204. 裸の付き合い
湯本のまちの湯
「恩湯」(おんとう)は、
貴重なまちの社交場だ。
週末になると
観光客の方も
来られるが、
大半はまちの方々。
「今晩は〜」
「お先に、おやすみなさい」
「ごゆっくり」
挨拶を交わす声が
頻繁に聞こえる。
昨夜は、
そんなまち人の中に
若い観光客の女性が
ひとり混じっていた。
挨拶を交わす私たちに
とても驚いた様子だった。
「皆さんお知り合いですか?!」
「毎日このお風呂に入られるんですか?!」
恩湯のお湯は
源泉掛け流し。
贅沢なお風呂なのだ。
長門市民でなければ、
入浴料は990円もする。
周辺住民なら、
一日あたり200円弱。
一日の終わりに入る
お風呂ほど
ありがたいものはない。
恩湯の泉質は、
美肌をつくるアルカリ性。
温度もぬるめなので、
ゆっくり浸かっていられる。
恩湯に毎日通うようになって、
化粧水もクリームも
要らなくなったし、
シミも減った。
恩湯の醍醐味は
それだけじゃない。
お湯に浸かりながらの
世間話が楽しいのだ。
まちの先輩たちからの
学びも沢山ある。
おお!と驚く
スキャンダルが飛び出したり、
ガセネタの噂もささやかれる。
まちのお風呂は、
エンターテイニングな社交場。
豪華なドレスはいらない。
ただ、素っ裸になれば良い。