病院の外来待ち時間が長い5つの理由とその解決策

外来待ち時間は主に5つの要素で決まる。

1.外来枠の区切り方



外来枠というのは30分で何人の予約を入れる事ができるか、という話だ。これはかなりバリエーションがあり、初診なら40分、再診なら20分、それぞれ一人ずつという病院もあれば、初診も再診も区別せず30分に一律6人まで、という病院もあるし、そもそも枠の制限がない病院もある。
当然枠がしっかり区切られていて、外来枠の時間が長いほうが待ち時間は短い。

2.外来の技術(医師側)



相手の要求を確認して、それにむけて必要なことを手際よく聞けば時間は短くて済む。
症状別に聞き方のポイントがある。
検査、画像をするかの判断にかかる時間も、判断力を磨けば短くできる。
それから、話が脇道にそれたときに困っていることを解決することにつながるような話に戻すことも技術だ。
よほど複雑な医学的経過を辿ってきた患者さんを除けば、話が長いのは必要な情報の取捨選択が苦手な場合が多いから、手助けすることが、適切な診断を導き、良い治療を受けるためには大切になる。
また医療にできること、できないことをきちんと区別してあげるのも大事だ。医療で相続問題を解決することはできない。

3.外来を受ける技術


適切に記載された問診票は的を絞った問診を可能にする。主訴が明快であれば、質問を絞れる。
ただ、問診票自体はあまりアップデートされることがなく、ここには改善の余地がかなりある。
新型コロナウイルスが流行したときには問診票を自作することができて、さらに毎日修正を繰り返す事ができたから、かなり洗練されて、記入時間が短く、記入率も高いものを作ることができた。

時系列順で病気の経過を話してくれれば、問診は短時間で終わることが多い。
過去にかかった病気と治療医療機関、適切に更新されたお薬手帳があればこれほどありがたいことはない。


4.外来を受診する患者の身体・認知機能


難聴がある場合、話のやり取りがどうしても難しくなる。その場合はメモ帳に大きな文字で文字を示して筆談する。
認知症がある場合、時系列が信頼できなくなり、時間がかかることも多い。当然ながら問診票も記入することが難しい。
また、全体的なうごきや反応がゆっくりになるのは正常な加齢でも見られることで、これも診察時間に関係する。

また、外来受診の準備をしていない場合も、過去の病気や内服薬、アレルギーなどの基本的な状況についても不確かな想起に頼らなければならず、思い出してもらう時間がかなりかかる。

5.時間圧


現役世代は仕事の合間に受診することもあり、いそいでいる。そのため受診するための準備をしっかりし、話もよく練られている傾向がある。
また自己負担額もそれなりにあるので、限られた時間を有効に使おうとする意識があるように思う。

生活保護受給者の話が長くまとまりがない傾向は、本人が生活保護を受給するに至った背景以外にも、自己負担額が無料で時間圧に乏しい点が組み合わさっているのではないかと考察する。

高齢であるほど予定が空いていることが多いので、病院で時間を使うことは特に問題にならないことが多い。ゆえに話が少々長くなっても不利益が少ない。


他にも外来予約を決めるシステムが効率的ではないとか、フローが効率的ではないなど、介入の余地は数々ある。
ちなみに難聴と頻尿は呼び出してもなかなか時間通りに来てくれない原因になる。どちらも加齢に伴い増える。


解決策

なので、外来待ち時間を短くする方法というのは、これら5つに介入することになる。

外来枠に関しては単純で、平均外来時間と分布を測定する。
初診と再診で平均と分布を考えて、+1SDくらいの時間を外来枠として確保する。そのようにして、90%で時間内に終わることが想定できる程度の外来枠を作成する。

しかしこの程度の簡単な統計解析でさえも、行われているとは言い難い。
そのため、病院によって外来枠はかなり恣意的に決められている。

外来の技術は医師個人が磨くしかない。しかし磨いたとて給料が上がるわけではない、という問題がある。
1時間で一人診察する医師も10分で一人診察する医師も給料は同じ、ということは普通にあり得る。
そして問診というのは時間をかければかけるほどいいものというわけではない。難しいことを考えることはない。インフルエンザで熱が出てだるくてのどが痛いときにはサッサと診断を受けてすぐに対症療法薬(+場合によっては抗ウイルス薬)を内服したいだろう。

だから外来手早く要領よく実施する技術は磨くべきだが、多分それほど意識されている領域ではないように思う。

外来を受ける技術というのは、実は多くの現役世代は持っている。
たいていお薬手帳はもっているし、既往歴も答えられることが多い。
アレルギーもそうだ。問診票もしっかりと記載されていることが多い。
体感だが90%は問診票を全て記載している。

一方で80代ともなると、お薬手帳はなく、既往歴もうろ覚えなことが多い。
問診票は書かれていないことの方が多く、書かれていても記載は不十分だ。
記載している確率は20%くらいだろうか。

正直難聴も動きの遅さも認知機能も、老化に伴うものである場合改善するのは難しい。
時間圧は殆ど自己負担割合と相関するように思う。

自己負担割合3割だけど話が長い患者さんは、確かに存在する。
しかしそれは主に状況が複雑だったり、背景に精神疾患が疑われたり、話がまとまらないこと自体が治療可能な疾患が背景にあることを示唆するメッセージだったりする。つまり、長い話をきちんと聞いて分析することで、治療したり適切な医療機関を紹介できる可能性が高いのだ。

だから身もふたもない話、自己負担割合に応じて外来時間を分ければ待ち時間問題は結構解決するように思う。
午前は自己負担割合3割、2割、午後はそれ以外の自己負担割合とする、などだ。

問診票も全ての患者さんが同じものを使う必要はなくて、記入できそうな問診票を渡すべきだ。

自由記載型の問診票は記入率が下がる一方
既往歴の有無、アレルギーの有無、かかりつけの病院と診療科、お薬手帳持参の有無だけ答えてもらうのは比較的簡単だ。

実は外来の待ち時間問題は、ツイッターで語りつくせるほどに単純な問題ではないのだ。


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