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「子供を連れて、逃げました。」の件
今日は、この本なのですが
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西牟田靖さんは、共同親権を推進しているジャーナリストです。でも、この本のなかでは、シングルマザーたちに丁寧に取材を行い、DVがあって子供を会わせるのが危険な父親には会わせなくていいという主張になっています。全体的に、私は読んでいて共感できる仕上がりでした。
このインタビューの中で、壮絶なDVを受けている方々がたくさん出てきますし、夫婦間不同意性交も絶対あったはずなのですが・・・。具体的には出てきません。
やはり、男性からのインタビューに答えて不同意性交のことを話したりは、なかなかできませんね。(女性の聞き手であっても、話せる人は選ぶと思います。)
239ページから、キャバクラなどの夜職で働く女性たちのシングル子育ての話が出てきます。
インタビューが掲載された女性は、キャバクラのお客さんとの間に子供ができて、「その人については何も知りません。関係を持った日以降、連絡とっていません。養育費も要りません。あんな人に関わりたくないし、子どもが生まれたことも知らせていない。」とのことでした。
愛があったわけではないし、子供を持とうと思って行った性交ではないことは明らかだし、性被害だったのではないか、と、読者としては思ってしまいます。が、その辺の詳しいいきさつなども、ご本人が男性インタビュアーに「被害」としては語りたくなかったようでした。
著者の西牟田さんにインタビューできる女性たちを紹介しようと試みた、横浜の風俗業界に顔が利く男性のインタビューも掲載されています。
お客さんとの行きずりの行為で妊娠にいたり、父親が分からなかったり、育てる自信がないまま出産する女性たちは多くいる、との内容が出てきます。
子どもが生まれても、ネグレクトになる事例も多い。なぜそうなるのかというと、仕事が終わってから女の子同士で飲みに行くときに、本当は子供の世話があるから帰りますと言えばいいのだけれども、断ることができずついていく、結果的に子供の面倒が見れないまま放置する、ということが起こっている、との記述があります。
彼氏や水商売仲間が幼児にタバコを吸わせたり酒を飲ませたり、叩く、罵倒する、などもあるのだが、それらをやめさせることもできない、結果的に虐待がエスカレートしていく。子供さんが亡くなってニュースになるような事件の予備軍が、見える範囲にたくさんいる、心配である、と男性は語ったそうです。
子供さんのことが気になるので女性たちに質問をしても、虐待が疑われる女性であればあるほど、インスタに子供の写真が一切なかったり、そもそもインスタに鍵をかけていて見られなかったり、警戒が強い。子どものことを聞くとしまいには怒り出す人もいたりするそうです。
不同意性交の問題と、繋がっていますね。「飲みに行くのを断る能力」「子供のことで困っていたら助けを求めて、ちゃんと子供を育てる能力」と、「不同意性交にならないように生きる能力」は、重なると思います。そういう能力は、愛情をかけて育てられないと培われて行きません。
人に支配され、言いたいことが主張できなかったり、主張しても受け入れられなかったり、まともな言い分を暴力で潰されるような環境で育った人たちです。
問題は根深いですし、苦しんでいる被害者たちが救われるには何重ものいろいろな対策・解決が必要だと思います。