掃き出し法 線形代数学
掃き出し法
掃き出し法は、ある行列に行基本変形を行うことにより、簡約行列にする方法である。行基本変形は、以下の操作から成り立つ。
ある行を$${k}$$倍($${k \neq 0}$$)する。
ある行にほかの行の$${k}$$倍を加える。
ある行とほかの行を入れかえる。
また、簡約行列は、
各行ベクトルの0でない成分の内、1番左側は1とする。(主成分)
主成分がある列は、主成分を除くすべての成分を0とする。
主成分は、左上から順番に対角上に並べる。
例:
$$
\begin{bmatrix}
1 & 0 &1 \\
0 & 1 &5 \\
\end{bmatrix},
\quad
\begin{bmatrix}
1 & 0 &0 \\
0 & 1 &0 \\
0 & 0 &1 \\
\end{bmatrix}
$$
それぞれの例において、簡約行列の条件を満たしていることがわかる。
つまり、掃き出し法の目指す最終目標は、
$$
\begin{bmatrix}
2 & -2 &4 \\
3 & 6 &1 \\
5 &-2 &0 \\
\end{bmatrix}
\rightarrow
\begin{bmatrix}
1 & 0 &0 \\
0 & 1 &0 \\
0 & 0 &1 \\
\end{bmatrix}
$$
のようにすることである。
連立1次方程式と掃き出し法
連立1次方程式の解を求める際に、拡大係数行列を掃き出し法によって変形し、解を求めるやり方がある。
次の連立1次方程式を考える。
$$
\left\{ \,
\begin{aligned}
& 2x-y = 0 \\ & x+2y = 5\\
\end{aligned}
\right.
$$
拡大係数行列は、$${x}$$と$${y}$$の係数とイコールの右側のみに注目した行列なので、
$$
\begin{bmatrix}
2 & -1 &0 \\
1 & 2 &5 \\
\end{bmatrix}
$$
となる。
掃き出し法を行っていく。まず初めに、操作3を用いて、1行目と2行目を入れ替える。
$$
\begin{bmatrix}
2 & -1 &0 \\
1 & 2 &5 \\
\end{bmatrix}
\rightarrow
\begin{bmatrix}
1 & 2 &5 \\
2 & -1 &0 \\
\end{bmatrix}
$$
次に操作2を用いて、1行目の-2倍を2行目に加える。
$$
\begin{bmatrix}
1 & 2 &5 \\
2 & -1 &0 \\
\end{bmatrix}
\rightarrow
\begin{bmatrix}
1 & 2 &5 \\
0 & -5 &-10 \\
\end{bmatrix}
$$
次に、操作1を用いて、2行目を$${-\frac{1}{5}}$$倍する。
$$
\begin{bmatrix}
1 & 2 &5 \\
0 & -5 &-10 \\
\end{bmatrix}
\rightarrow
\begin{bmatrix}
1 & 2 &5 \\
0 & 1 &2 \\
\end{bmatrix}
$$
最後に、操作2を用いて、2行目の-2倍を1行目に加える。
$$
\begin{bmatrix}
1 & 2 &5 \\
0 & 1 &2 \\
\end{bmatrix}
\rightarrow
\begin{bmatrix}
1 & 0 &1 \\
0 & 1 &2 \\
\end{bmatrix}
$$
これで、簡約行列となったため、行基本変形はここで終わる。
簡約行列を方程式に戻すと、
$$
\left\{ \,
\begin{aligned}
& 1x+0y = 1 \\ & 0x+1y = 2\\
\end{aligned}
\right.
$$
となるので、$${x = 1}$$、$${y = 2}$$という解が得られる。
自由度を持つ場合
連立1次方程式
$$
\left\{ \,
\begin{aligned}
& x-2y = 0 \\ & 3x-6y = 0\\
\end{aligned}
\right.
$$
拡大係数行列
$$
\begin{bmatrix}
1 & -2 &0 \\
3 & -6 &0 \\
\end{bmatrix}
$$
操作2により、1行目の-3倍を2行目に加える。
$$
\begin{bmatrix}
1 & -2 &0 \\
3 & -6 &0 \\
\end{bmatrix}
\rightarrow
\begin{bmatrix}
1 & -2 &0 \\
0 & 0 &0 \\
\end{bmatrix}
$$
この結果を方程式に戻すと、$${x-2y = 0}$$となるので、$${x}$$は、
$$
x = 2y
$$
となる。この関係が成り立っていれば$${x}$$と$${y}$$の値はなんでもよいので、$${y}$$を任意の実数$${k}$$とすれば、
$$
\begin{align}
y &= k\notag\\
x &= 2k\notag\\
\end{align}
$$
となり、解は無数に存在する。
解なしの場合
連立1次方程式
$$
\left\{ \,
\begin{aligned}
& 3x-6y = 0 \\ & 2x-4y = 1\\
\end{aligned}
\right.
$$
拡大係数行列
$$
\begin{bmatrix}
3 & -6 &0 \\
2 & -4 &1 \\
\end{bmatrix}
$$
操作1より、1行目を$${\frac{1}{3}}$$倍すると、
$$
\begin{bmatrix}
3 & -6 &0 \\
2 & -4 &1 \\
\end{bmatrix}
\rightarrow
\begin{bmatrix}
1 & -2 &0 \\
2 & -4 &1 \\
\end{bmatrix}
$$
次に操作2により、1行目の-2倍を2行目に加える。
$$
\begin{bmatrix}
1 & -2 &0 \\
2 & -4 &1 \\
\end{bmatrix}
\rightarrow
\begin{bmatrix}
1 & -2 &0 \\
0 & 0 &1 \\
\end{bmatrix}
$$
これを方程式に直すと、
$$
\begin{align}
x-2y &= 0\notag\\
0x+0y &= 1\notag\\
\end{align}
$$
となる。ここで、2つ目の式は、等号が成立しない式となっており、この式を満たす解は存在しない。よって、解なしとなる。
サイト
https://sites.google.com/view/elemagscience/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0
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