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120624 引っ越し一色

毎日見ていた風景が見られなくなるのは不思議だ。
ここから眺める中庭も、引っ越し後には見る機会はほぼない。
一週間ぐらい前に若い男が中庭で、たたんであったテーブルを広げ、椅子を並べ、酒壜に造花みたいな薔薇を挿した。
友だちでも連れてきてパーティでもするのかなとおもって見てたけど、誰も来なかったようだし、雨が降っても風が吹いてもセッティングはそのまま。
その男もそれ以来見かけない。
わたしも気安くそこでくつろいだりしていない。
でも、いい感じ。

この界隈は20年前ならわたしでも買えたような物件がいくつかあったろう。
でもいまはものすごく高くなっていて、買うなんて有り得ない。
前はオーバーグラウンドが走ってなかったけど、いまは走っているから便利になった故の土地価格上昇。
まあロンドンだったらどこでも高い。

明け方、変な夢を見て、起きて反芻してまた寝た。
詳細は忘れたけど、スーツケースに自分が必要なもの一切合切詰め込んでいて、それを教室の外に置いたまま、自分はどこかへ出掛けていた。
そこにいた学生数人に見ていてもらったようなんだけど、戻ってきたら誰もいなくなっていてスーツケースも忽然と消えていた。
このロンドンで所有物を放置したら一瞬でなくなるのに、なぜ放置したんだ……という気持ちと、意外に冷静で、ま、いいや、という自分がいた。
こういうこともある、とおもっているようだった。
目が覚めて、夢占いを調べたりした。

引っ越しが迫っているからそんな夢を見たんだな。
全部なくなっちゃう。
でも、実際はいまものを減らしても、今後は家賃を払わない生活になるからお金は貯まるだろう。
いままで£1350 (いまのレートだと日本円で27万! )の家賃を毎月払ってきたのだった。
わたしたちはレストランもカフェも旅行も全部の出費を半々にしているから、光熱費や住民税も半々にする、食費ももちろん半々、全部半々にする。
いままでだって自分で全て払ってきたので、それが半々になって尚且つ家賃を払わなくなったら、わたしは自動的にお金が貯まる。
だから、🍂には少し余分にお金を払うつもりでいる。
彼は22歳とかまだ若いときに自力でフラットを買って住宅ローンを払い続けて数年前に完済したので、そこに敬意を表し、気持ちばかりの家賃を払うつもりだ。
そのほうが自分も堂々と暮らせる。

ロンドンに来た初めの数年はシェアで住んでいた。
でもシェアは性に合わなかったので、どうしようかな、とおもっていたら日本人の友だちが誘ってくれて、そこのベッドシットに引っ越した。
ベッドシットというのはワンルームにキッチンもベッドも詰め込まれていて、バスルームはだいたい共用の物件である。
古くて狭いベッドシットだったけど、日本人が3人いて、きのうはアちゃんのところでごはん、きょうはわたしのところでごはん、翌日はマちゃんのところ、というふうに3人でぐるぐるやっていて、たのしい20代の終わりを過ごした。
あれは青春だった。

そのあとも、シェアをしたり、スタジオ(ひと部屋だけど、キッチンがセパレートだったりバスルームが専用だったりする)に住んだりしたけど、ずーっと、人並みにワンベッドルームフラットに住んで生活してみたいと憧れていた。
それが軽々とできる日が、自分にもついにやってきた。
いままで移動が多い生活だったから、家具は買わなかったし、食器やカトラリーも適当なもので済ませていた。
何もかもが仮暮らしのようだったんだけど、自分はデザインがすきでこだわりたいので、自分がすきなものを買いたい! という想いがめちゃくちゃ強くあった。
それでワンベッドルームに引っ越してからは買った。
すきなもので周りを埋めた。
どんどこ買った。

そのせいで引っ越しは大変になったけど、どこに引っ越しても自分の家具や食器や鍋を置けば自分らしくなるので、自分の付属物は心強い味方だった。

で、
今度はその集めたいろいろをほとんど手放すことに決めた。
🍂のうちにすでにあるから。
手放せないものだけ残すことにして、純度90%ぐらいだった自分の生活は今度は40%ぐらいになりそう。
そう、他者と交わると自分の純度が薄くなることが多い。
場合によっては純度が濃くなったりする場合もあるかもしれないけど、薄くなる場合は多々ある。
わたしは完全に薄くなるわけだけど、でも🍂の世界が入ってくるので減るわけではなく形が変わるだけだとおもう。
こだわりが強かったので、敢えてこうなったような気がする。

そのうち、田舎にでも広い家を持って、そこでわたし純度100%の世界が作れるかもしれない。
いまは、🍂の家だから40%だけど、でも、じわじわ60%、侵蝕して70%ぐらいまではいきたいとおもう。


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