統合して考える。気候変動、COVID-19、少子高齢化、国家財政、格差、エリート過剰生産
複数の要因に関して、専門的な知見はあるが、これらを統合して考えることは少ない。
複数の要素を単純化し、まとめ、そのダイナミクスを考えてみる。
1.気候変動
気候変動=地球温暖化は、災害を増やし、海面上昇を引き起こす。
海面上昇は、居住空間の縮小を意味する。
世界地図と都市の配置を見ればわかるように、人口の多い都市の多くは海に面している。故に、単純に土地が減るのではなくて、居住に適した、人口が集中している土地が減る。
この結果として、不動産価格が上昇する。
また、災害対策は基本的に国家によって賄われる。税金を適切に使い、災害対策を行うことで、個々人の財産やインフラへの被害を抑えることができる。対策をしなければ、単に個人の資産や国家のインフラが破壊される。
いずれにしても、個々人の生存コストが増大する。
まとめ:気候変動は、個人が生存するために必要なコストを増加させる。
2.COVID-19
COVID-19は、後遺症として認知機能障害と注意障害を引き起こす。また、疲れやすくなる。起立不耐、運動不耐といった、長く立っていられない、長く運動することができない、という症状も引き起こす。現時点で治療法はなく、2年後に改善したのは半数程度という報告もある。
今のところ、感染抑制には成功していないが、3回感染すれば4人に1人が後遺症を発症するという報告もある。感染を繰り返せば、ほぼ全人類が後遺症を発症すると推定することもできる。実際には、免疫の多様性から一部は後遺症を発症しづらいだろうが、莫大な影響を与えうるのは確かだ。
世界での発症者数は、4億人で、年間の経済的影響は1兆円という報告もある。
有効な感染対策の実施は、大きな社会的コストを伴うし、単純にお金がかかるうえ、効果は結局は一時的なものにとどまる。また、感染対策の実施中は、社会全体の生産性は低下する。
おまけに、この疾患は小児にさえ、後遺症をもたらす。
今のところワクチンや抗ウイルス薬は、高齢者に優先的に投与されるようになっており、実際、急性感染症としての死亡率は高くはない。
言い換えれば、人口動態に影響を与えるほどの死者は出さずに、社会全体の生産性を下げる、ということだ。
まとめ:新型コロナウイルス感染症後遺症は、認知機能障害と運動不耐を通じて個人の生産性を下げ、経済を縮小させる。感染を予防するには多大な政治的、経済的コストを要するが、効果は一時的である。
人口動態への影響は乏しい。
3.少子高齢化
高齢化は社会の生産性を下げる。
また、医療費は高齢であるほど、高額になる傾向がある。
現状の社会保障制度を維持する限り、勤労世代から高齢者への所得移転が起こり、高齢者は長生きする傾向にある。勤労世代は経済的に乏しい傾向があり、子供の数を減らしたり、子供をもたない選択をする傾向が生まれる。
その結果さらに子供が減り、勤労世代の負担が増え、高齢化は進み、生産性が低下する。
まとめ:高齢化は社会全体の生産性を下げる。高齢であるほど、生存コストは高額になる。現状の社会保障制度では、勤労世代に余裕がなく、子供を持つことを諦める傾向にあり、高齢化は年々進行する。
4.国家財政
基軸通貨を持つ国家は理論上、無限の国債発行が可能だが、インフレが進行する恐れはある。また、国債発行量が多すぎると、金利を上げることで支払い不能になる可能性が高く、財政政策に一定の制限がかかる。
紙幣の印刷や国債・外債の発行が過剰になれば、通貨の信用が失われ、財政政策にかなりの制限が生まれる。
さらに進行すれば、デフォルト、国家崩壊といった事態も起こりえる。
デフォルトも国家崩壊も、国家の生産性を下げる。
5.格差
資本主義国家では適切な再分配やショックイベント(疫病・革命・総力戦・飢饉など)が起きない限り、社会の不平等は広がる傾向にある。
社会の不平等が広がれば国家は不安定化し、ささやかなきっかけで国家が崩壊する可能性が生まれる。
6.エリート過剰生産
政治家になれなかった政治家志望、自分の親のような暮らしができると信じて努力したが実際にはつましい収入しか得られなかった高学歴者は、カウンターエリートになる可能性がある。カウンターエリートは、格差社会で貧しい人々を扇動し、既存の国家体制を打破しようと目論む。
現代の日本では、エリート過剰生産が起きているかというと、さほどではないような気がする。しかし大学進学率は増加していて、これは不穏に感じさせる。
米国では弁護士の収入格差が問題となっていたが、日本ではそこまで明確な格差はないようだ。
簡単にまとめると
1.気候変動 個人の生存コストを高める。
2.COVID-19 後遺症を通じて個人の生産性を下げる
3.高齢化 生産性を下げる。少子化を引き起こす 生存コストを高める
4.国家財政 国債発行をしすぎると、信用が失われ、国家が不安定化するかもしれない。
5.格差 拡大する傾向にある。拡大は国家を不安定させる。
6.エリート過剰生産 国家を不安定化させる。
基本的に
個人の生産性は下がり
個人の生存コストは高まる
ように見える。
言い換えれば、複合的な要因が僕らを貧しくする。