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視覚障害者と宝くじ
こんにちは!ツアーガイドのFujikoです✨
13年前に書いたスペイン留学ブログ「不惑のハポネサ」を、25回のシリーズで別バージョンでお届けします。映画業界で働いていた頃の体験をお楽しみください!
■宝くじ売り場と「ONCE」🎟️
「ONCE(オンセ)」とは、Organización Nacional de Ciegos Españoles(国立スペイン視覚障害者協会)の略称で、視覚障害者による視覚障害者のための組織です🎗️
1938年に設立され、今年で35周年を迎えます🎉
もともと彼らは、路上で物乞いをしたり、音楽を演奏して生計を立てていましたが、自立のための近代的な仕組みを確立しようという機運のもと、南部アンダルシア州やバルセロナ市のあるカタルーニャ州などの支援もあって設立されました💪
ONCEは約7万人(2010年現在)の会員で構成されており、リハビリ、教育、雇用促進、文化、スポーツ、最新技術の利用などの社会サービスを受けることができます📚
組織は年々成長し、1988年にはONCE基金、1993年にはONCE法人を設立してグループ組織にまで拡大しました🌍
グループ全体の雇用数は13万1千人、そのうち視覚障害者や何らかの障害を持つ人が81.5%を占め、女性は42.4%です👩🦯👨🦯
ONCEの収益の多くは行政からの補助金、寄付、そして宝くじの販売によって成り立っています💸
宝くじはあのボックスで販売されており、販売員のほとんどは視覚障害者です🎫
私が見た、鐘を鳴らしていた人たちは、懸命に宝くじを売っていたのでしょう。
その姿から、自分たちの生活を自分の手で支えている力強さを感じました💪
ちなみに、スペインの有名な映画監督カルロス・サウラのデビュー作『Los golfos(ならず者)』(1960年)には、路上で宝くじを売る視覚障害者の老女が売上金を奪われるシーンが登場します🎥
映画に描かれるほど、スペインでは日常的に見られる光景です🌆
初めは宝くじボックスに興味を抱いていましたが、ホームページでいろいろ調べるうちに、ONCEの存在に強く惹かれるようになりました💡
でも、これだけの情報ではホアンが求めているレポートには不十分です。
実際にどんな人たちが、どんな思いでこの組織を支えているのか、その活動や現状についてもっと知りたくなりました🔍
■えいっや!と門をたたく🚪
人見知りで勇気がない私は、文明の利器である電子メールの力を借りてONCE広報部に連絡を取ってみました💻
何者なのか、なぜ調査をしているのかを長文のスペイン語で綴りました📝
でも、待てど暮らせど返事はありません📭
日本で10年以上社会人をしてきた私は、連絡が来たら3日以内に返事をするのがマナーだと教わり、実際にそうしてきました📅
でも、ここはスペイン。そんな常識が通用しないのかもしれません🕰️
これ以上待っていても時間が過ぎるだけで、レポートの提出が遅れてしまう…。
ホアンにがっかりされたらどうしよう、などと頭の中で妄想がグルグルと駆け巡ります💭💫
ONCE本部は、学校から徒歩10分ほどのところにあります👣
せめて資料用の写真を撮ろうと思い、授業を終えた後、住所を頼りに本部へ向かいました📷
見覚えのある「ONCE」のロゴが目に入り、ロゴ入りパンフレットを持った人々が建物を出入りしていました。ここに間違いない!
本部の割には地味な門構えだなあと思いつつ、外観の写真撮影が目的だったのですが、思い切って中に入ってみることにしました🚶♀️
自動ドアの前に立ち、恐る恐る中を覗いてみますが、ドアが開くと180度向きを変えて戻ってしまいました😅
意気地なしの私は、無意識に帰ろうとしていたのです🏠
でもその時、もう一人の私が心の中で囁きました🗣️
「これでいいの?ここまで来たのに」
「えっ、でも今日は写真を撮りに来ただけだし…」
「ここまで来たんだから、挨拶だけでもしておけば?メールを送ったハポネサ(日本人)です、って」
「うーん…挨拶だけでもしておけば、メールの返事が早くなるかもね」
もう一人の自分に説得され、覚悟を決めて再び自動ドアに向かいました💪
■アポなし突撃取材🚪💼
自動ドアが開くと、受付兼ガードマンのおじさんがいた🧓
用件を伝えると「"Un momento"(少々お待ちを)」と言われた
待つこと10分⏳
スペインの「少々」は長いな~と思いながら、そもそも意思が伝わっているのか不安だったが、とにかく待つことにした🕒
ようやく現れたのは、二人のスペイン人男性だった👨🦯👨💼
黒いサングラスをかけ、黒い盲導犬を連れた男性がホセさん、もう一人は健常者の職員だった
「お待たせしてすみません。あなたのメールを確認していました💻 直接お話した方が早いと思い、会議室を用意しました。私は会議があるので、ホセがあなたの質問にお答えします」
二人は広報部門の担当者だった
私は恐縮しながらも、心の中で「ラッキー!」と叫んだ🎉
彼ら+盲導犬に会議室へ案内された
部屋に入ると、ホセさんの相棒は立ち去り、私とホセさん、そして盲導犬だけが残った🐕
視覚障害を持つ方とじっくり接したことがなかったので、少しドキドキした💓
まずはホセさんと握手🤝
すると彼の手が私の手首から肘へ、さらにその上の方へと移動してきた
すぐに確認のためだとわかったが、「このままどんどん上まできたらどうしよう~」なんて一瞬思ってしまった自分が恥ずかしかった😅
大きなテーブルの隅に二人で座り、インタビューを始めた🎤
ホセさんは生まれた時から目が見えず、6歳にはONCEの会員になっていた
高校まではONCEが経営する学校に通い、大学は健常者も通う学校で学んだ
宿題を助けてもらったり、教科書を録音してもらったり、奨学金も受けた
ONCEはいつも彼を支えてくれる存在だったという📚🎧
私はマドリードの歩行誘導の音や点字ブロック、メトロに転落防止柵が無いことに驚いていたので、そのことについて聞いてみた🚉(転落防止柵は日本でもまだまだだが)
ホセさんは一語一句、ゆっくりと明確に答えてくれた🎙
最近もメトロで転落事故があったという
対策は必要だが、ONCEだけでは限界があると話してくれた
スペインでは地域によってメトロの構造やシステムが違うそうだ🚇
障害を抱える全ての人が満足するシステム作りは難しいが、まずは今ある環境に適応し、助けを求められる環境を作ることが大事だと丁寧に説明してくれた👥
ただ、最近の若者は携帯電話やヘッドホンに夢中で、気づいてもらえないことが多く、残念だと語った📱🎧
ホセさんは、私のつたないスペイン語にも耳を傾け、インタビューに1時間以上も付き合ってくれた⌛
その間、ホセさんの盲導犬は彼の横に座り、じっと私を見上げていた👀
![](https://assets.st-note.com/img/1729761315-qQFKBYvglwTknOcyo32SGRPm.jpg?width=1200)
ホセさんの生い立ちからONCEの現状まで、十分に聞けたインタビューだった
その内容をもとに、私は10日間かけて丁寧にレポートを仕上げた📝
最初はホアンに褒められたいという気持ちで始めた取材だったが、次第にONCEという組織に興味が湧き、夢中になっていた
レポートの提出日は大学の最終日だった
残念ながら、ホアンから直接評価を聞く機会はなかったが、後日、ホアンと仲の良い先生がこう教えてくれた🎓
「"Me ha dicho que te felicita por tu trabajo"(ホアンがあなたのレポートを喜んでいたよ)」
「えー、直接言ってくれないと嬉しくない!」と心の中で思ったが、彼のつれなさに少し寂しい気持ちを抱いた😢