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鏡の向こうのつづれ織り 4

詩&写真 谷口江里也
©️Elia Taniguchi

目次
1:ここではない何処か、そうではない何か
2:初めて出会うかのように鮮やかに
3:愛のように言葉のように 
4:もうひとつの命 
5:夢のかたち 
6:大地の恵みと人の恵み 


1 ここではない何処か、そうではない何か

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路の不思議さは
それが必ず
どこかにつながっていると
そう想えることだ。

つながる先が
具体的にどこかということは
このさい
それほど重要ではない。

というより
それが意味を持つときすでに
重要なのは目的地であって路ではない。

路にとって大切なのは、それが
約束という言葉にも似た
あわく温かな光をまとっているということだ。
路の愛おしさは
そこに希望のようなものが落ちていると
何かの拍子に、ふと
そう感じられることだ。

この路の向こうには
ここにはない何かがきっと
自分を待ってくれているような
そんな気持ちがすることだ。

それがどんな希望かということは
このさい
それほど重要ではない。

大切なのは人には
希望というような言葉とどこかで響きあうような
明日が必要だということだ。
過ぎてしまった過去は
変えることができないと誰かがいう。
勝手に体を造り変えることが出来ないように
自分という存在は所詮は過去の中にあるのだと。
つまりは過去と共に
生きていくしかないのだと。

それはそうだろうと誰でも思う。
けれど、どんなに過去を拾い集めても
それだけでは人は
未来を織りあげることができない。
今という時を
明日に向けて紡ぎ続けることはできないとも想う。

すでに織り上がってしまった模様と
これから生きていくことで織り上がる模様とが
全く同じであるはずはないのだからと……
路の確かさは
すでに何人もの人が、無数の人が
ここをとおってどこかに行ったということが
身近に感じられることだ。

ここから出ることがたとえできなかったとしても
それでも路の存在は何よりも雄弁に
ここではない何処か
そうではない何かへの可能性を物語る。

大切なのは
必ずしも行くことではない
行こうとすることで人は生きる。

山の向こうへと続く一本の路。
人の今と明日とを
路がつなぐ。

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