マガジンのカバー画像

病牀二十一貫

36
短歌集「病牀二十一貫
運営しているクリエイター

2021年3月の記事一覧

【短歌日記】 「病牀二十一貫」9−2

【短歌日記】 「病牀二十一貫」9−2

歩行器でやっと歩けたその時に遠くで誰か僕を呼ぶ声

リハビリのきついペースに合わせれば午後はほとんど寝たきりになる

病棟の東へ西へ何度でも歩き続ける午後の決め事

【短歌日記】 「病牀二十一貫」9−1

【短歌日記】 「病牀二十一貫」9−1

全身のチューブが取れたその日から次なる試練は始まっていた

3週間ぶりに頭を上にして眩暈ばかりで起きられもせず

平時には我が家から見る建物の中から我が家の窓を探して

【短歌日記】 「病牀二十一貫」8−2

【短歌日記】 「病牀二十一貫」8−2

手術後に緊張の糸解けたか消灯後の記憶乏しく

真夜中に得体の知れぬ音響く洒落にならない時間が始まる

3日しかいない時間がとてつもないものに感じた救急病棟

【短歌日記】 「病牀二十一貫」7−2

【短歌日記】 「病牀二十一貫」7−2

朦朧とした意識の中で思い出すいつ見た夢とも知れぬ映像

目を閉じて無数のチューブやベッドこと浮遊始める感覚に落ち

指先のテープの犬のイラストが負けちゃダメだと励まし続け

【短歌日記】 「病牀二十一貫」7−1

【短歌日記】 「病牀二十一貫」7−1

麻酔から覚めるとそれまでの事は過度な疲れで改めて知る

電子音ばかりの集中治療室計器にあやされ眠りの淵へ

身体から無数のチューブはみ出して雁字搦めの夜は更けゆく