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interview Melissa Aldana:タロットと内なる教師、そして、ウェイン・ショーター

ティグラン・ハマシアンやアンブローズ・アキンムシーレ、セシル・マクロリン・サルヴァントらを輩出したセロニアス・モンク・コンペティションのサックス部門で優勝したサックス奏者であり、現代屈指のサックス奏者のひとりとして名を馳せるメリッサ・アルダナは常に高いクオリティの作品を発表し、高い評価を得てきた。

ただ、ブルーノートとの契約後、これまでとは少し異なる音楽性に変わっていた。プロデューサーにギタリストのLage Lundを迎え、ベースにPablo Menares、ドラムのKush Abadeyを固定し、そこにピアニストを加えたクインテットで2枚のアルバムを制作した。

2022年の『12 Stars』ではSalivan Fortnerを、2024年の『Echoes of the Inner Prophet』ではFabian Almazanをピアノで起用し、これまでとは異なる作風に変化している。しかも、後者ではエレクトロニクスやポストプロダクションも取り入れた。それに伴い、メリッサのサックスも変化している。彼女のトレードマークでもあったマーク・ターナー影響下のスタイルよりも、どこか抽象的で、ミステリアスな演奏が印象的なものになり、この2作からその独自性も、そして、作品としての深みも一気に増していった。

今、彼女はスター揃い、傑作揃いのブルーノートの中でも屈指の作品を提供するアーティストとなった。

今回、初めての来日に合わせ彼女に取材することができた。日本語でのインタビューは珍しいので近作の話だけでなく彼女の基本的な影響源まで掘り下げている。

取材・執筆・編集:柳樂光隆 | 通訳:丸山京子
協力:ユニバーサル・ミュージック

◉子供のころに聴いていた音楽

――ジャズに限らず10代のころによく聴いた音楽を教えてください。

父の影響でチャーリー・パーカーを子供の頃からよく聴いていた。その後はマイケル・ブレッカーステップ・アヘッドブレッカー・ブラザーズ、さらに後になるとソニー・ロリンズジョン・コルトレーン、そしてマーク・ターナーへと進んでいった。10代の自分にとって重要なサックス奏者はそういった人たち。

――最初からジャズということですか?

ええ。父がサックス奏者だったので、幼い頃からジャズを聴いてた。6歳で父からサックスをもらい、そこで決定的にサックスの虜になった。父からはチャーリー・パーカーを採譜するように言われた。つまり(ジャズは)我が家の伝統ってこと。

◉採譜をすること

――お父さんから言われ、チャーリー・パーカーを採譜したということですが、その後も名前があがった人たちを採譜したと思います。特に誰のものをやりましたか?

全員!チャーリー・パーカーには4〜5年かけた。これは父の考えとも共通するのだけど、私は誰かを学ぶのであれば、意図的にその情報の奥深くまで入り込んでいく。そうすることが練習になると思うから。だから「彼が出してる音は何?リックは?」ではなくて、「このソロのメロディを吹くチャーリー・パーカーが感じていることを私もプレイし、感じられるのか?」ということ。

――なるほど。

つまり採譜するのは感情。サウンドには言葉では説明できない神秘的な側面があって、それはロングトーンを練習することとは無関係。それよりは周波数。だからこそ、コルトレーンを聴けば「ああこれはトレーンだ」と感じるし、チャーリー・パーカーを聴けば「これはチャーリー・パーカーだ」と感じられる。幼い頃から、疑うことなく、そういった練習方法に触れられた私はとても恵まれていたと思う。採譜したといっても必ずしも書き出すのではなく、頭で覚える。ソロやディテールを何時間もかけて覚えた。マイケル・ブレッカーを好きになった時も4年、ソニー・ロリンズの時も4年。1人の人を本当に理解し、その人だけの周波数、タイム感、フィール感を見つけ出すのに、私はたいてい3〜4年が必要なんだと思う。

――何年もかけて採譜するということは、感情を表すような何かを発見したら自分なりに譜面に書き込んだり、メモを残したりするんですか?

重要なのは全部覚えることじゃなく、その人の人生、その人なりの表現の波を学ぶこと。一つソロを覚えるだけで相当の時間を費やしているので、覚えた後は別の曲に移る。その人のやっていることが聴こえるようになったと思えるまで、書いたり、分析もするけれど、大切なのは音符よりももっと深い何か。そこに達すると、その人がどう演奏するかを肌で感じ、ある程度予測できるようになる。

――ふむ…

でも人の頭の中は採譜して紙には書き留められない。だから私にとっては、直感的に理解できるまで、多く採譜すること。ソニー・ロリンズがどう演奏するかが自然とわかるようになるくらいにね。そのあとは、演奏していて「いいな」と思えるものを見つけても「それはこれだ」とわかる。決してソニー・ロリンズをコピーするということじゃなくて、他の誰かの表現方法を通じて、私自身が何者なのかを理解するということだから。

◉求めている音

――あなたはサックスの音色やテクスチャーへのこだわりがすごく強いと思います。あなたが求めている音を言葉にするとどんなものになると思いますか?

言葉で表現できないものだと思う。それよりは、自分がつながれるか、つながれないか、という感覚に近いものだし、それを求めるための旅は永遠だと思ってる。

――つながれるか、つながれないか…

サックスの音色は人間の声と一緒。人間の声自体、その使い方、表現力は、年齢や経験を重ねることで変わってくるでしょ。自分と深くつながるようになり、自分がどこに向かいたいのかがわかってくる。だから私は、そんな自分に語りかけてくる周波数を探してる。それが何なのかはまだわからないけれど、大好きなプレイヤーたち全員から得られるものだと思う。採譜しながら「この大好きな音を作りあげているのは何?」と思いながら、何度も練習してる。以前は音程が音の一部だという認識がなかった。音程が正しいからって、必ずしもいい音ではないわけで。つまり音程は周波数の一部なんだとわかった。だから練習は私にとって実験のようなもの。毎日1時間、例えばどうすれば音を最大にコントロールできるか…といったことを色んな違う角度やアプローチから試している。そして自分に問いかける。「私はこれが好きか?嫌いか?」と。結局はそれが私の進むべき方向を決めるバロメーターなんだと思う。

◉影響を受けた作曲家

――うーん、深いなぁ。言葉にできない何かを持った音を表現できるように日々実験していると。では、次は作曲です。特に研究したコンポーザーがいたら教えてください。まずジャズで。

デューク・エリントンウェイン・ショーターセロニアス・モンクベニー・ゴルソンなどが好き。

カート・ローゼンウィンケルからもすごくインスピレーションを感じる。というか、つながりを感じる。カートの作曲法は、ブラジル音楽の美しいハーモニックな情報やメロディを思い起こさせる。サックスに関して特定の人を深く掘り下げてリサーチしてきたのに比べると、作曲に関しては、より広い、たくさんのことにインスパイアされてきていると思う。

――ジャズに限らずだとどうですか?

リヒャルト・シュトラウス。いかに一つのアイディアやモチーフを展開させるか。(グスタフ・)マーラーの曲にも、一つのテーマから大きな物語を作り上げる美しい展開がある。作曲において私のインスピレーションの源になるのは、どう物語を作り、感情をハーモニーで表現するかというところ。

◉作曲に対する考え方

――あなたの多くの楽曲の形式は初期の作品のころから、AABAでもなければ、Verse - Chorus - Bridgeでもないと思います。どんな考え方で作曲してるんでしょうか?

おかしな話なんだけどAABBの曲を書かないようにしているわけじゃないんですよね。むしろ自分から書こうとしたこともあるくらい。でも私に聴こえる音楽がそうではないということなんだと思う。私には物語が聴こえる。ストーリーテリングってこと。年齢を重ねて、意識的に、そうやって聴こえるものがなんであっても曲にしてみようと思った。とにかく試す。「こうやって書かなきゃ」じゃなくて、「今、私に聴こえるものは何?」と。正直になることで、自分がどこに向かいたいのかの片鱗が、音楽を通じて見えてくる。書きたいことを書く自由、「ここでソロ、ここはベースソロ…」ではなく、物語全体にとって音楽はどうあるべきか、ということ。

――コンポーズに関してThrough-composedは意識していますか?

ええ、それは間違いなく。というのも、私の作曲は大抵、とてもゆっくりとしたプロセスで進むから。一気に書けるというよりは、いくつもの層を重ねるように、長く時間をかけて、日々、変化し、進化し続ける感じ。

◉『12 Stars』(2022)

――では、2022年のアルバム『12 Stars』のコンセプトを聞かせてください。

インスピレーションはタロットカード。全ての人がタロットの大アルカナの中に自分の”象徴”があるのだけど、私の象徴は“皇帝(empress)”。その皇帝は12個の星(12 Stars)がついた王冠をかぶっている。つまり、私にとって12の星は、ニューヨークで過ごした12年(制作当時)、パンデミックの12ヶ月、その間、どう私の物語が音楽と、タロットとの関係で発展していったか…。

――音楽面では?そのコンセプトをどう音楽にしたんでしょう?

そうやってパンデミックの間、私は泣いて多くの時間を過ごした。自分の内面を見つめ直し、すべてが崩れ落ちていくような感覚を覚えたり、夢を抱いたり。でも「それをこういう曲にして書こう」というのではなく、その間に受けていたタロットのレッスンや、私自身の時間の経過の中で、成長しようと思った。そうやって書くことができたの中から一番好きだと思えるものを選んで、アルバムを作るのに使おうと思った。

――タロットは作曲や演奏にどう反映されたと思いますか?

それがおもしろい部分。歌詞でなら、それを正確に表現することはできるけど、私はシンガーじゃないからそれができない。ごく抽象的な概念でしか、その時の自分を表現できない。

――ですよね。

例えば、「The Fool」の…実際はどの曲もそうなんだけど…「奥にある物語をどう伝えよう。少なくとも、それを知りたいと目をつむって耳を傾けてくれるリスナーにどう伝えよう…」と考えたとき、私にできることは、ハーモニーを通じて、音楽のディテールを通じて、音の強弱とかそういったことを通じて伝えること。そのためには私自身が、曲の物語を前に心をオープンにし、ハーモニー的な言葉やサウンドをもってそこに行くしかない。

――そもそもなんでタロットをやろうと思ったんですか?

わからない。なんとなく昔から興味があって、おもしろそうだなと思ったから。理由はわからない。でも決して、占いとしてのタロット、タロットが未来を教えてくれるということを信じてるわけじゃない。それよりはタロットの歴史、それぞれのカードの歴史、それが星座や出生占星図とどう関係するか、といったことに興味がある。タロットカードを通じてエネルギーを読み取るという考え自体にすごく惹かれるし、興味がある。

――偶然なんですけど、僕も今年、初めてタロットをやる機会があったんです。やる前は「占い」だと思っていたんですが、実際には占いというよりは自分のことを改めて考えるための行為だと感じました。タロットをやりながら、過去に自分の身に起きたことや過去に自分が感じたことを思い出し、その意味を考えるというか。

ええ。そういうこと。

――タロットがインスピレーションになった理由には、タロットがそんなふうに自分と向き合い、自分を振り返るツールだったからだと言えますか?

まさにそれが理由。タロットが教えてくれる自分の姿、というか。大アルカナは、その人が生まれた生年月日や時間に基づいているし、私の象徴である皇帝にも良い面と悪い面がある。カードを読み解くことで、少しでも自分がどういう人間なのかということが理解できる気がして、すごく興味深いなと思ったわ。おもしろくないこともわかるんだけど。

――(笑)僕も今年初めてやってみて興味深いシステムだと思いました。たしかに面白くないこともわかるんですよね(笑)

そうそう。

◉『Echoes of the Inner Prophet』(2024)

――次は2024年の『Echoes of the Inner Prophet』です。このアルバムのコンセプトを聞かせてください。

ある意味では『12 Stars』からの流れを汲んでいる。『Echoes of the Inner Prophet』で言いたいのは、人生における“内なる教師”が結局は自分自身、より高い自己なんだということに気づき、理解し、結びつくことが必要だということ。良いも悪いも含めて、自分の中で反響する「山びこ」みたいなもの。音楽で言えば、私の場合は、マーク・ターナーだったり、チャーリー・パーカーだったり、ソニー・ロリンズだったり。それらは私を作る私の一部だし、語りかけてくるものは直感が教えてくれる。高い自己、内なる預言者もしくは教師…呼び方はなんでもいい。それを見つけ、繋がることの大切さを理解するというのがこのアルバムのコンセプト。

――そう考えるきっかけがあったのですか?

今、私は35歳。育った家庭環境はどちらかといえば複雑だった。18歳でチリを離れたけれど、幼少期の暮らしは楽ではなくて、父と娘の関係もほとんどなかった。大人になると、そういった家庭環境の基盤、すなわち、成長する中で得られる感情的な支えや安心感、足に地をつけ、根っこを感じることが大事なのだと気づいた。父は素晴らしい先生で、私に採譜を教えてくれたり、全てを教えてくれた。でも多くの問題も抱えた人だった。私は練習に明け暮れ、ある意味、孤独な子供だった。ニューヨークに移ってきてからも、練習に明け暮れる毎日。そしてパンデミック中に離婚をした。最近になって、私にはそんなふうにたくさんの傷があり、それらを見たくないがために、練習に没頭して逃げてたんだということがわかってきた。

――なるほど。

アルバムはいつもその時々の自分の置かれた状況を映し出すもの。自分の心と繋がりたい、安心できる場所を見つけたい… それって、私の友人の多くも感じていることだった。親とどんな関係で育ってきたかがすごく左右する。そんなわけで、(前作『12 Stars』は)タロットの皇帝、(今作は)内なる預言者、(2019年の『Visisons』は)フリーダ・カーロに関するアルバム…といつも私の作品は自分を知るプロセスだった。そうやって音楽を通じて、自分が何者で、何が好きで、何が好きじゃないかを知ることができて、子供の頃から苦手だった人とのコミュケーションの取り方を学べたというのは、すごくおもしろくて美しいこと。たとえ自分では、パーソナルな物語を語りたくないと思ったとしても、アルバムは自然と自分が今いる場所を映し出す。「あ、これが私の今いる場所なんだな」とわかる。

――なるほど。あなたの過去のいろんなインタビューで、いつも研究をして練習をしていると発言されていたのを読み、真面目な堅い方という印象を持っていました。でも、『12 Stars』のタロットの話などあたりから、少しマインドが変わったのかなと感じていました。だから、今の話は納得しました。

ええ、全ては繋がっているから。

――そういったコンセプトで作ったアルバムを、音楽面ではどう表現しようとしたんですか?

自分のサウンドとは何か、というアイディアはおもしろいもので、私は一度もそういうことを意識して練習したことがない。それでも意図せずに、私だけのパーソナルなサウンドが出来上がった。昔は逆に自分の音が嫌いで、自分じゃない誰かみたいな音が出したいと思ってた(笑)。「チャーリー・パーカーみたいに、マーク・ターナーみたいに、ソニー・ロリンズみたいに音が出したい!」って取り憑かれたみたいで、逆にその人をことを忘れなければならないくらいだった。結局、私のサウンドはそんなたくさんのアイディアや自分が大好きな他の人から拝借したものが組み合わさってできているんだと思う。

それでも不思議と、昔の自分のレコードを聴くと、「私らしいサウンドだな」とも思えてくる。その頃は「そうではない違うサウンド」を出したい一心だったのにね(笑)。好きなプレイヤーたちを学べば学ぶほど、それは私のパワーになる。私のサウンドにはドン・バイアスラッキー・トンプソンジーン・アモンズ… 例えばドン・バイアスの音のベンドの仕方とか…好きなプレイヤーたちのサウンドからの影響がたくさんある。でも、私みたいに、ソニー・ロリンズドン・バイアスマーク・ターナーが同時に好きな人ってあまりいないんじゃないかなって思ってる。

◉ウェイン・ショーターからの影響

――「内なる教師」について考えるというのは「昔の自分も今の自分も認める、もしくは受け入れる」ってことでもあるわけですね。ところで、タイトル曲「Echoes of the Inner Prophet」ウェイン・ショーターがインスピレーションだったんですよね?

ええ。ウェインも採譜はしたけど、他のプレイヤーほど深く掘り下げたことはなかった。でもここ数年で改めてウェインに恋してしまった。彼の音楽の深さを知るには、まだ若すぎたのだと思う。今は、特に「ストーリーをどう語るか」という部分でとても共感できる。カルテットでプレイする時に交わされるテレパシー、バンドという概念そのもの、サウンドを通じてどんな感情を表現できるか、1音聴くだけでウェインの人生が聴こえてくる彼の音…「何なの、いったい?」と思えるくらい。そういう部分で、アルバム全体を通して、彼がインスピレーションだった。つまり、感情を表現するツールとしていかにサウンドを使うかということ。

――ウェイン・ショーターの音楽にはどこかミステリアスというか、分析するのが難しい部分がありますよね。そこもインスピレーションになったのではないかと思うのですが、どうですか?

ええ。ミステリアスということで言えば、コルトレーンもそう。サウンド自体がミステリアス。言葉では説明できなくて、感じるしかない何か。歴史的に見ても、どのアルバムからも彼の人生の物語が感じられる。音楽には誠実さが溢れている。でも「それを今の時代にどうやって出せばいいんだろう?」と思う。今はとにかく作って作って作って、次のギグは?次のインスタ投稿は?とそんなことばかり。「で、音楽は?」。「誰かに何かを感じさせる音楽をどうすれば作れるの?」「自分で感じる音楽をどう作ればいい?」。そういった思いが私にとっては大きなインスピレーション。

――特にインスピレーションになったウェイン・ショーターの曲やアルバムはありますか?

『Native Dancer』は大好きなアルバム。カルテットでの『Live at the Vanguard』も…あれは正式ではなくて、ブートレグだったと思うけど。美しい作品がいくつもある。『Odyssey of Iska』『Joy Ryder』…。彼はとにかく色々な違うことをやっているけれど、そのすべてからインスピレーションを感じる。

――『Echoes of the Inner Prophet』でのいくつかの曲では音数が少なくなり、スペースが増え、演奏の抽象度が上がっていると感じました。そのように書かれていたのですか?また、演奏者へどんなディレクションにしたのでしょう?

作曲してあった部分もあるけれど、スペースも同時にたくさんあった。バンドを信頼していたから、求めていた雰囲気を曲に与えるのは、彼らの自由に任せた。最初、これがどういう曲なのかというフィーリングは言葉で伝えたけれど、そこから先は、演奏を重ねるうちに皆で見つけたのよ。どうすれば、音楽で“echoes of the inner prophet”を表現できるか。

――その雰囲気のインスピレーション源になったものはありましたか?

ウェイン・ショーターの『Odyssey of Iska』かな。

――ああ、なるほど。

『Alegria』も大きなインスピレーションだった。

――アルバム『Echoes of the Inner Prophet』ではあなたのサックスの演奏も変わったように感じました。テンポはゆっくりで、音はやわらかくなったというか。それが特に顕著なのが「Cone of SIlence」だと思いました。音量を抑えたままで、やわらかい音をスムーズに奏でながら、どんどんフレーズが変化していくのはすごいテクニックだと思ったんです。

確かに、あの曲では確かに音量や音の強弱によって感情を表現する、ということを考えた。最終的にアルバムで聴こえるサウンドの多くは、私が「このアイディアをどう表現しようか」と、遊び心で色々と試した結果だと言える。

――あと、『Echoes of the Inner Prophet』ではかなり大胆にエフェクトやポストプロダクションを使っていると思います。

ポストプロダクションはラーゲの担当。もちろん私も一緒に、何が好きかということを話したけれど、実際にやったのはラーゲ・ルンド

――以前からこういうことに興味はあったんですか?

ええ、もちろん。今回はこういうことを試したいと思った。サウンド、ヴァイブ…これをラーゲと一緒に発展させる経験をしたいと思った。何よりもサウンド、音の重なりが好きだったから。でも次に作る時はまた全然違うものになると思う。今回はちょっと違うサウンドを試す時期だったってこと。

――『Vision』ではフリーダ・カーロがインスピレーションになっていました。彼女は自身の身に起こったことや感じたことを独自のやり方で絵として表現する画家でした。『12 Stars』はタロットがインスピレーションでしたが、タロットにも自分自身と向き合わせるような仕組みがあります。『Echoes Of The Inner Prophet』はブルーノートの公式サイトで「personal journey, with an especially introspective point of view」とあなた自身が語っていると書いてありました。こうやってみると、あなたの表現には様々な形で自分自身と向き合うことが共通点としてあるのかなと思ったのですが、いかがでしょうか?

ええ、もちろん。答えを外に求めるのではなく、自分の中に目を向けるということ。どうすれば、より深くまで掘り下げられるか?どうすれば、今以上になれるか?上達できるか?これは、私自身のことでもあるけれど、音楽に関しても全く同じことが言える。どちらも深く繋がり合っているものだから。

https://www.cottonclubjapan.co.jp/jp/sp/artists/melissaaldana/

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