
【連続小説】島人えりまど君Vol.7_:全ての決着、そして(最終回)
波上宮の境内に立つと、潮風が肌を撫でた。
真夜中の那覇は静かで、月が雲の切れ間から顔を覗かせていた。
比嘉はすでにそこにいた。黒いジャケットを羽織り、顔にはどこか疲れの色が滲んでいる。
「よく来たな、イトー。」
「……お前が呼んだんだろ。」
比嘉は短く笑った。
「そうだな。だが、今夜は戦うためじゃない。」
そう言って、ポケットから一本のタバコを取り出し、火を点ける。
「俺は組織を抜けるつもりだ。」
「……は?」
俺は思わず眉をひそめた。
「お前、簡単に言うが、それがどれだけヤバいことか分かってんのか?」
比嘉は紫煙をくゆらせながら、ゆっくりと頷いた。
「分かってるさ。だが、もうこんな世界にしがみつくのはやめた。麻薬に手を染め、仲間すら捨てる組織に、俺はもうついていけねえ。」
「それで?お前、どうするつもりだ?」
「沖縄を出る。……その前に、組織の連中を潰す。」
「は?」
「俺にはまだ動かせる人間がいる。今夜、首里城に仕掛ける。」
俺は言葉を失った。
「お前……マジで言ってんのか?」
「マジだよ。あの男——“影の組織”の幹部、あいつを潰せば、沖縄の麻薬ルートは大きく崩れる。」
比嘉の目は本気だった。
「俺はな、イトー。お前と殴り合って気づいたんだよ。俺は、こんなクソみたいな世界の駒で終わるつもりはねえ。」
俺はゆっくりと息を吐いた。
「お前のその考え……気に入ったよ。」
「なら、手を貸してくれるか?やつらの本当のアジトは首里城にある。今度一緒に乗り込んで欲しい。」
何故かよくわからないが、俺は無言で比嘉の差し出した手を握った。
来沖する友人
ここから先は
1,481字
/
3画像
この記事のみ
¥
500
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?