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5年度 予備試験 刑訴法再現

第1 設問1

1 検察官が本件住居侵入・強盗致傷の事実に本件暴行の事実を付加して甲の勾留を請求した場合、裁判官は甲を両罪の事実で勾留することができるか。いわゆる抱き合わせ勾留は逮捕前置主義(刑事訴訟法207条1項。以下、法名を略す)に反して違法ではないかが問題となる。

2 逮捕前置主義の趣旨は、身体拘束は人の身体の移動の自由という重要な人権を擁護するため、勾留に比べ(208条1項、2項)身体拘束機関が短い逮捕(205条2項)を先行させることでできるだけ身体拘束機関を短くすることにある。A罪によって逮捕された場合、A罪に加えてB罪の事実についても勾留を請求することは、B罪について逮捕の分、身体拘束機関が短くなる点で被疑者に有利である。したがって抱き合わせ勾留は逮捕前置主義に反しないと解する。

3 甲は本件住居侵入・強盗致傷の事実で逮捕され、本件暴行の事実を付して勾留を請求されている。甲に対する抱合せ勾留は逮捕前置主義に反さず許される。

4 よって、裁判所は甲を本件住居侵入・強盗致傷および本件暴行の事実で勾留することが出来る。

第2 設問2

1 検察官は、甲を本件住居侵入・強盗致傷の事実について令和4年9月7日に既に勾留し、同年9月28日に嫌疑不十分で釈放している。甲を同一の事実でもう一度勾留することは一罪一逮捕一勾留の原則に反しないか。再逮捕・再勾留の可否が問題となる。

2 たしかに、再逮捕・再勾留は許されないとも思える。しかし、逮捕は捜査の初期段階であって、再逮捕を一切認めないのは捜査官に酷であり、捜査の実効性を害し、却って自白偏重の捜査を招く。また、199条3項は再逮捕を前提としている。

そこで、重要な新証拠の発見があり、再逮捕が不当な逮捕の蒸し返しと言えない場合には再逮捕は許されると解する。勾留は逮捕よりも身体拘束期間が長いから、再勾留の可否はより厳格に判断する。

3 一回目の逮捕・勾留においては、甲が黙秘を貫いたこともあって、本件住居侵入・強盗致傷における実行犯の指名や住所等も、被害品の腕時計が甲に渡った経緯も判明しなかった。この勾留期間に、捜査官は甲の所持する携帯電話機や甲方から押収したパソコン等の解析、甲と交友関係にあるものの取り調べ、V方周辺の防犯カメラに映っていた不審者に関する更なる聞き込みをしており、本件住居侵入・強盗致傷の捜査に全力を尽くしていたといえる。

そこで、甲が釈放された9月28日以降の10月6日に別事件で逮捕された乙が取調べにおいて、本件住居侵入・強盗致傷について甲と相談して乙が実行し、甲が監禁する役割分担をする共謀して犯行に及んだことを供述した。さらに、乙から押収した携帯電話の解析によって、本件住居侵入・強盗致傷について甲と乙との共謀を裏付けるメッセージのやり取りが発見された。これにより、甲の一回目の勾留期間中には分からなかった本件住居侵入・強盗致傷の実行犯、甲に被害品の腕時計が渡った経緯についての重要な新証拠が得られたといえる。また、上記の通り、甲の一回目の勾留期間中に捜査官は全力を尽くして捜査していたのであり、また、甲が嫌疑不十分となったのも甲が黙秘を貫いたことが大きい。そのため、10月19日の逮捕は不当な逮捕の蒸し返しとはいえず、適法である。

4 10月21日の勾留請求は適法な逮捕が先行しているから、逮捕前置主義には反しない。また、厳格に判断しても交流請求が不当な身体拘束の蒸し返しといえるような事情はない。そのため、二回目の勾留請求は適法である。

5 よって、裁判官は甲を勾留することができる。

以上

自己評価…C
〇 ある程度満遍なく書けた。事実の摘示できた。199条3項の指摘もできた。
× 勾留の必要性という観点が抜けてるのはかなりよくない。設問1で事件単位原則を指摘する必要性をそもそも知らなかった。

みんなも出来てるだろうが、条文の指摘や事実の引用・評価で多少浮上できるのではないか。

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