山口県長門に移住する(62): 精霊流し
長門湯本に移住した2021年、
両親が続いて亡くなった。
母が、89才で2月に、
父は、92才で4月に逝った。
ふたりとも、
それぞれの家族に看取られ、
自宅で安らかに亡くなった。
随分昔に離婚した二人が、
申し合わせたように、
続いて亡くなったのが、
不思議だった。
私はスイスやイギリスに
30年以上暮らし、
両親にはめったに会わなかった。
だから、
両親が亡くなっても、
実感が湧かなかった。
それが、
「ああ、父も母も、
もうこの世にいない」と、
実感したのは、その夏の精霊流し。
長門湯本温泉では、
毎年8月11日に、
納涼祭が開かれる。
盆踊りの合間に
精霊流しがある。
初盆を迎える
故人の名を書いた精霊船を
音信川(おとずれがわ)に流して、
その霊を弔う。
篝火が映る川面を
精霊船がスルスルと、
時には岩場に寄り道しながら、
流れていく。
去りゆく者と、
この世に残って
見送る者。
これまで、ありがとう。
いつか、追いかけていくからね。
今度は、そちらで会おうね。
私は、両親の名を
一つの精霊船に書いて
流した。
一度は別れたけれど、
結局、一つの船で
私の両親は彼岸へ旅発った、
めったに会えなかった娘に送られて。
今頃は、
あの世で仲良くしているのだろうか。
「あの子(私)いうたら、
いつまで経っても、落ち着きのない!」
と、一緒に笑ってるかな。
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