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Column:Immanuel Wilkins - Blues Blood "無形性と抽象性、器と身体"(6,500字)
イマニュエル・ウィルキンスの音楽は本当に興味深いので、前作『The 7th Hand』以降、僕は彼に夢中になっている。
◉無形性と抽象性
デビュー作『Omega』はいわゆる「ジャズ」の枠組みで聴けるものだったが、前作『The 7th Hand』では少し異なるものになっていた。そして、そのころから彼は自分の音楽において自分自身を器(Vessel)に見立て始めた。
イマニュエル・ウィルキンス「僕は「vessel」(器)、もしくは何かをアーカイブし、伝えるチャンネルとしての「body」(体、塊、物体)という概念に対する強いこだわりがあるんだと思う。その意味で『The 7th Hand』では身体と霊的な存在との関係を探究したんだ。そして、『Blues Blood』で追求したのは身体と先祖との関係、つまり家族の系譜。霊的な系譜ではなくて、血の系譜。でも歴史や何かを引き継ぐという考えにおいては、全く同じなんだ。」
ただ、そこでその器に収めているものの話が興味深い。彼は人間の中に入っているものの「無形性=形のなさ」に注目する。
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