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「働く場所にとらわれない」にとらわれている話
食欲の秋、読書の秋、そして引っ越しの秋。
最近家を引っ越すことになりました。そこで住む場所を考えたとき、アンテナを立てたのが「場所にとらわれない生き方」というフレーズです。
今はパソコンひとつでどこでも仕事ができる時代。都会に住んできた人がリモートで仕事をしながら田舎暮らしをしたり、フリーランスで旅行をしながら仕事をしたり。私も両親が遠方に住んでいて、学生の頃からいつか地元にいながら都会の仕事がしたいと思ってきました。
なのに、最近の「脱・場所」トレンドにはいまいちノリきれない。「働く場所にとらわれず生きたいんです!」という言葉に内心首をかしげてしまうのです。
今回はそんな仕事と場所についてのお話です。引っ越しをする人、働きかたを変える人、選択に悩む人は一緒に考えてみませんか。
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「通勤2時間半」と言ったら引かれる
私は会社員で、週3日はリモートで働き、週2日が出勤です。出勤の日は朝5時起きで、乗りかえが3回ありバスと電車を乗りついで片道2時間半かかります。
こう言うとだいたいの人に引いた顔をされます。リモートワークが普及した最近は特に顕著で、例えば引っ越しのときの不動産屋さんとのやりとり。
「いま通勤はどれくらいですか?」
「週2日は2時間半通勤です」
「えっ…(絶句)」
この人何考えてるんだろうと思ったことでしょう。そこで私もあわてて
「いや、でも週3日はリモートなんですよ!」
「ああ!そうですよね!」
彼に笑顔がもどったのに安心しながら、ふと自分は何に言い訳してるんだろうと思いました。通勤時間が長いことは後ろめたくなんかないはずなのに。
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「どこでも働くには●●かなって」
そんな私は、一方で完全在宅で働いてくれる人の採用面接もしています。会社は関西ですが関東や九州、東北と全国からたくさんの応募をいただきます。直近3ヶ月で50人以上とお話したのですがそこで気になるフレーズがありました。
「場所にとらわれず働くにはWebデザイナーしかないと思って!」
それまで営業や事務だった方が、Webデザイナーや動画編集者にキャリアチェンジされるパターンがとても多かったのです。以前は「デザインや動画が好きで」という方が主でしたが、最近になってリモートでできることを理由にその道を選ぶ方が増えた気がします。
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ちゃんと時代に合わせて考えておられることに敬意を抱くばかりです。そんなある日、ふとリモートで働くには本当にその職種だけだろうか、と思いました。
もちろんそれぞれの事情があって仕事を選ぶのは当たり前です。自分がデザインセンスや動画編集センスがないことからの羨ましさもあります。でもなんだか、「好き」とか「したい」が置き去りにされた寂しさを感じたのです。
今まで仕事を選ぶときは家から通える範囲が多かったです。そこから選択肢が増えたのはとてもいいことだと思います。
ただ、もしかしたら。場所にとらわれなくなった代わりに「場所にとらわれない職種」にとらわれることがあるのではないでしょうか。
本当の「場所にとらわれない」って?
最近知人がリモートの仕事が見つからないと悩んでいました。よく聞くと求人はあるのですが興味がもてないとのこと。
「リモートならIT系の企業なんだけど…」
「ITに興味あったんだね」
「いや全然ない。でも周りを見てたらリモートの方が働きやすいって言うし…」
自分で言いながらも納得していない表情です。
そこから1時間話してわかったこと。もともと彼女は体育会系で、チームで動いたり熱いコミュニケーションを好む人です。本当は出勤して直接会うのも好きだそう。ですが、「これからはリモートでないと」と思い込んで苦しんでいました。最後はそんな自分に気づきスッキリして帰っていきました。
その後ろ姿を見ながらじわじわと気づきました、私にも「リモートでないと時代遅れ」という思いこみがあるんだと。不動産屋さんと話したとき、「今どき出勤してるの?」と周りより遅れた人だと見られたくない気持ちがありました。実際はそんなこと言われていません。でも、私の思い込みが、「自分はリモートで働けている。周りに遅れていないから大丈夫」と私自身に向かって言い訳させていたのです。
でも、正直に言うと私も対面が好きです。今の会社は週5日リモートもできるでしょうが、出勤して会社の人と話すことでアイディアや小さな優しさをもらっています。だから出勤したいし、本当はそれは誰に言い訳しなくてもいいこと。次からは胸をはって「2時間半かけて出勤してます!」と言おうと思います。
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「働く場所にとらわれない」とは「全部リモートで働く」ではありません。直接会う、直接会わない、会社で働く、カフェで働く、旅先で働く、家で働く。そんなたくさんの選択肢から自分が心地いい場所を選べるということだと、私は思います。
働き方は今も模索中ですが、最近はプチ3拠点で働いています。2時間半かかる勤務先、知らない人と肩を並べる京都の町家コワーキングスペース、そしてリラックスできる自分の家。対面で会うのは好きだけれど、毎日は気疲れしてしまうから、人とも関われるし一人にもなれる3拠点がちょうどいいんです。
人との距離感が選べるのが私の「心地いい働き方」です。心がさびしくないし疲れてもなくて、ふとした優しさに嬉しくなる。まさに”心”が”地についている”安心した気持ちになれるのです。
とはいえ、これから家族が増えたら毎日家にいたくなるのかもしれませんし、海外で暮らそう!と思い立つ日がくるかもしれません。今の「心地いい」も変わっていくのでしょう。でも働き方や場所はあくまで手段。その先にある「好きだな」「心地いいな」という心をいつでも忘れないでいたいです。
ただ、もし自分の心地よさがわからなくなったらエラマプロジェクトにようこそ。ここは「立ち止まっていい場所」です。走っていると前しか見えませんが、一度立ち止まって息をついて横もうしろも見渡して。そして見つけたらまた走り出しましょう、あなたが心地よくいられる場所にむかって。
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Text by ひらふく(おとな教育の実践人事)