元戦略コンサルマネージャーが考える「コンサルタントに必要な素養」
本記事をご覧いただきありがとうございます。
ele&companyにてインタビューさせていただいた元戦略コンサル出身者(マネージャー)の記事となります。
弊社はAccentureを中心としたコンサル出身者が集い、総合コンサル特化型の転職エージェント事業を展開しています。
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本記事では、コンサルティング業界で活躍するうえで必要となる素養について、実体験ベースで解説します。
(※コンサル業界で求められる素養は多岐に渡ります。本稿ではとりわけ重要となる4点に着目します。)
〔1〕プロフェッショナルマインド
「今日のバリューは何か?」。私が戦略コンサルで働いていた頃、自問自答を繰り返したフレーズだ。コンサルタントは「クライアントの企業価値を最大化する」というミッションを掲げ、常に高難度なタスクに取り組む。業務内容が複雑且つ、一人当たりの稼働量が非常に多い為、コンサルタントは、クライアント企業に対して高額なプロジェクト予算を提示することが多い。コンサルタントを月1名雇う為には、最低でも200万円以上の金額が支払われている。(大手ファームであれば1名あたり300万円-/月程度が一般的であり、戦略コンサルタントはさらに高い予算水準となる。)
又、コンサルタントは製造業のようにモノを作ったり、エンジニアのようにプログラムを設計する訳ではありません。その為、クライアントからすれば一見視覚的に価値を認識することは出来ない状況であり、これはコンサルタント自身にも言えることである。「今日やったタスクは結局どういう意味があったのか」と、常に自分の行動を客観視しなければ、方向性を見失う危険性がある。
話が逸れたが、コンサルタントはクライアント企業の経営課題を解決する為、高い当事者意識と責任感を持って業務に取り組むことが求められる。私の所属していたファームでは「最近の若手はプロフェッショナリズムが不足している」と上司から叱責され、精神面から叩き直されていたケースもあった。
コンサル業界が特別というわけではないが、コンサルタントとして働く以上、仕事に対して強い責任感を強く持つことが必須である。正直に言うと、これから述べる3つの素養よりも、このプロフェッショナリズムが遥かに重要だと感じている。
〔2〕コミュニケーションスキル / 対人力
「今度のプロジェクトでは、もう少し君に仕事を教えたいと感じさせる動きをしてほしい」。これは私が戦略コンサルのジュニア時代に上司から受けたフィードバックである。察する通りで、私はメンバーと馴染むことができないままそのプロジェクトを進めていた。当時、私はコンサルスキルを全く習得しておらず、日々の業務で疑問が大量に浮かんでいた状態だった。しかし、上司との関係性がうまく構築できず、なかなか相談できない状態であったため、結果としてアウトプットの質も低下していった。
コンサル業界で「コミュニケーション力」と言われると、クライアントとの関係構築の文脈で語られることが多い。確かに対峙する先方のメンバーと良好なコミュニケーションを取ることができれば、業務の円滑化は実現される。これは間違いなくコンサルタントとして必要な素養の1つだと考える。
一方で、私は社内コミュニケーションの重要性も強調したいと感じている。若手のうちは、一日に最低5回は上司とコミュニケーションを取る必要がある。理由は「業務をこなせないから」である。細かなExcelスキルはもちろん、議事録の書き方やスライドの作成方法など、さまざまな領域で相談が必須となるため、直接指導してくれる上司とは必ず丁寧にコミュニケーションを取りたい。若手のうちはクライアントと直接のやり取りをすることは少ないため、「対クライアント」よりも「対チームメンバー」とのコミュニケーションが重要である。
〔3〕論理思考
論理思考に関しては、コンサル業界を代表する重要指標の1つなので特段の説明は不要かもしれない。そのため、ここでは実際の業務で論理思考をどのように活用したかについて紹介する。
とある会社の全社戦略案件について。
キックオフMTG(クライアントとの初回会議。主な目的はメンバー同士のアイスブレイクおよび、今後の方針確認)にて、先方のCOOより「弊社は現在a事業、b事業、c事業を並行展開しているが、今後の売り上げ拡大に向けて注力事業を決めたい。というのも、現在は人的・資本的リソースをほぼ均等に配分している関係で、全事業が中途半端な結果となっている。本プロジェクトでは、注力事業の選定および具体的な事業戦略の立案を検討してほしい」と依頼を受けた。実際のプロジェクトでは、複数のフレームワークを用いて事業領域の選定に着手し(市場の成長可能性、自社事業の競合優位性など)、a,b,c事業の優先度を決定し、COOにプレゼンを行った。先方からは「説明が論理的で、ファクトがしっかりしているので納得感がある」と高評価を受けた。
だが、実際のところ我々の提案した事業戦略が実行されたかというと、そのような簡単な話ではなかった。説明に納得感があり、根拠もしっかりしているにも関わらず実際の行動に移らないのはなぜか。これは論理的に物事を考える限界を示しているように私は感じる。あくまでも行動の主体は
人であり、彼らは全ての行動を論理で決定しているわけでは無い。必ず感情的な判断軸が介在しており、今回の例はそれを顕著に表した例だと感じる。この点において、コンサルタントとして活躍する上では一定の論理性を確保しつつも、クライアントと良好な関係構築を行い、彼らの行動を実際に動かせる対人力が非常に重要だと私は感じる。
〔4〕仮説思考
最後に論理思考と並んで、実際の業務にて活用する仮説について説明する。仮説とは、限りある情報の中から「最も答えとして妥当である」というものを抽出することである。本記事では、筋の良い仮説を構築する方法について説明する。
第1に「関連情報の収集」である。上述した通り、仮説とは手元にある情報から答えとなりうる要素を抽出する思考法である。であれば、手元の情報量を増やせば、当然ながら正解に近づく仮説を導ける可能性は向上する。一方で、実際のプロジェクトではオンライン上に広がるあらゆる情報について、逐一アプローチしている時間はない。その為、まずは(精度の低い)初期化説を試しに構築する。次に初期化説が正しいといえるような「情報」を収集する。もし収集した情報が仮説を正とするものであれば、それで良い。だが実際は情報収集の結果、新たな仮説を構築する必要性に駆られる。その場合は第2・第3と仮説を何度も構築し、情報と照らし合わせる「仮説検証」と呼ばれるサイクルを回すことになる。伝えたい点は「無鉄砲に情報を取りに行くのではなく、あたりを付けた情報収集が重要である」ということ。
第2に「アナロジー」である。聞き馴染みのない方もいるかもしれないが、これはコンサルタントとして活躍する上で重要なスキルである。過去に扱った事例と共通点のある問題に直面した際、そのアプローチを応用的に活用するということだ。ケース面接の練習をした方はイメージしやすいかとも思う。
例えば、エレベーター市場と髭剃り機市場を比較する。両者はサイズ感が全く異なるため、一見共通点がないように感じるが、経営戦略上のアプローチは似ている。どちらも売上セグメントは「初期の機体購入代」「定期的なメンテナンス/消耗品の追加購入」である。
エレベーター市場の場合、まず機体を建物内に導入し、その後は月1回程度の頻度で保守・点検のメンテナンスが発生する。髭剃り機の場合、まず髭剃り本体を購入し、半年に一度程度の頻度で刃が消耗し、新たな刃を購入する。この特性を活用し、双方のメーカーは「初期コストである機体導入代」を低く設定し、以降の持続的な購入代金を高くするモデルを採用している(現在のエレベーター市場は、メンテナンスを専門とする格安業者が新規参入し、市場が複雑化しているが)
このように、過去の経験や知識を応用することで、新しい問題に対しても効果的なアプローチが可能になる。
まとめ
コンサルティング業界で活躍するためには、プロフェッショナルマインド、コミュニケーションスキル、論理思考、仮説思考といった素養が重要である。これらの素養は、それぞれ独立しているようでありながら、相互に関係し合い、コンサルタントとしての価値を高める。例えば、プロフェッショナルマインドを持つことが、クライアントやチームメンバーとの円滑なコミュニケーションを支え、その結果、論理的な提案や仮説検証が効果的に行えるようになる。
また、クライアントに対して論理的かつ具体的な提案を行うだけでなく、彼らと良好な関係を築き、その行動を実際に動かす力も求められる。特に、クライアントが感情的な判断軸を持っていることを理解し、対人力を発揮していくことが、コンサルタントとしての真の価値を発揮するための鍵である。
これらは一朝一夕に身につくものではないが、実践を通じて磨き続けることで、コンサルタントとしての成長と成功に繋がる。これからコンサルタントを目指す方や、現在コンサルタントとして活動している方にとって、本記事が少しでも参考になれば幸いである。
本記事をご覧いただきありがとうございます。
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