#7. 思い出装置としての「ギリちゃんねる」
片桐仁さんのYouTubeチャンネル「ギリちゃんねる」が好きだ。
片桐家の父・仁さん、長男・太朗くん、次男・春太くんが、「片桐家の男3人で何かやる」をテーマに、絵を描いたり工作をしたりするチャンネルである。
一人称が“兄(あに)”の優しくて聡明な太朗くん、素直で自由でちょっとアバンギャルドな春太くん、そして、ときに息子に罪をなすりつける大人気ない仁さん(笑)など、個性が立っていておもしろい。また、主に声だけの出演なのだが、母・ゆきさんが男3人をいい感じに中和したり、笑いを投入したりするところも素敵だ。
最近のお気に入りはこの回。
一緒にダンボール工作をするのだが、開始2分で春太くんが涙。
仁さんと太朗くんに取り残されて、行き場のない思いが溢れちゃったんだろうな。私も末っ子なので、共感しかなかった。
末っ子ってすぐ泣くとかワガママとか言われるけど、思い通りにならないのがイヤで泣くんじゃないんだよね。歯痒くて悔しくて、でもそれをどうアウトプットしていいかわからなくて(語彙もないし思考も整理できないし)、ぐちゃぐちゃになって、溢れちゃうんだよね。
あの悔しさは、末っ子以外にはなかなか理解できないと思う。ようやく成長して、卒なくこなせるようになったときには、もう誰も遊んでくれないし(笑)。勝ち逃げされたまま、私たち末っ子は大人になった。
上記の回を観ると、そんな子供時代の風景を思い出すのだ。懐かしくて遠い。ちょっと感傷的になる。
きっと、それが「ギリちゃんねる」特有の作用なのだろう。長男・長女だった人は太朗くん、末っ子だった人は春太くんに感情移入するだろうし、もっと言えば、今子育てをしている方、子育てが終わった方は仁さん・ゆきさんの目線で観るのかもしれない。
他人のホームビデオなのだけど、それは自分が辿ってきた物語でもある。少なくとも私にとって「ギリちゃんねる」は、幼き日々の思い出を蘇らせてくれる装置なのである。
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