mockumentary
文明の終わりを見た。
耕作放棄地、錆びた鉄の杭、虫を食べたヒキガエルの死骸に群がる無数の虫、枯れた花の下で春を待つ種、お産婆が取り上げた赤子の祖父は何百人もの敵兵を殺して英雄と犯罪者になった。
<ただ生きてて、ただ死んだ。>
極めて充実したこの事実に、人は意味を探して掻き回す。そして誰のためだとか、定めだとか言って涙を流して敬意を払う。彼らは事象ではなくその意味に涙を流す。意味に涙を流すしかないのだ。それほどまでに我々は、人が創り上げた世界で暮らしている。
戦闘機が空爆する日常、友の体が千切れる日常、消えない痛みを抱えながら歯を食いしばる日常、眠らず騒ぐ日常、物質主義が社会の宗旨となる日常、路頭に迷って貧しさに手を冷やす日常、感傷が否定される日常、心が萎んで脊椎が太くなる日常、言葉が検閲されていく日常、讒誣や讒言の縄で縊死する日常。
廻りゆく、廻りゆく…