不動のALL TIME BEST = LES BAXTER
Rain Forest
我がALLTIME BEST不動の第一位、史上最高の音楽「Rain Forest」を作ったLes Baxterは、マーチン・デニー(「Fire Cracker」の作曲で有名)の代表曲「Quiet Village」の作曲者であり、エキゾチックラウンジミュージックの創始者とも言える存在。フラジオレット・ストリングスによるイントロからの、ホーン&ブラスによる主題の登場、それら楽器のユニゾンでの反復にピアノの軽快なバッキング、主旋律が展開するとフルート&ピッコロのオルタナティブフレーズが絡み、サックスソロへ雪崩れ込む。それら様々な楽器の絡む流麗なアレンジがその魅力の全てなんだけど、後半さらに畳み掛けるようにサックスソロとブラスの掛け合いとなり、ラストはチューブラーベルが背景に響く美しいエンディングに雪崩れ込む。アレンジの桃源郷。
Earth Light
Les Baxterによる"Space-Age Bachelor Pad Music"。電子音響ではなくエコーチェンバー(鉄板エコー)がこの時代の音響的「宇宙感」の全てだったわけだが、やはりそこはバクスター。ストリングスによる美しいアレンジでほぼそれを表現しきってしまっていて、エフェクトはあくまで添え物にすぎない。バクスターの活躍の最盛期は1950年代後半で、パーシー・フェイスやマントヴァーニーといったムードミュージック(後に1960年代後半〜70年代にはポール・モーリアが登場し、それらも含めイージーリスニングとも呼ばれるようになる)の流行の少し前から同時期にかけて活躍。バクスターは特にテレビの草創期に活躍していた模様(いかにも映画音楽っぽいが、映画での有名作はあまりない)。
https://youtu.be/hUlMoXsAtow
The Left Arm of Buddha
一個前のSABPM同様にテープエコーの効いたエフェクティブな音響系サウンドのピチカートがテーマを奏でる。展開で一瞬顔を見せるバクスター節全開のレガートストリングスが美しい小品だが、こちらのテーマはバクスターのお家芸であるエキゾチックミュージック。「仏陀の左腕」って、どんなタイトルよ。
Who Will Buy
バクスターによるブラジルもの。といっても原曲はブラジルとは全く関係のない曲で、イギリスのミュージカル「オリバー!」の挿入歌。ナンシー・シナトラのカヴァーでも有名。このカヴァーは1960年代後半の作で、この時期はストリングスに変わりスキャットが主役になっている。この曲のエンディング部分は中塚武の出世作「Aguas de Agosto / Delicatessen Mixture」(コンタクトレンズ「2weekアキュビュー」のCM曲)のエンディング部分でサンプリングされている。
Tomorrow For Sure
トレードマークである流麗なストリングスはそのままに、ロックリズム(ジャズファンク)を取り入れた後期の作品。ストリングスによる単一メロディーの繰り返し。2回し目では一オクターブ下+バッキングはブラスニユニゾンに。なのに、なんでこんなに興奮するんだろうか。そして3回しめ。ブラスはさらに低域をプラスし、高域はフルート&シロホンが追加(一回し目のバッキングはマリンバメインだった)。最後はスキャット!一つのメロディを繰り返してるだけなんだけど。これぞアレンジの妙。
Lunar Rhapsody
バクスターアレンジによるテルミンもの。スペースエイジミュージックの代表的作家Harry Revelの作曲でテルミン演奏はDr. Samuel J. Hoffman。スキャットと混ざってしまっていかにもテルミンな雰囲気ではないのだけど、この流麗さこそがバクスターの真骨頂であり、当時流行のテルミンサウンドを取り入れるといっても、決してキワもの&ウケ狙いの結果に終わっていないのがむしろ素晴らしいのである(バクスターによるMoogモノアルバム「Moog Rock」という作品もあるが、こちらは数多のMoogモノと比べて特筆するほどのものではない。といっても普通のMoogモノとしてみてもまずまずの出来ではあるが)
Topaz
これもコンボサウンドの後期作でテーマはアフリカ。ここでは主役はピアノ&オルガンになっているが、凡百のオルガンジャズではなく、マリンバのバッキング&ソロがユニーク。だがこの曲の白眉はなんといってもベース。ベースだけでこうもアフロ感出るもんかね。
The Poor People of Paris
一般にも有名な代表曲も一応。「The Poor People Of Paris」は10年くらい前に(2000年代以降)日本で何かのCMに使われた(ビールだったかな?)でも使用されて聞いたことがある人もいるかと思う。バクスターの作曲ではないが、1950年代当時、バクスター演奏によるレコードがそれなりにヒットした模様。
Jungle Flower
エキゾチックサウンドで一番有名な曲、というとやはり「Quiet Village」ということになるんだけど、それと同じくらいの有名曲で、あえてこちらを貼る。幻想的なイントロがたまらん。1980年代にプラスティックスの中西俊夫や後にいとうせいこうのアルバムで本邦初のヒップホップアルバムをプロデュースしたヤン富田らが結成した「Water Melon Group」がカヴァーしたバージョンも良作。
Boca Chica
もっともっといっぱいいい曲あるんだけど、まあ結局どれも似たようなものではあるので、最後にこの曲だけ。この曲もまた後半の畳み掛けがすごい。アレンジ。アレンジ。アレンジ。