見出し画像

若者は選挙に行け、という抑圧のメッセージ

先日、「脳科学者」茂木健一郎氏が、次世代運動の代表、北村達哉氏に対して、番組の終盤で、選挙に行こうという運動をしたほうがいいんじゃないかな、と提案していた。

他の運動はせず、選挙に行けと言う運動をしなさい、と主張するのは、抑圧の方法に他ならない。



主張の焦点を選挙に行くことに絞ることは
選挙以外の方法で自らの政治的主張を
法律として実現させる方法に目を向けさせないからだ。

選挙以外の政治的方法とは何か、ここですぐに暴力革命に意識が向く人は脳が暴力に侵されすぎている。

一番確実で有力な方法は

政治献金


多額の献金を政治家、政治団体に行うことで、自分が属する利益団体に利益を誘導することが期待できる。
というか、逆にそうでもなければ、誰も政治献金なんてしないだろう。

若者が世代間格差を是正したいと思ったときに、多額の政治献金を行うというのはもちろん現実的ではない。

18歳の時に大量の政治献金ができるお金を持っているということは、お金持ちの子供として生まれた可能性が非常に高いからだ。

つまり、彼はお金持ちの子供であることで多額のお金を使う権利を獲得している。両親から与えられたお金で両親に反抗するというのは、あまり現実的ではない。

勿論ベンチャー企業を立ち上げて大儲けをしているという状況はあるだろうが、ベンチャー企業を立ち上げるためには、通常親か大人の支援が必要だ。
彼らの顔を潰す様な政策を支持することは、自分の企業の存続を危うくする。

ここまでで、選挙以外に自集団に利益を誘導するために政治献金が有効だが、世代間格差の是正には困難であることが分かった。

だけど少なくとも、「選挙に行く」以外に政治を変える方法が一つあることはわかった。

次に、国民皆保険制度で、なぜ開業医に有利な前例が作られ踏襲されたかを、日本医師会通史から要点をみてみよう。
日本医師会は現在も政治的権力を通じて日本の制度設計に影響を与え続けている集団であり、その戦い方は学ぶ価値がある。
日本医師会通史は日本医師会が出版している、彼らの輝かしい闘争の歴史だ。

政治的圧力

1961年に国民皆保険が導入され、診療報酬を10%引き上げると発表された。
これに対して、日本医師会は「4月からの国民皆保険に非協力態勢の実力行使に入る」方針を決めた。
具体的には
2月19日に全国一斉休診を行う。
定期健診、予防注射、予防接種は一切協力しない
健保と国保の保険医の総辞退届を2月25日までに取りまとめる

こうした抗議行動を背景に、制限医療の緩和(医薬品、手術用具の導入に関して、学会の意見を尊重する方針)、診療報酬の増額を成立させた。

診療担当者代表委員の推薦権を日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師 協会に限定することにより、医療のインサイダーが、医療を監査する仕組みが作られた。

また、病院の赤字を改善しようと診療報酬を引き上げようとすると、診療所の診療報酬も連動して上昇する仕組みが残ってしまった。(日本社会保障の歴史 p172)

1961年の日本医師会は、選挙で自分の利益を確保しようなど考えなかった。

自分たちに利益を与えてくれないのであれば、国民皆保険には協力しません、と宣言することで、利益の源泉を獲得した。

これは50年以上動く富のポンプとして現役で活動中だ。

実は日本の法律は殆ど、戦後に決まっている。
日本の民主主義制度はGHQによって作られた。
そのため、弱者・貧困者を守る法律が実際はどのように形成されるか、の実感に乏しい。

組織化



例えばイギリスにおいて、労働組合は1799年以前には非合法(団体禁止法)だった。
機械産業の発展に伴い、労働条件が低下、暴動が多発し、暴動に対する弾圧が増えた。
弾圧に対抗するために労働者間の連合組織化が進み、団体禁止法撤廃運動を展開、1824年には労働組合合法化の法案を通すことに成功した。

政治家と法律は運動が広がってから生まれるのだ。

歴史における政治的活動と法制化のまとめ



1.何らかの主張をする団体が生まれ、拡大する(政治団体の拡大)

2.既存の政治団体と対立し、争いながら規模を拡大する。

3.政治団体の規模が大きくなると、政治団体を支持する政治家が現れる。

4.その政治家が選挙で当選し、法案を成立させる。

これが基本的な流れだ。
女性参政権も原則的にはそうだ。
黒人奴隷の開放は…間に南北戦争なる内戦が起きたが、基本的にはそうだ。

中国で新型コロナウイルスに対する厳格なロックダウンに対する対抗措置として行われた、白紙運動も選挙以外の方法で政治的な目的を達成したと言えるだろう。

政治団体を運営する、という穏当な政治的手段


ある政治的主張を掲げることが一定の支持を得られ、自らが当選するに十分なるものだと確信できなければ、普通の、つまり当選を目的とする政治家は新しい政治的主張を採用などしない。

シルバーファースト現象がある現代では、なおのことだ。

こうした意味で、選挙に行くよう勧める運動をしなさい、という茂木健一郎氏の北村達哉氏へのアドバイスは、政治的な主張が、既存の政治団体以外から新しく生まれることを抑圧するメッセージなのである。

世代間格差を是正したいと考えるなら
拡大し続ける社会保障費を削減したいと考えるなら
まずは政治団体の規模と影響が大きいことを社会に示さなければならない。

そのためには政治団体として活動を続けなければならない。

その主張を採用することで選挙に当選できるくらい支持者が多数いる

と政治家が確信できてはじめて、法改正が実現する可能性が生まれる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?