なんかさ〜知らんけど構文
なんかさ
ではじまる会話が好きだ。
今感じたことを感じたまま、誰かに聞いてほしいしそれを聞いてみたい。とくに答えを求めないまま曖昧な時間だけが流れてゆく。そんな会話が好きだ。
試しにこの言葉を呟いてみてほしい。今なんとなく思っていて誰かに聞いてほしいことが脳裏に浮かばないか?
浮かばないか。
そしてダラダラと話した後にはいつのまにか着地点が分からなくなって慌てて「知らんけど」でその場を収めないか?
収めないか。
そもそも二十代後半に差し掛かってこんな曖昧なことを呟いている男って情けないか?
…。
情けなくないって言えよ!
なんてやりとりをいつかのだれかと話したような気もするけれど、なんかさではじまる会話は大抵覚えていないことが多い。
なんかさ、車窓からの景色がすっかり夏色で驚いてしまったのだと思う。住宅街の窓や新緑があちこちで太陽光を反射させていてしきりに夏を強調してくる。分かった!分かったから!平日はヤメチクリ~モッタイネェ~
夏には、まるで昼下がりかのようにギラギラと光る力強い朝があるが、今朝はまさにその日だった。うだうだとしていたら大した決断もすることなくこの季節がまた来てしまった。
地下鉄に乗るとすぐに一瞬だけ外の景色が一望できる瞬間があるがそれからはずっと地下。それがまるで逆センターオブジアースのようなんだ。だからスーアジブオータンセ。と朝、知人にLINEした。返信は来なかった。夏バテなのだろう。
見渡せばいつのまにか車内の景色も変わっている。半袖のワイシャツ、ポロシャツ、クールビズ。
両隣のサラリーマンはずっと寝ている。ここからどうやって巻き返して起きるというのだろう。
平気だよって言い聞かせるけど
なんだか焦ってしまうような
ずっと終わらない、終わらせたくない
曖昧で長いアウトロのような
夏がまた始まっている気がする。
知らんけど。