき
突然街の通りにあるジャミイから
エザンが聞こえてきた
急ぎ足でジャミィへと歩き出す男達の
流れに逆らって歩いていく

真昼に響く祈りの声に
もう新聞なんてどうでも良くなってしまう
乾いた色の街の中
耳を澄ませて佇んでいた

異国の異教徒である僕にも
昼の祝福を分け与えてくださるように感じた


「エザン(3)」 詩集「異国の出来事」より
1997年ディナールへ向かうバスにて 2021年再推敲

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