#牧歌日記 自由になりたかった
ずっと悶々として生きてきた。幼少期から内気で自分に自信がなかった。何をやっても上手くできない僕は、生きることそのものに悲観し、未来に希望を見出せなくなっていた。中学生くらいまでそんな感じだったと記憶している。暗くて空想に耽ってばかりいた。高校生になって音楽に出会った。それからというもの、耽溺に音楽を聴いて作ってを繰り返す生活をしていた。大学生になってからもそんな感じだった。音大生でもないくせに講義中に音楽理論の本を開いて音楽の勉強をしていた。
僕は自由になりたかったんだと思う。自分の過剰な自意識と不安から解放されたかった。何かを手にして大成すればどこか遠くまで行ける気がしていた。僕は音楽に出会って曲を作り始めた時、そんなふうに思っていた。
でも、今はもうわからなくなった。
何をどうしたらいいのか。
よく手放してしまえば楽になれるというが、手にしていないものをどう手放せば良いのだろう
音楽は僕にとって浮き輪のような物だった。
みんなが上手に社会を泳いでいく中で、今にも溺れて沈んでしまいそうだった僕に音楽という、創作という浮き輪があることで、溺れずに浮かんでいることができた。
でも、人はいつか浮き輪なしに泳がなきゃいけないんじゃないだろうかとも思ってしまう。僕はそれが怖かった。そしてそんなふうに社会化された考えをもつ自分が嫌だった。そうこうしているうちに今じゃすっかり浮き輪の空気は抜けて、僕はもがいてジタバタしている。僕は社会が、人が怖くなって部屋に引きこもるようになった。外出するにしても基本は夜。誰にも見られないように。たくさんの人に自分の曲を聴いて欲しかったのに、今では誰にも気づかれないことようにコソコソしている。自由になりたかったのに誰よりも不自由になった。
自分の中にある自意識と不安に縛られて、僕は相変わらず不自由なまま。
終わらない、終わらせたい、終わってたまるか
そんな思いを行ったり来たり繰り返して
今日も一日が終わる。