鏡の向こうのつづれ織り 3
詩&写真 谷口江里也
©️Elia Taniguchi
目次
1:人という自然
2:もうひとりの私
3:水の中の亜細亜(アジア)
4:吐息のような命
5:もうひとつの自然
6:鳥の声が響くなかを
1 人という自然
つくられたヒカリをまとった
ヒトの手によってつくられたウシ。
考えようによっては
なくてもよかったヒカリとウシ。
しかしそう言ってしまった途端
消えてしまうヒトという存在。
歴史という
あらゆるものをつくりつくり続けてきたヒトのあしあと。
そしていま現に目の前にある世界。
考えようによっては
あってもよいとも思えるつくられたウシ。
そこに飾り付けられたヒカリ。
そう思った途端
命あるもののように輝き始めるヒカリとウシ。
探され始める存在理由。
もとより光がなければ
ヒトの命もウシの命もなにもない。
おなじように水がなくても空気がなくても
すべてがあり得なかった世界。
そんななかでなぜか生まれ
命をつなぎ始めることになったヒト。
そしてヒトがつくった無数のモノ。
同じように命をつなぎ続けながらも
ヒトのようにはモノをつくらなかったウシ。
考えてみれば
そのウシもまたいまや
ヒトに飼い馴らされかたちを変えられ
そのいきざまさえも変えられて
それがあたりまえであるかのようにして
命をつなぐ。
考えてみれば
私たちの目に映る景色そのものが
すでにヒトの手によってつくりだされたモノの集合体。
それらが
水のように空気のように
まるであってあたりまえのもののように
ヒトをとりまく。
考えてみれば
ウシと同じように私たちもまた
すでにつくり出されたモノとモノに囲まれて
溢れ溢れたモノのなかで産まれ
まるでモノたちに飼い馴らされるように
モノに合わせた暮らしを生きる。
イノチはつくらないの? と誰かが言う。
ヒカリさえもつくれたのだからと……
ヒトがヒトでなければ
できるはずもなかった街に
あるはずもなかったヒカリが溢れる。
ただ、人が人であるかぎり
草を食べ果物を食べ
肉や魚を食べて命をつなぐ。
ヒトがヒトでなければ
考えつかないようなコトを考え
人は人であるかぎり
人と触れ合い人を想う。
ヒカリの中のひとりの娘。
人という名の豊かな自然。
そんな自然の内に満ちる。
ひとつの命。
ここから先は
¥ 200
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?