想像の生卵が割れるとき(#日本エレキテル連合の坊っちゃん に寄せて)
お笑いが好きです。長い人生の、すてきな暇つぶしになるから。笑うと気持ちいいから、楽しいから。
理由は色々あるけど、何があっても愛したいと思う芸人さんが、私の人生に登場したから。そんなコンビがまた面白いことをやろうとしているので、その活動をほんの少しでも知ってほしくて、筆を執りました。
このnoteは、「お笑いが好きで、何か新しく面白いものを知りたいと思っている人」や、「読書や演劇が好きで、まだお笑いの舞台をナマで観たことがない人」に読んでほしいです。
好きなお笑い芸人が、名著をコントで新訳するらしい
私は日本エレキテル連合というコンビが好きで、2014年からずっと応援しています。
このコンビの名前は、きっとご存知の方が多いですよね。ただ、彼女たちがテレビに出演していたのは、それこそ8年前の話。2022年の現在は、バラエティのひな壇で活躍する芸人さんでも、かといえばネットで大きな話題になるようなタイプの芸人さんでもありません。
でも、毎年すごく面白い単独公演を開催していて、芸人としての矜持を持って活動している人たちなんです、ということを、まずは知ってほしい。私は矜持がある人が大好き。
そして今年も、彼女たちの単独公演が開催されることが発表されました。
タイトルは、「日本エレキテル連合の坊っちゃん」。
私はこのタイトルを聞いたとき、「え、坊っちゃん?? あの??? 夏目漱石の?????」という驚きと同時に、「え〜〜〜、エレキテルちゃんってば、天才じゃ〜〜〜ん」と思いました(「エレキテルちゃん」って呼んでます、なぜならファンだから)。
夏目漱石の「坊っちゃん」のあらすじは省きますが、とにかく登場人物のキャラクターが立っていて、よく考えたらすでにコントだよな、という感じの作品です。「坊っちゃん(主人公)、いけすかないな〜」と思って読み進めていると、いつの間にかなぜか好きになっているのも不思議。
誰もが知っている名作をオマージュしたお笑いのライブって、これまで存在しなかったんじゃないでしょうか? それだけで画期的だし、新しい形式を提示するというだけで価値があることだと思う。もしも後に続く作品が生まれたりしたら、ちょっと面白いですよね。
(ちなみに「新訳」というのは私が勝手に言っているだけなので、まったくそんなことなかったらごめんなさい。どんな感じになるのか、めちゃめちゃワクワクするよー。)
想像の生卵が割れるとき
私は、怒りや苦しみみたいな負のエネルギーに変えて作品に昇華する人を尊敬します。とりわけそれが「笑い」になるのであれば最強で、それは限られた才能を持った人にしかできない、尊い行為だと思っています。
以下、単独公演の開催に寄せた、日本エレキテル連合のコメント全文の引用です。
怒りに身をまかせて実際に相手を傷つけることはもちろん、怒りを自分の内側に抱えてただ傷つくだけの行為も、全然ヘルシーじゃない。そのときに痛いだけじゃなくて、蓄積した膿がいつか自分を苦しめます。
だからたとえば死ぬほどムカつく奴がいたとして、想像や創造の中でなら、いくらでも生卵をぶつけていいし、おろし金で大根おろしみたいに摺りおろしてやったっていいと思う。
どうしようもなくムカつく奴でも、コメディーになって笑われるなら、きっと少しは役に立つでしょう。そいつに想像の生卵がぶつかって割れるとき、「ただムカつくだけの奴」は、「人を笑わせたムカつく奴」になる。物理的に殴るよりもっと小気味いい方法で、溜飲を下げることができる。
そんな営みを目撃できる今回の単独公演を、とても楽しみにしています。
■ チケット情報
さいごに
舞台の上にいる彼女たちを見ていると、ときどき、びっくりするくらい遠い場所に連れて行かれたような気持ちになることがある。それが楽しくて、心地よくて、ずっと追いかけているような気がする。
全員が好きになるタイプのお笑いではないことはわかっているんだけど、飽きっぽい私が何年も抜け出せない地獄のような深い沼を、もっとたくさんの人にのぞき込んでほしい。そして、落ちてほしい。DVDとか、貸すし……
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