COMITIA128同人誌感想
タイトルの通りです。
書いたら追加していきます。
サイレントメッセンジャー(いとどめさん)
飛行機に乗っていると地上のあれやこれやから切り離されるという感覚がある。ノートパソコンがあり、今や機内Wi-FiもあってTwitterなんかもできてしまう時代ではあるけれども、とりあえず空に飛べばひとまずいろいろな案件が保留される。船と違って飛んでいる間は基本座席に座っているしかできないというのもあるかもしれない。 本作を読んでいてまず思ったのが、地上における慌ただしさと、空における穏やかさの対比のようなものだった。出発前にしなければならないことがたくさんあった。目的地に着いたらやらなければならないこともたくさんある。しかし空を飛んでいる間はそうした用事を片付けることができない(そもそも飛行操作に集中しなければ墜落してしまう)。空はそういう一時休戦協定のような領域となっている。 一時休戦はつまり棚上げであって、それ自体が何かを解決することはない。それはわかっている。それでも何かに急き立てられるような日々の中で、自分のペースを取り戻せる時間空間というのは大変貴重なものである。 コックピットは狭くても、そこは確かに聖域なのだ。
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Twitter:@it0dm
Pixiv: https://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=73763519 (一巻表紙イラスト)
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サイレントメッセンジャー01
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【メロン限定特典付き】サイレントメッセンジャー02
https://www.melonbooks.co.jp/detail/detail.php?product_id=497710
クロユリ(井上とさずさん)
例えば、例えばですよ。
Twitterでとても好きなタイプの創作をする作家さんを発見したとする。まだ始めたばかりというわけでもないのに、フォローもフォロワーも少ない。コンスタントに作品を発表しているのに、リツイートもいいねも一桁、コメントもほとんど送られていないようだ。
思い切ってコメントを送ると、とても嬉しそうな返事がきた。こちらも嬉しくなってしまう。当然のようにフォローをする。その後も変わらぬペースで投稿を続けるが、相変わらず反応は薄い。それでもさして気にする素振りもなく、コメントを送れば喜んでくれる。
リツイートやいいねはあっても、コンスタントにコメントを送っているのは自分だけのようだ。自分だけがこの作家の熱心なファンなのだ、そう思っていたある日、変化が生じる。
どこかでフォロワーの多いアカウントの目に留まったのだろう、ある作品がこれまでとは比較にならないくらいのリツイートをされ、いいねも1000を超えた。コメントも多く寄せられている。いわゆる「バズった」のだ。フォロワーも見る見るうちに増えていく。
以降の投稿に対してはリツイートやいいね、それにコメントもどんどんつく。とはいえ自分がコメントを送れば相変わらず嬉しそうに返事をくれる。
だが見てしまう。とある有名な(自分でも知っている程度の)作家がコメントを送ってきた。
「ずっと前から憧れていた○○さんにコメントを頂けるとは!」
自分に対するリプとは明らかにテンションが違う。それはそうだ、と理解もする一方、なにやらもやもやとしたものを抱えてしまう。これと言って技術や経験、実績を持つわけでもない自分は、感想といっても抽象的な、かわいいとかかっこいいとか、そういう言葉しか送ることができない。一方でその有名作家は具体的なアドバイスや賞賛を届けてくれている。しかもかつては遠い存在と思われていた相手だ。言葉の重みが違う。
例えば、例えばですよ。
そういう時に、私は佐倉ゆづきにならずにいられるだろうか(長すぎる前置きですがこれは「クロユリ」の感想です)。
たぶんだけど私だったらそのままフェードアウトしてしまうような気がする。それまでにある程度個人的な話ができるくらいに親交を深められていたなら別として、あくまで作品を通してのつながりであれば、なんかもう、自分は別にいいかな、と思ってしまう。
その一方で、ここまで応援してあげたのは自分なのに? などと絶対に考えない、とは言い切れない部分もある。私の中にも、佐倉ゆづきはたぶんいる。
だからこそ、「クロユリ」は私に刺さるのだ。私を抉るのだ。
純粋にその人が、その人の作品が好きなのか。あるいはあえて青田刈りを狙い、「投資が成功した」ことに喜びを見出しているだけなのか。
いやいやそんなことはない、私は本当にその作品が気に入ったから好きになったのだ、言葉でならば何とでも言える。私は佐倉ゆづきにならずにいられるのか、あるいはむしろ佐倉ゆづきになることができるのか。
作中ではあえて省略されたゆづきの感情の昇華を、私は省略せずに成し遂げなければならない。私は誰が好きなのか、私は何を好きなのか。生きている限りその問いは終わらない。
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※「クロユリ」は現在完売ですが、その他の電子書籍や既刊がこちらから閲覧、購入できます。
amazon: https://amzn.to/2WxaacQ
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※20211101追記:「クロユリ」は電子書籍化され、kindleUnlimitedでは無料で読めます。
https://www.amazon.co.jp/dp/B07ZRZVKL5/
ハイスクールブレイカー(最上谷ホヌさん)
パートナーの羞恥心が力になる、という一点のみを見れば「おっダイミダラー」と想起する私であるわけですが、主人公男子ハルオミがパートナーアヤメを恥ずかしがらせることについて特に感慨を持たない、恋愛感情すらない、能力を発揮するためという理由で事務的に羞恥心を刺激する、という展開に「おっそう来たか」と膝を打つわけです。
世界として美少女が胸を揉まれたりスカートをめくられることに関心がないわけではない(それゆえに彼女も羞恥心を覚えるのだから)。それでもハルオミはアヤメの恥ずかしがる姿には一切関心がない。エネルギー供給源として効率的に(というか雑に)恥ずかしがらせる。
ああ確かにこれはエロくはないがスケベだ。その違い、そのこだわり、しかと受け止めました、いや受け止められていたらいいな、そんな次第です。
アヤメを羞恥させるのは何もハルオミがしなければならないわけではなく、アヤメが自身の失敗等で勝手に恥ずかしがっているところから棚ボタ的に魔力回収しているあたりも、なんかこう、とても雑でとてもいい。
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Gift.―短編漫画集(どくがんりゅーさん)
「なっなにー? 今まで読んでいた百合漫画は?」という例のアレが脳裏をよぎる波乱の幕開け。とはいえ物語を完結させなければならないと――その本の中で完結させなければならないという理屈はない。しかるべき時が来れば、きっと彼女たちの物語はまた動き出す、それを待つことにしよう。
さて本編というかもう一つのお話、女装少年星合くんとその先輩の日常。親しさや信頼があるからこそのディスり合い、その距離感がとても良い、ずっと眺めていたくなる。
星合くんはあくまで異性装愛好者であってメンタリティは男性だし同性愛者でもない、それでいて女性の先輩とこんなお買い物デートみたいなことしておきながらひたすらマウントしまくりでその先は? 冒頭にあったように女の子同士だってドキドキしてるのに君たちは! などとひとしきり憤ってみてから、いやいや何でもそっち方面に持っていくのはよくない癖だな、あるがままを愛でる心を大切にしなければならんと勝手に自省。そうなってもいいしならなくてもいい、ともあれ今を楽しむ若者たちの姿はよいものだと改めて感じた次第です。
そしてこの感想を書くために著者のtwitterのホーム画面を開いていろいろ納得。なるほど。
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著者近影: https://twitter.com/dokuganru_/status/1144234802805014529
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