ワインコラム24:雑煮についての民俗学的プチ考察-旅と雑煮
以前から民俗学的な事柄に興味が有って、柳田国男の「遠野物語」や、宮本常一の「塩の道」などを好んで読んできた。
「全国アホ、バカ分布考」(松本修著)なども、民俗学というと大げさに思えるが、この系統の末に連なるのだろう。
「何処の地域までバカ(アホ)と言うのか?」というシンプルな疑問をこまめに調査した労作だ。
雑煮というシンプルな料理も、東と西、あるいは県によっても違ってくるので、酒場の格好の話題となっている。餅だけに焦点を当てても、“四角か丸か” “焼くか煮るか”などのバリエーションがある。
「鮭文化圏」「鰤文化圏」などの影響も具に反映されている。
高速道路や鉄道が無かった時代は、険しい山や大きな川などによって人の行き来が間遠になり、文化の断絶につながったと想像できる。
富山県と新潟県の境に“親知らず子知らず”という交通の難所がある。この地域が、東西の文化の一つの分岐点と言われている。
二十代の頃、大晦日に能登島という島に行ったことがある。能登半島の内側にある、橋で繋がっている島だ。
次の日(元旦)の朝、民宿で雑煮が出た。具沢山の雑煮の餅は丸かった。
そして数年後に食べた新潟の餅は、のッペ汁のような汁に焼かない角餅が入っていた。
色々な地域で雑煮を食せば、必ず新しい発見があるだろう。
私が好きな民俗学的フィールドワークだ。
旅にはそんな一面もある。私が旅を好きな一つの理由だ。