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8/18&8/19 「サイダーのように言葉が湧き上がる」を鑑賞して
今日は最近石川県にできた「白山イオン」のイオンシネマに映画を見に行ってきた。
みたのは「サイダーのように言葉が湧き上がる」という作品。
作品全体を通して、パステルカラーの色使いが印象的な作品であった。
ざっくり僕の感性でサマライズすると「地方都市×俳句×コンプレックス」というようなアニメ映画。
地方都市
映画の舞台はある地方都市。
(モデルは群馬県高崎市らしいが何も知らずに見ると「どこにでもある地方都市」にみえる。)
中高生がイオンとかアリオとかのショッピングモールに集いがちなのはどこの地方都市でもあるあるだろう。そんな地方都市によくあるのショッピングモールを中心に物語は展開される。意外とこういう「あるある」を形にした作品というのはなかったな、と思う。
そして「最近新しくできた白山イオン」もまた、例外にもれず地方都市のショッピングモールなのだ。(そしてそれは例にもれずクソでかい。)
そんな白山イオンでこの作品を見て(しかも白山イオンシネマで初めて)、ちょっぴり感慨深いような感情が湧いた。
俳句
これが本作の一番の特徴だと思うが、作中で主人公が多くの俳句を詠む。
そして俳句を通じて自分の感情を、普通の言葉以上に、伝えていく。
タイトルも俳句である(みなさんは気づいただろうか、僕は気づくまで結構時間がかかった)。
サイダーの/ように言葉が/湧き上がる
いま、俳句や短歌といった日本古来の詩形を使う人はそう多くないと思う。ちなみに僕は短歌に興味があって(特に現代短歌)、よく短歌の本を読むけれど、そういう人もきっと多くはないのだろう。
多くはないけれど、けして俳句や短歌に魅力がないことはない(と思う)。
そんな1主張としてこの映画が存在してくれて、僕は嬉しかった。
ただラストシーンであまりにも直接的に自分の感情を言葉にしている主人公の姿が心に刺さったか、と言われるとそうでもない。
感情を表現しないことも罪だが、表現しすぎることもまた罪なように思う。
難しい話だが。
僕は暗喩表現というか、直接的すぎない感情表現が好き(特に作品の中においては)なので、ラストシーンがやや残念ではあった。
コンプレックス
主人公の「チェリー」と「スマイル」の二人とも、コンプレックスを抱えているのも、この作品の特徴だとおもった。
「チェリー」は大きな音が苦手で、いつも音楽の流れていないヘッドホンを身に着けている。
「スマイル」は出っ歯で歯科矯正をしていることがコンプレックスで、いつもマスクをして口元を隠している。
昨今は様々なマイノリティにフォーカスを当てた作品が増えているように思う。そういう他人には理解されない痛みを作品を通して表現しようと試みる創作者には敬意を払いたい。
そういう作品には様々あるが、短歌でいうと川野芽生さんの「Lilith」という歌集がその一例だろう。
harassとは猟犬をけしかける声 その鹿がつかれはてて死ぬまで
無性愛者(アセクシャル)のひとはやつぱりつめたい、とあなたもいつか言ふかな だありあ
身許(identity)の証明をもとめられるから肌身はなさずもつパスポート
/川野芽生「Lilith」
ハラスメントやセクシャルマイノリティをテーマに書かれた作品も多く収録されている。
川野さんの短歌は内容が現代社会に即したものなのに、ごりごりの文語で書かれる力強さ、潔さ、強さ、が魅力だ。あまりにも力強い。
まとめ
誰にも理解されなかった痛みを誰にも理解できるように表現した作品を読むのは、芸術体験の中でも指折りに悦ばしい体験だと僕は思う。
そういった暗闇に光を差し入れるような作品を死ぬまでにたくさん読みたいなあ。