急変時DNARという謎の指示
DNARとは、do not attempt resuscitationの略称である。
心肺停止時に蘇生処置を試みないという意味であって、それ以上でもそれ以下でもない。
だから、心肺停止時:DNARと記載するのが正確な記載である。
しかし、急変時DNARという記載は結構見る。
全身状態が悪化したときに、胸骨圧迫、除細動、人工呼吸、気管挿管、昇圧剤投与は行わない、ということをおそらく意味しているのだと思う。
だからたまに、胸骨圧迫と昇圧剤投与は行うけど、気管挿管と人工呼吸と除細動は行わない、という意味の分からない指示を見ることがある。
サブウェイの注文みたいに
胸骨圧迫はどうしますか?
除細動は?
人工呼吸は?
と一つずつ聞く、というのも目にする。
これはpartial DNRと呼ばれていて、日本集中治療学会が行わないよう声明を出している。
なぜそうなるかといえば、この急変時対応をどうするかを口伝でやっているからだ。
心肺停止時の対応聴取や、アドバンスド・ケア・プランニングに関する教育・指導というのが実はすごくふわっとしているからなのだと思う。
で、なんとなく急変時DNARの指示が入っている患者さんは、なんとなく集中治療が行われず、なんとなく侵襲的なことは行われない傾向にある。
かといって緩和的なことをやるわけでもない。
だから点滴は続くし、血糖測定も続くし、対症療法薬は使われない、なんてことがしばしば起きる。
本当に必要なのは、治療の目標を話し合い、その治療が目的を達成することが難しそうな場合は、何を目標にするかを話し合い、次の目標に向けて治療する。このプロセスを繰り返して患者さんにとって良いと思われる治療の方向性を探っていくことなんだけどね。