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謝罪からはじまった進化「しまむら」再建の軌跡
「3年間の経営方針は間違っていました。申し訳ありませんでした。」
約2,000人の管理職を前に、社長の就任挨拶という注目の場でこの言葉を口にした、株式会社しまむらの鈴木社長。
勇気ある行動に出た鈴木社長のその後の取り組みを、2024年9月12日放送の「カンブリア宮殿」をもとに、内容を再構成して紹介する。
「しまむらに行ったことはあるけれど、ほしいものがなかった」
そんな経験をしたことがある方に、ここ数年の「しまむらの進化」を、ぜひ見届けてほしい。
次へ進むための謝罪
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2013年にもカンブリア宮殿に登場しているしまむらだが、実は、その後2010年代後半、売り上げは低迷していた。
上のグラフを見てもわかるように、2010年以降はスマートフォンの普及率が大きく伸びた時期である。
さまざまなネットショップが台頭し、独自の戦略を打ち出しては顧客を集める。若い世代はいち早くそれを活用し、スマートフォンからの買い物が多くを占めるようになった。
しまむらの低迷は、その影響も大きかったのだ。
2017年に売り上げが落ち込み、2020年まで3期連続で減収減益に転じる。
その会社の再建という重責を担うことになった鈴木社長。
社長の就任挨拶で発したあの言葉は、「けじめをつけて次へ進むための謝罪」だった。
変えてはいけなかったもの
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低迷期のしまむらは、売れ筋を重視するあまり商品の種類をしぼった戦略をとっていた。つまり、売れるものだけを選んで販売していたのである。
その結果、ターゲットにもれた客層からは、
「しまむらに行っても欲しいものがない」
「着たくなる洋服がない」
という声が聞かれた。
鈴木社長は、この「売れ筋を重視し商品の種類をしぼった戦略」を過ちだったとし、方針転換を図る。
現在、しまむらでは17にもおよぶプライベートブランド(PB)を展開している。キッズからシニアまで、あらゆる年代をターゲット層に設定、テイストも多様で抜けもれがない。
売れ筋商品だけにしぼっていた頃のような
「私が着たいものがない」
そんな現象は起こりにくくなった。
変えなくてはいけなかったもの
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方針転換を図ったしまむらは、今まで抜けもれていた客層をターゲットにし、数々の新たなPBを作った。
「変えなくてはいけなかったもの」を取り入れた結果だ。
しまむらでは「50~60代のエレガンス」をテーマとしたPBもある。
売れ筋商品にしぼっていた頃には、重視していなかったターゲット層だ。
おしゃれに手を抜かない50~60代を読者にもつ女性雑誌とコラボすることで、ターゲット層のニーズに合った品ぞろえにもつながっている。
上質なものへと競わせる仕組みづくり
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しまむらのPBの中でも好調なのが、30~40代向けのナチュラルテイスト「SEASON REASON」。
こちらも女性誌とのコラボが実現し、着心地の良さや着たときのシルエットなどを重視している。
そのため、小さい子どもと公園で体を動かすことが多いママや、体型が気になる女性にも選ばれる結果につながった。
しまむらには、約600社ものサプライヤーが「しまむらで商品を扱ってほしい」と売り込みに来る。
先日おこなわれたSEASON REASONの新商品の選定では、30社が選ばれ500着にもおよぶサンプルデザインを競った。
しまむら専門バイヤーが「ターゲットに合ったデザインかどうか」を、厳しい目で判断するため、30社のうち採用されたのは、わずか6社だ。
選ばれたサプライヤーには、しまむらから10,000着もの注文が一気に入る。
しまむらの全店舗分である。
しかも、しまむらは「返品なし」というルールのため、サプライヤーにとっては是が非でも獲得したい大口顧客となる。
こうして、600社ものサプライヤーを競わせることで、しまむらの店舗に並ぶ商品のさらなる質向上につながった。
1点ものを見つける「ワクワク感」を感じてもらう工夫
採用されたサプライヤーの商品は、それぞれのしまむら店舗ではサイズ違いをのぞき「1点もの」となる。売り切れた商品の再入荷はしない。
以前は「どこの店舗へ行っても同じ」だった商品だが、今では掘り出しものを見つけるワクワク感を満喫している客も多い。
店舗ごとに並んでいる商品が異なるため、複数の店舗に足を運ぶ客や、掘り出しものを求めて週2回しまむらに通う「しまらー」もいるほどだ。
人気インフルエンサーとのコラボ
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しまむらは、集客アップのためインスタグラムにも力を入れている。
これまでに、タッグを組んできた人気インフルエンサーは50人におよぶ。
インフルエンサーは、フォロアーとのやりとりが活発だ。
ターゲットの声を直接聞き、ニーズも把握している。
インフルエンサーとコラボすることで、しまむらのバイヤーも顧客のニーズにより敏感になる。ニーズの変化にはスピード感が重要だ。
しまむらの商品をインフルエンサー自身のインスタグラムで発信してもらえれば、ターゲット層にも届きやすく、影響力も大きい。
以前は折り込みチラシが中心だった広告だが、それを続けるには広告費がかかる。チラシを外注すれば制作費、それ以外にも折り込み料や印刷代もかかり、全国規模となれば広告費もかさむ。
新聞の購読者が徐々に減っていることを考えると、折り込み広告からデジタル広告やSNS運用へと軸足をうつすのは自然な流れだ。
80%の店舗受け取り率で相乗効果
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独自の物流システムという強みをもつしまむらは、オンラインストアにも力を入れる。
自宅への配送ではなく店舗受け取りを選ぶと送料が無料、さらに試着もできる取り組みをおこなっている。
試着してみて「思ったものと色味が違う」「サイズが合わなかった」などの理由でキャンセルもできるというから驚きだ。
その効果もあり、オンラインストアでの注文のうち、およそ80%は店舗受け取りだという。
この店舗受け取りシステムにより、「せっかく来たから」とオンラインストアで注文した商品以外にも、買い物をしていく客が増えた。
客単価アップ
来店頻度アップ
この2つにつなげるにはどうしたらいいか。
その目的を果たすために、オンラインストアと実店舗をうまく組み合わせ、成功した事例になった。
低迷期に「作り手都合の商品」を優先していたしまむらは、こうした数々の取り組みにより、顧客ニーズを把握しそのニーズに合った商品を販売する経営方針に転換。
2023年は、6,000億円を超える過去最高の売り上げを記録した。
3年連続減収減益だった会社を、見事に復活してみせた鈴木社長。
社長就任での勇気ある発信と「変えてはいけなかったもの」「変えなくてはいけなかったもの」を見極めるその判断力は見事だ。
それぞれの掘り出しもの発見へ
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北は北海道、南は沖縄まで約1,400店舗を展開しているしまむら。
インフルエンサーとのコラボ商品を限定販売
身長が低い女性のお悩みを解決する品ぞろえ
など、今回記事を書くにあたってしまむらのホームページを見ていたら、実にさまざまな層をターゲットにしたPBがあることがわかった。
しまむらが売れ筋商品にしぼっていた頃、「着たいものがない」を実際に経験している50代の私でも、どうやら掘り出しものが見つかりそうだ。
洋服だけでなく布団カバーやスリッパなど、家庭用品も幅広く扱っているしまむら。
進みゆく季節を、しまむらの商品とともに満喫するのも、案外いいのかもしれない。