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平等に命が重く,命が軽く,いい女しか出ない『ドロヘドロ』

今回紹介する作品は異色かつ独特な世界観を持つ,林田球の『ドロヘドロ』である.

この漫画では魔法使いの世界と人間の世界があり,魔法使いは魔法の練習で人間界にやってきては人間を虫にしたり細切れにして遊んでる.当然人間はやってくる魔法使いを恐れ,恨みを抱いている.主人公は頭がトカゲの大男カイマンである.頭は昔魔法でトカゲに変えられてしまったのである.カイマンは一級品のナイフ裁きで人間界にちょっかいをかける魔法使いをナイフで細切れにしては返り討ちにしている.そしてカイマンの相棒は頑丈で巨乳で体術までたしなむ餃子屋の女店主の最強のニカイドウ.この二人がいつもどおり魔法使いを返り討ちにしていると,ある返り討ちにした魔法使いの一人が魔法使いマフィアの構成員だった.凄腕の掃除屋二人がカイマンたち二人を襲いにやってきて...

というのがざっくりとしたあらすじである.

強い女しか出てこない

この漫画のいい点はまず「強い女」であることだ.この漫画ですべての女はすべからく強い.そして(ほぼ)すべからく巨乳である.出てくる女性はすべてが確固たる意志・信念を持った行動をする.まさに強い女性しかいない.

そしてこの漫画のいい点は如何に性的な魅力を持っていても,だれもそのことについては歯牙にもかけない.その魅力の概念がないようにふるまっており,男女の性差というものを感じさせない内容になっている.そのため平気で服は脱ぐわ裸になるわだが,誰一人それを取り上げない.そういった点でも話の本筋の没入を強めてくれる.ある意味では硬派かもしれない.

平等な死生観

魔法使いがやってきて人間をおもちゃにし,運が悪ければ簡単に死ぬような世界なので死というものは軽い.そしてそれは主要人物でも平等に軽いのである.この世界には所謂「主人公補正」は存在しない.死ぬときは死ぬ.これは絶対的ルールである.

そしてそれと同時にこの世界の魔法はまさに万能である.嘘偽りなく,万能なのである.例えば「いやそれは反則だろ...」みたいな魔法も存在する.異常な世界で徹底して異常さをすべてが持っているのである.なので当然死者も魔法で生き返るし,儀式をすれば生前の情報も引き出せる.催眠もできるし,惚れ薬も契約で隷属のようなことまでできるのだ.

最近のヒーローコミックにメタい視点をもってしまい,いまいち没入できないような人こそこの作品を読むべきだ.私はこの作品の死が軽いのだから生も同等に軽いと感じられる世界観が好きだ.

#マンガ感想文

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