最強のバターチキンカレー#1_レトルトカレーのデータ解析
久しくまとめていませんでしたが,続いております【カレーのオープンチャット 考える部屋】.2週間毎にカレーにまつわるテーマを決めて実験/考察を重ねていくプロジェクト,先週からのテーマはバターチキンカレー.もっというと,「最強のバターチキンカレーとは」.
レシピ発掘比較型,自作型,食べ歩き型,いろいろとアプローチはあるわけですが,自分で作るのは技術的に厳しいし食べ歩きできるほど近所にインドカレー屋はない.ということで,私はスーパーで買えるレトルトカレーの解析から最強のバタチキ理解に加勢しようと思います.
【買い出し】いつでもどこでもだれでも手に入る,ユニバタチキ
近所の平凡なスーパー及びコンビニで買い揃えたレトルトバタチキがこちら.
左上から順に,
・選ばれし人気店 シタール(ハウス) 180g 223kcal 298円
・噂の名店 東京神田マンダラ(エスビー) 200g 335kcal 278円
・Kitchen88 インドカレー(ドーヴァー) 180g 280kcal 300円
・アジアングルメ紀行(ハチ) 150g 248kcal 116円
・セブンプレミアム(セブンイレブン/エスビー) 180g 228kcal 198円
・ローソンセレクト(ローソン/ハウス) 170g 190kcal 198円
・カレー職人(グリコ) 170g 131kcal 84円
・からだシフト糖質コントロール (宮島醤油/三菱食品) 150g 201kcal 278円
・マイサイズ100kcal (大塚食品) 120g 98kcal 128円
こんだけ買っても2000円未満.なんていうか,改めて日本の食品会社ってすごい.
面白かったのは,垣間見えるエスビー食品とハウス食品の覇権争い.コンビニカレーについて,ファミマは都合上手に入らなかったのですが(そのうち追加予定)セブンプレミアムはエスビー,ローソンセレクトはハウスと共同開発.スーパーで買えるいわゆる名店系に関してはマンダラはエスビー,シタールはハウス.ここまで対にできちゃうと,ついつい比べたくなってしまう.
が,今回は比較食レポがしたいわけではないのです.目的はレトルトカレーの分析からポップアイコンとしてのバタチキの姿を客観的につかむこと.
【カレーのA/D変換】地道なデータ入力と苦肉の数値化
今回やりたいことはレトルトカレーのデータ化と分析.とはいえ末端の消費者に開示された情報は限られている.
・価格
・原材料表示順
・栄養成分表示
パッケージの謳い文句も含めたいところだけど,分析上扱いづらいのでひとまずパス.まずはこれら3条件をひたすら入力していく.
で,表示順をもとに原材料項目の構成比を(あくまで仮ではあるけど)計算.
項目の構成比=[項目のランク(少ない順に数えたとき)]÷[ランク数の合計]
つまり,20項目の原材料が示されている場合,1番目に書かれている材料の構成比は20÷(1+2+3+.....+19+20)=20÷210=0.0953,5番目に書かれている材料の構成比は16÷(1+2+3+.....+19+20)=16÷210=0.0762という具合.
まぁこの計算方法は苦肉の策です.なんせ実際の重量情報がわからないので.
あと,類似の食材については以下の例の通り1つの名称に統一.
・にんにくペースト,ガーリック→ニンニク
・ソテードオニオン,炒め玉ねぎペースト→炒め玉ねぎ
・りんごパルプ,りんごペースト→りんご加工品
さぁ,下準備が整ったらいざ解析解析♪
【解析1】レトルトバタチキの分類
まずはざっくりクラスタリング.似たもの同士をグループ分けできるイメージ.なお当記事の解析用語は超適当なのでフワッとしたイメージで掴んでください(免罪符).詳しいことは下記リンクで!(免罪符2)
パラメータとかいろいろあるのですが,今回は拘らずオーソドックスな方法を使いました.結果がこちら.
最も細かく分かれるクラスタ数6個(6グループ)で色分け
おお!コンビニラインと名店系ラインの垣根を越えて,エスビーとハウスがきれいに分かれました.この時点では価格などは解析に含まず,原材料のデータのみです.ここまでくっきり分かれると気持ちがいい(と同時に懐疑的になる).では,いったいこのクラスタリング(グループ分け)で何が起こっているのか,見ていきましょう.
最初の図ではわかりやすさのためにクラスタ数6個で色分けしましたが,ここでは「最も妥当そう」なクラスタ数4個で色分けしてます.
・クラスタA: エスビー2品+からだシフト糖質コントロール
・クラスタB: ハウス2品
・クラスタC: プチプラ系3品(200円未満)
・クラスタD: 輸入品1品(タイ産)
*中央の格子状の部分は下にある原材料の構成比率が大きい順に〈赤→グレー→青〉で表されてるイメージを持って見てください.
**図が解像度の限界で見辛いのはご容赦ください...
クラスタAで特徴的なのは「りんご加工品,乳等を主要原料とする食品,発酵乳」.ちなみに乳等を云々のやつは基本的にはクリームに類するものだと思います.発酵乳はヨーグルトのこと.りんごの繊維感と脂肪率低めのクリーム,ヨーグルトってことで比較的あっさりめのクラスタと言えましょうか.
クラスタBは「ホワイトルゥ,チーズ加工品,脱脂粉乳,全粉乳」などなど,とにかく乳推し.ハウスさんの「バタチキ即是クリーミー!」という思想が感じられる.
ハウスの両商品にはパッケージにも「濃厚」「まろやか」の文字.まさに!
ちなみに,このエスビーとハウスの差は味と見た目にもくっきり現れていました.
コンビニ,名店系共に右がエスビー食品(クラスタA),左がハウス食品(クラスタB).右の方がピューレっぽく,左の方がともに白っぽくクリーミーなのが伝わるでしょうか.
クラスタCは全て200円以下の庶民派で構成されました.繰り返しますが,クラスタリングに使ったデータは原材料の構成比率のみ,価格のデータは使っていません.小麦粉とラードで原価を抑えつつ,炒め玉ねぎで旨味ブースト...といったところでしょうか.
クラスタDは一匹狼.値段的にも唯一300円台に乗っていて不思議だったのですが,改めて見るとタイからの輸入品でした.特徴は「玉ねぎ,トマト,ココナッツミルク」.日本製の物に比べ原材料数が少なく,玉ねぎやトマトも材料そのままを用いている点が特異な模様(*トマトに関しては他の商品でトマトペーストと併用していたものがあったので項目をまとめませんでした).そしてやっぱりタイといえばココナッツミルク!
【解析2】バタチキのパラメータとは
クラスタ解析でレトルトカレーの概要は掴んだものの,最強のバタチキは依然としてわからず.そもそも,バタチキのパラメータには何が設定できるのだろう?
ということで,「主成分分析(またの名をPCA)!」
ざっくり言うと,「データのばらつきをうまいこと説明できる座標軸を合成する」つまりは隠れたバタチキのパラメータが立ち現れる解析.この段階では,先ほどの原材料情報に加えてgあたりの価格「¥/g」,gあたりカロリー「kcal/g」,「原材料数」を要素としました.それでは,いざ!
....ん?
何が何やら...縦横の軸になっている「成分1」「成分2」が「バタチキのパラメータ」,カッコ内の数字が「どのくらい説明できてるか」にあたる部分なのですが,それぞれ20%ちょい.ここに乗ってないほかの数値を見てもうまいことまとめ切れていないようです.どうやら,あまりに原材料が多様すぎて説明できない模様.そこで,以下のように原材料の項目を要約してみることに.
・コーン油,米油,菜種油etc.→植物油脂
・酸味料,香料,着色料etc.→添加物
で,再度解析した結果がこちら↓
左右の図は同じものです.左は「成分1」に注目して囲み,右は「成分2」に注目して囲っています.相変わらず「説明できてる度」は全然良くないのですが,もういいや,突っ走ります.(この後はだいぶこじつけです)
最も重要なパラメータ「成分1」は材料としてはカシューナッツや香辛料,そしてgあたりの価格とカロリーで表され,逆に食塩,砂糖,原材料数はこのパラメータを小さくする方向にはたらく模様.つまり,解釈するならば...「リッチ感」?
次のパラメータ「成分2」は...うーんなんだろう.わからない.説明度合いも18.9%と低いし,もう無視しちゃおう,そうしよう.(何か気付いた方いればご教示ください)
【まとめ】結局,「最強のバタチキ」とは
後半は強引&投げやりでお見苦しいですが,とりあえずまとめ!
〜レトルトバタチキの分類〜
・あっさり派:ピューレの繊維感とヨーグルトで輪郭くっきり
・クリーミー派:とことんなめらか乳製品
・庶民派:原価抑えつつ炒め玉ねぎで旨味補強
・外国生まれ:シンプル原材料
〜バタチキのパラメータ〜
「リッチ感」
「リッチ感」に価格,カロリーの指標が含まれるあたり,なんだか業が深いですね.
さて,ほぼ丸1日かけたこの試みを通して「最強のバタチキとは」という問いの答えに少しは近づけたんだろうか.まとめだけをみると「みんな違って皆いい」という凡庸極まりない諦めすら漂う甘言か,はたまた「金とカロリーが力」というえげつない世界観になってしまうのですが...
【おまけ】
買ったカレーは全部食べました.食レポはしませんが私からは一言.
「セブンプレミアムは,すごい」
(*回し者じゃないです)
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