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週末のこと
金曜日はCがくるから、まだ僅かにかっこつけていて、家の掃除などをする。
でも、家族みたいな関係になってもずっとかっこつけていたいし、向こうにもずっと少しだけでいいから距離を持っていてもらいたいとおもう。
Cは1年が過ぎてもわたしをまだ信用していないようで、話の端々に自分をよく見せようとか、わかってもらいたいとか、そういう感じが見える。
男のひとは、と主語を大きくしてしまうけど、面倒くさい部分が女のひととは若干違う感じである。
距離を持っていてほしいけど、そういうことばで説明して相手から承認を得たいみたいなのは、早くわたしに慣れて終わってほしい。
見てりゃわかるから。
わたしは「へえ」とか「あーそう」とか、「トイレ行ってくるワ」とかいって、あまり真剣に聞いてあげていないから余計にそういうふうに自分について話しまくるんだとおもうけど、わたしのことがまだ不安なんだろうな。
もっと時間が必要なんだろう。
ごめんだけど、わたしにはまったく興味がないときがあるので慣れてもらうしかない。
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タルトタタンはきび砂糖の茶色が強くなってしまったが、おいしくできた。翌日はここにダブルクリームを泡だててのせた。
凝り性だから、また今週、こんどは加熱用のBramaly appleで作ろうとおもってる。緑の林檎で。
夜ごはんはOttolenghiのレシピで、ポートベローマッシュルームキエフ を作った。
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ほんとうはチキンキエフ といって、チキンカツのなかにバターがたっぷり入ってる料理なんだけど、Ottolenghiのはベジタリアンで、巨大なマッシュルームふたつでハリッサ入りのバターを挟んで、パン粉をまぶして凍らせてから揚げる。
ヨーグルトソースにからめてたべる。
うまかったので、がんばってよかった。
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土曜日はテレグラフヒルのマーケットに行こうとおもってたんだけど、Cが具合が悪いというので、途中から引き返してうちに帰ってきた。
具合が悪いといいながらも例の如くペラペラしゃべり倒しているので「具合が悪いんじゃないの?よくしゃべるなあ」といってしまう。
ほんとうによくしゃべる男だ。
そこらへん合わないかもなあとおもうんだけど、わたしが話す必要がないのは楽なので、口を挟みたいときだけ反応してあとは適当に聞いている。
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願わくば、お互いに慣れて、関係に無形の輪郭がおぼろげにできるくらい年月を費やし、いちいち反応して「よくしゃべるなあ」とかおもわなくなればいいけれども。
でも、Cのいいところは、わたしが「うるさい、ちょっといま話さないで」などと直接いってもヘコたれないところだ。
そして、わたしが、Cに対しておもったことをそのままいえるというのもかなり稀な現象で、いままでなかったパターンといえる。
ちなみに、Cには、静かなひとがすきといってあるんだけど、そこに意味を見出していないらしい。
わたしは静かなひとがすきで、いまうるさいひとと一緒にいるわけで、そんなふうに人生が進んでしまったのを、滑稽におもいつつ抗わずに様子を見てる。
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夜はライブに行く。
Cは知り合いが多くて、いろいろなひとと話してはわたしを紹介し、非常にたのしそうだ。
この日の3組のミュージシャンたちはみんなよかった。
静かな音で、個で演奏するタイプの、それぞれが我が道を行っている感じ、眠たくなるようなアコースティックと電子音とのいろいろで、空気にやさしさが漂っているライブだった。
日曜日はCが帰ったので、月曜日からの仕事の準備をした。
ごみ捨てにフラットの外に出たのみで、ずっと家にいた。
フラットのテラスのところで紅葉した葉っぱを拾って、この週末は終わった。
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